82%支持率の正体――JNN世論調査が映す「固定電話世論」の限界
JNNは「高市内閣の支持率82%」と報じた。だが調査設計を見ると、“国民の声”とは言い難い構造が見えてくる。
JNNの世論調査によると、高市内閣の支持率は82%。報道各社も「2001年以降で2番目に高い」と伝えた。しかし、その調査方法をよく見ると──この数字が“日本全体の民意”を表しているとは到底言えない。
📊 調査概要
- 実施日:11月1日(土)、2日(日)
- 方式:RDD方式(無作為に電話番号を生成し、固定・携帯に発信)
- 対象:全国18歳以上の男女
- 対象:全国18歳以上の男女2,607人(固定875人・携帯1,732人)
- 有効回答:1,013人(固定503人・携帯510人)
- 回答率:38.9%
📞 固定電話に偏ったサンプル
RDD方式では、まず固定電話と携帯電話の両方に無作為で電話をかけるが、
そもそも固定電話を持たない世帯が増えている現代では、固定電話のほうが接触しやすい構造になっている。
今回の調査でも、発信数は固定875人・携帯1,732人だったが、
有効回答では固定503人・携帯510人と、ほぼ同程度にとどまった。
これは、携帯でかかっても回答に至らなかった(着信拒否や無応答を含む)ケースが多いためで、
結果的に「電話アンケート慣れした層」に偏りやすい。
📉 回答率38.9%という低さ
6割超が不回答(拒否・切電)。実際に答えたのは政治関心が強く、アンケート協力的な層であり、ここでも支持寄りの声が残りやすい。
🔢 RDD方式の構造的バイアス
RDDは“一見”無作為だが、
・電話帳未登録番号やIP電話が除外されやすい/
・協力的な回答者が固定化しやすい──
という欠点を抱える。結果的に「電話アンケート慣れした高齢層」の意見が繰り返し反映される。
🌐 「ネット調査は偏る」という自己矛盾
JNNは「インターネット調査は偏るため行わない」とするが、ネット世代(40代以下)をほぼ拾えない“電話のみ”のほうが、現在の社会ではむしろ大きな偏りである。
🧩 結論:「82%」の正体
この数字は、実質的に**電話に応答しやすい層(主に高齢層・固定電話所有層)**を中心とした支持率である。
一見、携帯と固定の回答数は拮抗して見えるが、RDD方式では「電話に出にくい層」が最初から母集団に含まれにくい。
つまり、82%という高支持率は“政治への関心が高く、電話調査に協力的な層”を主に反映した数字であり、
日本全体の民意を示すとは言いがたい。
🧭 終わりに
数字は中立に見えるが、背後には「誰に・どう聞いたか」という文脈がある。いつまで“固定電話世論”で政権を持ち上げ続けるのか。私たちは「数字の質」を問う視点を取り戻すべきだ。
※2025年11月4日:調査対象人数の表記を、JNN公式発表に基づき一部修正しました。分析内容に変更はありません。
2025年11月3日に公開した記事「82%支持率の正体――JNN世論調査が映す『固定電話世論』の限界」において、
一部の数値表現に誤解を招く記述がありました。
記事中で「固定電話85%」とした箇所は、正しくは
調査対象:固定875件・携帯1,732件、有効回答:固定503人・携帯510人 です。
本文はすでに修正済みであり、記事の主旨(調査構造の偏りに関する分析)には影響いたしません。
今後も、正確で透明性のある情報発信を心がけてまいります。
海外ニュース翻訳情報局 編集部
The Truth Behind the 82% Approval Rating — How JNN Polls Reflect Japan’s “Fixed-Line Opinion”
According to the JNN opinion poll, the approval rating for the Takaichi Cabinet stands at 82%, reportedly the second highest since 2001.
However, a closer look at the methodology shows that this figure does not necessarily reflect the sentiment of the broader Japanese public.
📊 Survey Overview
- Date: November 1–2
-
Method: Random Digit Dialing (RDD) — automated random generation of phone numbers for both landline and mobile phones
-
Target Sample: 2,607 adults nationwide (875 landline / 1,732 mobile)
-
Valid Responses: 1,013 people (503 landline / 510 mobile)
-
Response Rate: 38.9%
📞 Sample Bias Toward Landline Respondents
The JNN survey used the Random Digit Dialing (RDD) method, which calls both landline and mobile numbers.
However, in today’s communication environment—where many households no longer maintain landlines—calls to fixed phones are easier to reach.
In this survey, calls were placed to 875 landline and 1,732 mobile numbers.
Among those, valid responses were obtained from 503 landline users and 510 mobile users, showing nearly equal response counts.
Because mobile users are less likely to answer unknown calls (due to call screening or refusal),
the sample tends to be biased toward those more accustomed to telephone surveys — typically older, TV-watching demographics.
📉 A Low Response Rate of 38.9%
More than 60% of contacted individuals either hung up or declined to answer.
Those who remained tend to be people who are more cooperative, older, and politically engaged—
groups that are not necessarily representative of the general population.
🔢 Structural Bias in the RDD Method
Although RDD is described as “random,”
in practice, the method favors households where someone is available to answer the phone,
and excludes the growing number of individuals who primarily use internet-based communication.
As a result, the survey captures a narrow slice of Japan’s demographic reality—
one dominated by traditional TV viewers and politically established groups.
🌐 “Online Surveys Are Biased”? — A Misleading Excuse
JNN justifies its reliance on phone-based RDD by claiming that “internet surveys tend to attract people already interested in politics.”
Yet the same logic applies here: those who pick up random phone calls and stay through a survey are themselves a self-selected,
non-random segment—often older and more conservative.
🧩The Real Meaning Behind the “82%” Figure
This approval rate represents those who are reachable by telephone and willing to answer political questions—
a specific, self-selecting population.
While the raw numbers appear balanced between landline and mobile respondents,
RDD still underrepresents younger generations and those who communicate primarily through digital means.
Therefore, the 82% figure should not be read as the unified voice of the Japanese public,
but rather as the sentiment of a smaller, more accessible subset of society.
.
🧭 Final Note
Statistical figures can sound definitive,
especially when framed as “the people were asked.”
But the key question remains: who were actually asked?
Until Japan’s major broadcasters address the structural biases inherent in traditional phone polling,
such “approval ratings” will continue to reflect only a fraction of the nation’s reality.
Source: TBS NEWS DIG — JNN Poll
*Updated on Nov 4, 2025: Numerical figures corrected based on the official JNN report. The analysis remains unchanged.*
In the article published on November 3, 2025, titled “The Structural Bias Behind the 82% Approval Rating — The Limits of Landline-Based Public Opinion”,
one numerical expression was inaccurate and may have caused misunderstanding.
The phrase “85% landline respondents” was incorrect. The accurate figures are:
Calls placed: Landline 875 / Mobile 1,732; Valid responses: Landline 503 / Mobile 510.
The article has been updated accordingly. This correction does not change the analytical conclusions about sampling bias within the survey design.
Overseas News Translation Bureau Editorial Team


コメント
コメント一覧 (5件)
> 今回のJNN調査では、固定電話からの回答が約85%を占めており
この数字がツイッターの画像に見えたので記事を覗いてみたが
どこにもこの数字は載っていないですね
どういう定義に基づいて、どう計算したのです?
ふつうに考えたら
固定電話からの回答率 = 固定電話からの有効回答数 ÷ 固定電話への発信数 × 100
であり、今回の調査に当てはめると・・・
503/875=57.49%程度のはずですけど?
あるいは、回答数に占める固定電話からのものの割合という意味ならば
503/1013=49.65%程度だ
いずれにしても85%なんて高い数字にはならない
この数字に限らず、RDDで「協力的な回答者が固定化しやすい」とかおかしな主張が多くて、参考にならないです
ご指摘ありがとうございます。
ご指摘の通り、当初の記事では「固定電話85%」という表現に誤りがありました。
現在はJNN公式発表に基づき、
調査対象:固定875・携帯1,732/有効回答:固定503・携帯510
に修正しています。
ただし、RDD方式では固定電話の応答率が高く、携帯電話では低い傾向があるため、
結果的に高齢層が多く含まれる構造的な偏りが生じやすい点は残ります。
本件はその傾向を踏まえた分析としてまとめており、記事も最新の数値で更新済みです。
ご確認いただき、ありがとうございました。
記事を拝見しましたが、
JNNの世論調査を「固定電話中心で偏っている」と断じる論調には、正直、主観的な解釈が各所に見受けられます。
現在のJNNは、固定電話だけでなく携帯電話にも半数以上発信しており、しかも自動音声ではなく調査員による直接聞き取りという、手間とコストをかけた誠実な方式を採用しています。
また、電話帳を利用せず番号を無作為に生成するRDD方式であるため、「電話帳未登録は除外される」という指摘は事実と異なります。
さらに、回答率38.9%という数字も、
現代の世論調査としてはかなり高水準です。
欧米では20%台が一般的であり、この数字はJNNの調査運用がいかに丁寧であるかを示しています。
また、「高齢者偏重」という批判も的を外しています。FNNなど各社のデータでは、若年層(20〜30代)ほど高市内閣への支持が高い傾向が明確です。
むしろネット世代の回答が増えれば、支持率82%はさらに上がる可能性すらあります。
加えて、「高市内閣は支持するが自民党は支持しない」という層も増えています。
つまり、政権と政党を分けて評価する段階に入っているということです。
この点を無視して「与党人気」として単純化するのは、現実にそぐわないでしょう。
最近のRDD調査では、固定電話だけでなく携帯・IP電話も対象に含まれ、オンライン調査よりも世代をまたいだ安定した結果が得られるという研究もあります。
課題は、若年層が電話に出にくい傾向をどう補うかであり、そのために「電話+Web+統計補正」のハイブリッド方式が提案されています。
したがって、もし調査手法を批判するなら、
単に否定するのではなく「より正確で公平な方法をどう構築するか」を提示すべきです。
改善策を示してこそ、建設的な議論だと思います。
そして率直に言えば、
事実を伝える記事というより、批判のために書かれた印象を受けました。
もう少し冷静で、実証的な視点から分析してほしいと感じます。
ご丁寧なコメントありがとうございます。
また、RDD方式や標本抽出についての具体的な補足も非常に参考になりました。
ご指摘のとおり、JNN調査は形式上RDDを採用していますが、
実際の通話接続率や年代分布の偏りから「固定電話主体」と見なされる現状もあり、
その点をもう少し正確に補足すべきでした。
今後の記事では、今回のような貴重なご意見も踏まえ、
回答率や携帯RDDの比率など、よりデータ面から検証を深めていきたいと思います。
改めて、丁寧なご指摘に感謝申し上げます。