沖縄は、どちらを選ぶのか――AfDの地図から見える、世界の極右政治

沖縄は、どちらを選ぶのか
AfDの地図から見える、世界の極右政治

ドイツの選挙地図を見て、気になったことがあります。

極右政党AfD(ドイツのための選択肢)が強い地域が、驚くほど旧東ドイツと重なっていることです。

2025年の連邦議会選挙で、AfDは旧東ドイツの5州(ベルリンを除く)すべてで最大勢力になりました。

2025年ドイツ連邦議会選挙におけるAfDの選挙区別得票率。旧東ドイツ地域で高い得票率が目立つ。
2025年ドイツ連邦議会選挙におけるAfDの選挙区別得票率。濃い青ほど得票率が高く、旧東ドイツ地域で際立っている。
出典:Werner Antweiler / UBC(データ:ドイツ連邦選挙管理委員会)

ロシアに近い場所だからなのか。
国境や軍事的緊張に近い地域では、人々は不安から「強い国家」を求め、極右的な政治へ向かいやすいのか。

フランス、イギリス、ポーランド、イタリアまで見ていくと、答えは単純ではありません。

けれど、ひとつの共通点は見えてきます。

極右は、不安そのものから生まれるのではない。
不安に対して、「あなたは守られる側だ。敵を排除すればいい」と語る政治によって強くなる。

そして今、沖縄もその問いの前に立たされているように見えます。


地図に映るのは、国境ではなく「取り残された感覚」

AfDの強さを、「旧東ドイツの人々が極右だから」と説明することはできません。

統一後も残った賃金や資産の格差、人口流出、雇用の不安定化、企業や政治的決定機関の西部集中。

そこには、「自分たちのことは西側やベルリンに決められてきた」という感覚があります。

AfDは、その不満を移民、EU、メディア、既成政治、エリートへの敵意として束ねます。

「あなたたちを軽く扱ってきた人々に、もう従うな」。

それは政策への賛否を超え、尊厳を取り戻す物語として響くことがあります。

フランスの国民連合(RN)が強い北東部の旧工業地帯や地中海沿岸の一部地域にも、似た構図があります。

工場が閉じ、仕事が減り、若者が出ていき、公共サービスが縮小する。パリの繁栄から遠ざけられたと感じる町で、RNはその不満を、移民やEU、エリート政治への怒りに変えてきました。

イギリスでBrexit支持が強かった旧炭鉱地帯、旧工業地帯、沿岸の町も同じです。

EU離脱は通商政策の選択というより、「自分たちの声を取り戻す」という意味を持ちました。

ここで大切なのは、貧しい地域が必ず極右を選ぶわけではないことです。

ポーランドの地図には、分割統治の歴史、宗教性、都市と農村の差が残っています。イタリアでは、経済的に厳しい南部が一様に極右を選んだわけではなく、五つ星運動や中道左派も根強い。

不安の出口は、一つではない。

外部の敵へ向かうこともある。
既成政治全体への不信になることもある。
格差や中央政府の失政を問う政治へ向かうこともある。

だから問われるのは、不安があるかどうかではありません。

その不安を、誰が、どこへ向けさせるのか。


極右が伸びるときに起きること

国ごとの事情は違っても、極右や急進右派が力を伸ばす過程には、似た型があります。

まず、生活苦、治安不安、地域の衰退、将来への不安を、単純な敵の物語に置き換える。

移民。外国人。少数者。EU。メディア。左派。都市のエリート。

「あなたが苦しいのは、彼らが奪ったからだ」と語るのです。

次に、デマや半分だけの事実、刺激的な事件、陰謀論を繰り返します。

一部の事件を社会全体の現実のように見せる。統計の一部分だけを切り取る。都合の悪い報道には、「メディアが隠している」と言う。

すると、事実かどうかよりも、「前から自分が感じていたことを言ってくれた」が優先されるようになります。

SNSは、この政治と相性がいい。

怒り、不安、侮辱、対立を生む投稿ほど拡散されやすいからです。

短い動画、切り抜き、匿名アカウント、インフルエンサー、代替メディア。

同じ敵意が、毎日、別の人から、自然発生のように流れてくる。

以前なら極端に見えた言葉が、いつの間にか「よく聞く話」「みんなが言っている話」に変わっていきます。

そして、既成政党までが票を失うことを恐れ、その言葉を借り始める。

極右は、政権を取る前から勝ち始める。
昨日まで極端だった主張が、政治の「現実的な議論」になるからです。


選ばれた後、何が変わるのか

極右や急進右派が選ばれたとき、最初に変わるのは経済ではありません。

誰を守るべき人と見なし、誰を疑うべき人と見なすか。

社会の境界線が変わります。

イタリアでは、メローニ政権のもとで移民・難民政策が厳格化され、海上救助を担うNGOへの規制、送還政策、亡命制度の厳格化が進められてきました。

ポーランドでは、前の「法と正義(PiS)」政権期に、司法の独立と公共メディアをめぐる問題が深刻化しました。中絶をめぐっても、PiS政権下で独立性が強く問われた憲法裁判所の2020年判断を契機に、女性が権利を行使することを極めて困難にする規制が定着しました。

フランスの国民連合やドイツのAfDは、国政で政権を担っていません。

それでも、両党が伸びることで、移民、治安、イスラム、EUをめぐる政治の基準線は動きます。既成政党までが、その言葉を取り入れ始めるからです。

イギリスでも、Reform UKが地方政治で力を持つなか、一部のReform主導自治体では、国旗、DEI、多様性、気候政策、LGBTQをめぐる「文化戦争」の争点が、公共サービスの立て直しより前に出る場面が見られました。

標的になるのは、移民や少数者だけではありません。

司法、公共放送、批判的な報道、市民団体、大学、文化活動も、「国民の意思を邪魔するもの」として攻撃されやすくなる。

本当に失われやすいのは、権力に異議を唱え、それを監視するための自由と仕組みです。


極右は、国境を越えて学び合う

各国の極右や急進右派が、どこか一つの司令塔から動かされている、という話ではありません。

けれど、国境を越えた連携・学習・増幅のネットワークはあります。

政党間の会派や国際会議。シンクタンク、政治団体、インフルエンサー、代替メディア、オンライン広告、資金提供者。

そこで共有されるのは、政策だけではありません。

移民。EU。LGBTQ。気候変動対策。公共放送。司法。
そして、「自国民を軽視するエリート」という敵の設定です。

ある国で支持を得た主張や動画の形式が、別の国では翻訳・翻案され、その国で起きた事件に重ねて拡散される。

国民は裏切られた。
本当のことを言えなくされている。
国を取り戻さなければならない。

国が違っても、語られる物語はよく似ています。

国内の不満は、それぞれの国に固有のものです。

けれど、不安を見つけ、敵を与え、ネットで増幅し、選挙に結びつける仕組みは、すでに国際化している。


沖縄は、どちらを選ぶのか

沖縄は、日本で最も安全保障の負担を引き受けてきた場所です。

基地、騒音、事件・事故、環境問題。
そして有事になれば、真っ先に標的となりうる不安。

沖縄県は国土面積の約0.6%でありながら、在日米軍専用施設・区域の大きな部分が集中してきました。

それでも近年、「国益のため」「安全保障のため」「中央との太いパイプが必要だ」という言葉は、沖縄でも強くなっています。

その言葉は、一見すると沖縄を「守られる側」に置くように見えます。

しかし沖縄は、これまでも国家の安全保障のために、負担を引き受けさせられてきた側でもあります。

ここに大きな分かれ道があります。

不安を、外国人や「国に逆らう人」への怒りに変え、強い国家へ従う政治を選ぶのか。

それとも、誰が守られ、誰が危険を押しつけられているのかを問い、自治と公平を求める政治を選ぶのか。

2019年、辺野古埋め立てを問う県民投票では、反対が72%を超えました。

それは安全保障を軽視するという意味ではなかったはずです。

安全保障の名のもとに、誰が危険を引き受けさせられているのか。
国を守るという言葉の中に、沖縄の暮らしと意思は本当に含まれているのか。

沖縄は、その問いを日本に返してきました。


その選択の先に、何が起きるのか

もし沖縄で、「国益」や「安全保障」を掲げる勢力が、基地負担や自己決定を求める声を押し切るようになれば、有事を前提にした避難計画、港湾や空港の軍事利用、自衛隊配備の拡大、土地利用や住民生活への介入が、これまで以上に「仕方がないこと」として進められていくかもしれません。

そして、異論を述べる人は、「安全保障を分かっていない」「国に協力しない人」と見なされやすくなる。

海外で極右や強権的な政治が伸びるときにも、最初は「安全のため」と言われます。

次に、「非常時なのだから」と異論が後ろへ押しやられる。
やがて、地域が自ら何を望むかより、中央が決めた安全保障が優先されていく。

反対に、沖縄が「これ以上、負担を一方的に引き受けさせられる側ではない」と示すなら、政治の問いは変わります。

安全保障を語る前に、なぜ負担が沖縄へ集中するのか。
有事を語るなら、誰が危険を引き受け、誰が決定するのか。
国益と言うなら、沖縄の人々の暮らしと意思は、その中に含まれているのか。

沖縄の選択は、沖縄だけの問題ではありません。

「安全保障のためなら、地域の意思は後回しにしてよい」という前例が沖縄で定着すれば、それはやがて日本の他の地域にも広がります。

今回の知事選で問われているのは、候補者の名前だけではないのかもしれません。

世界で広がる極右政治の物語に、沖縄は取り込まれるのか。
それとも、自分たちの暮らしと自己決定を守るために、その物語を拒むのか。

沖縄は、どちらを選ぶのか。


主な参照資料

Mariko Kabashima
Mariko Kabashima
編集長・国際メディア分析者(海外ニュース翻訳情報局)

海外ニュースを多言語で読み比べ、「同じニュースが、言語や読者層によってどう書き換わるのか」 を分析しています。

日本の報道だけでは見えにくい 国際政治・情報戦・背景文脈 を、静かで冷静な筆致で読み解きます。

Calm insight from Tokyo.

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※本記事は、国内外の公開情報・制度分析・国際比較に基づく筆者の見解(Opinion)を含みます。
※This article contains analysis and opinions based on publicly available domestic and international sources.

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