米国のホワイトハウスで、記者が入口で止められた。
理由を知って、私は少しぞっとした。
CNN、MS NOW、Politicoの記者だった。トランプ大統領が3社をホワイトハウスから排除すると表明した翌日、9月19日、各社は記者の入構が拒まれ、記者証が取り上げられたと明らかにした。
理由は何だったのか。
トランプ氏は3社の報道を「フェイクニュース」「作り話」「うそ」だと非難した。具体的な一つの記事がきっかけかと尋ねられると、「ここ数年の記事の積み重ね」だという趣旨の説明をしている。そして、ほかのメディアも続く可能性を示した。
つまり、取材中の危険な行為が理由だという話ではない。大統領が、その報道内容を気に入らないというのだ。
もちろん、大統領がすべての記者を、すべての場に入れる義務があるわけではない。大統領に同行できる人数が限られる取材もある。だが今回は、3社の記者がホワイトハウスに入るための記者証を取り上げられたと各社が説明している。
ホワイトハウス記者協会は、報道内容を理由に記者のアクセスを取り消すことは憲法修正第1条に反するとして、復帰を求めた。各社も、取材を続けると表明している。
似た争いは以前にもあった。2025年、AP通信は「メキシコ湾」という表記を使い続けた後、大統領を取材する一部の場から外され、裁判を起こした。地裁はAP側のアクセスを認めたが、その命令は控訴裁判所によって訴訟中、停止された。今回の3社への措置についても、これから法的な争いになる可能性がある。現時点で判決が出たかのようには言えない。
それでも、私には引っかかる。
大統領が報道を「うそ」だと思うなら、具体的に何が違うのか説明すればいい。記者の質問に答え、資料を示せばいい。なのに、先に取材の入口を閉じる。
トランプ氏は、記者団にホワイトハウスを「人々の家」と呼んだ。その家に誰を入れるかを、住人であるはずの国民ではなく、大統領が報道への好き嫌いで決めるのだろうか。
そして、これを日本から眺めていても、私は落ち着かない。
最近のテレビを見ていると、政権の問題点が大きく取り上げられる機会が減ったように感じる。一方で、高市首相が「仕事をしている」「頼もしい」と見える映像や伝え方は目につく。
実際、高市首相の「ぶら下がり取材」は、歴代首相と比べても少ない。
共同通信が「首相動静」をもとに集計したところ、就任から5カ月間のぶら下がり取材は、高市首相が34回。同じ就任後5カ月間で、石破首相は57回、岸田首相は90回、菅首相は50回、安倍首相は44回だった。(共同通信)
一方、高市首相は同じ5カ月間に、Xへ約370件投稿している。
記者から質問を受ける機会は減り、自分から発信する機会は増えている。
私は、この違いが気になる。
もちろん、米国で起きていることと、日本の状況をそのまま同じだと言うつもりはない。
テレビ局に、私たちには見えない圧力がかかっているのか。それとも、放送する側が自分たちで踏み込まなくなっているのか。そこは、証拠なしに決めつけられない。
けれども、分からないから気になる。
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サブスク補遺について
今回の記事を書くために、過去のホワイトハウスによる記者排除や、AP通信をめぐる裁判、取材アクセスをめぐる判例まで調べました。
本文では話を広げすぎないために外しましたが、調べていくと、今回の出来事が突然始まったものではないことが見えてきます。
サブスク補遺では、過去の記者排除を時系列で追い、判決や声明などの一次資料へのリンクを付けながら、日本の取材環境にも目を向け、私の頭に残ったことをまとめました。
無料記事の「続き」ではありません。
この記事を書き終えても、まだ私の頭に残っていたことです。

