CNNとCBS Newsに「編集独立委員会」――それを選ぶのは誰なのか
CNNとCBS Newsを、同じ会社が持つことになる。
Paramount SkydanceによるWarner Bros. Discoveryの買収をめぐり、差し止めを求めていたカリフォルニア州など12州は、Paramount側と和解に合意した。買収が完了すれば、Paramount傘下のCBS Newsと、Warner Bros. Discovery傘下のCNNが、同じ企業の下に入る。
和解案には、両社の報道の独立性を守るため、「編集独立委員会」を設けるという条項も盛り込まれた。
一見すると、安心できそうな言葉だ。
でも、私はそこで立ち止まった。
その委員を選ぶのは、誰なのか。
独立を守る委員を、会社が選ぶ
答えは、買収後の会社の取締役会だ。委員会は、報道の原則を定め、記者と経営陣の間で編集をめぐる争いが起きた場合には、その解決に当たるという。所有者や株主からの編集の独立も監視すると書かれている。
その一方で、委員会が社内資料を調べる権限や、会社が委員会の判断に従わなければならないという規定は、和解案に明記されていない。委員会の判断を公表する義務もない。和解案原文/Reuters
もちろん、委員会はまだ発足していない。今から「何の役にも立たない」と決めつけることはできない。カリフォルニア州司法長官は、CNNとCBS Newsの独立を支える仕組みだと評価している。一方、Reutersが取材した専門家からは、調査権や判断の拘束力がはっきりしない以上、実効性に疑問があるとの声が出ている。州司法長官の発表/Reuters
ニュースの方向は、人事でも変わる
私が気になるのは、委員会の名前より、その外側に残る権限だ。
報道機関を所有する側は、編集トップを選べる。トップが替われば、どんな企画を重視するか、どの記事をさらに取材するかも変わりうる。「この記事を止めろ」という露骨な命令がなくても、ニュースの姿は変わる。
実際、Paramount傘下のCBS Newsでは、エリソン体制下で編集トップの人事や『60 Minutes』の責任者交代が行われ、番組の放送延期をめぐって記者との対立も起きた。それぞれの判断が政治的な指示によるものだったと断定する証拠はない。ただ、所有者が誰を編集の責任者に据えるかは、抽象的な心配ではなく、すでに目の前にある問題だ。CBS Newsの人事発表/Washington Post
映画は数えられる。出されなかったニュースは?
州側が今回の和解で重視したのは、映画の製作本数や米国内への投資、ケーブル事業の契約条件でもある。そこには、履行状況を調べる監視人を置き、必要な記録や担当者にアクセスできると定めた。
ところが、その監視人はニュース部門に権限を持たないと、わざわざ明記されている。報道の独立を扱うのは別の委員会だ。その委員会には、同じ調査権が書かれていない。和解案原文
映画を何本公開したかは数えられる。
でも、出されなかったニュースは、どうやって数えるのだろう。
政府が気に入らない記者を排除すれば、その行為は目に見える。所有者による影響は、もっと見えにくい。編集トップの交代や、企画の延期という形で現れることもあるし、表には出てこないこともある。
CNNとCBS Newsに委員会を作る。それ自体は一歩かもしれない。
ただ、その委員会を作る会社が委員を選び、報告を受け、編集トップを選ぶ権限も持ち続ける。そこを見ずに「独立は守られた」と言われても、私はまだ安心できない。
※この記事で触れた和解案は、2026年9月23日時点で裁判所の承認待ちです。


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