【米国:必読提言】アメリカの核戦力はロシアやその他の国々に対抗させなければならない

アメリカの保守系シンクタンク、ヘリテージ財団の国防・外交専門家であるジェイムズ・ジェイ・キャラファノ氏による提言です。「核兵器のない世界」は理想的なのかもしれませんが、アメリカが実際にその夢のような世界を追い求めた結果がどうなっているのかは、昨今の世界情勢を見れば明らかです。そんな世界情勢の真っ只中、「力による平和」という言葉を、日本人ももっと真剣に考える必要があるかもしれません。

Post by Yasushi Asaoka   2019/01/28  18:20  

The Heritage Foundation  by Japmes Jay Carafano  2019/01/19】

主な要点
1. 抑止力こそが将来の核戦争を防止する最も確実な方法であり、そのためにはアメリカの核兵器の近代化と改良が不可欠である。
2. アメリカ国防総省の核戦略見直しは、核抑止力の確固とした改良と、強い立場からの軍縮協定の交渉を必要としている。
3. 『力による平和』こそが依然として最良の道であり、そのためには核抑止力と実践的なミサイル防衛の両方が必要とされている。
 

 

「前に進まなければ、取り残される」とは言い古された言葉だが、我々の核兵器プログラムの状況を鑑みた場合、紛れもなく当てはまっている。

この領域において、アメリカは競争相手からますます後れを取っている。我々はより脆弱になり、世界はより危機的な状況に陥っている。

抑止力こそが将来の核戦争を防止する最も確実な方法であり、そのためにはアメリカの核兵器の近代化と改良が不可欠だ。

バラク・オバマ大統領はアメリカの核政策をそれとは真逆の方向に進めた。絶対に確実だとわかっている抑止力モデルを否定し、彼は我々を「核廃止への道」へと導いた。

当初の目標はロシアとの第一次戦略兵器削減条約(START)の締結で、それは両国が所有できる核兵器の種類と数を規制するものだった。

それは歴史的に見ても、最も一方的な条約のひとつだと言えた。アメリカだけが戦力を削減させなければならなかったのだから。ロシアは兵器を追加することができるようになっており、実際に彼らはそうした。「核廃絶」条約となるはずだったものは実際にはより多くの核兵器を生み出すことになり、その新しい兵器のすべてがロシア製だった。

さらに、ロシアが既に圧倒的に優勢だった戦術核兵器を、その条約は含んでいなかった。

ロシアはさらに、新しい種類の核兵器を導入しながら、中距離核戦力全廃条約(INF)においても、我々をだまし続けた。

ここでもオバマは、何もしないことで、核廃絶への道を選んだ。その結果、プーチンの兵力はより大きく、より多岐に及び、繊細な抑止力のバランスを脅かすほどになってしまった。

最終的には、オバマでさえロシアの核戦力を野放しにすることは軽率だと気付き、陸海空における核運搬の仕組みの、控えめな近代化プログラムに着手した。

ドナルド・トランプ大統領のもとで、アメリカは廃止への道から離れた。アメリカ国防総省の核戦略見直しは、核抑止力の確固とした改良と、強い立場からの軍縮協定の交渉を必要としている。

トランプ政権は、ロシアのまやかしと彼らがSTART条約満了後に新たな条約を結ぶつもりがないのを見て、INFから離脱した。

このことが、下院軍事委員会の新委員長、アダム・スミス議員(ワシントン州・民主党)との衝突を生んだ。彼は政権に対し、各戦略見直しを“やり直し”、近代化計画を破棄し、陸海空軍の改良については忘れるよう要求した。

これは単にスミスがトランプの「逆張り」をしたいわけでも、廃止への道を懐かしんでいるわけでもない。彼は、12年にわたって1.2兆ドルを費やすアメリカの核戦略の近代化に対する、長年にわたる批判者だ。

問題は、誰もが核競争は終わったと思い込んだ冷戦後のバラ色の思考状態からスミスが抜け出せていないことだ。実際には、それは終わってはいない。

核競争を含んだアメリカとロシア両強国間の競争が再び始まっている。均衡状態は、弱さからではなく力から生み出される。

それこそが、過去10年間に学んだことではないか。アメリカが核抑止力を弱めていった間に、ロシアと中国はそれを加速していた。

力を見せつけるために、ワシントンは新たな軍備競争を始めようというのではない。それは既に始まっている。モスクワが始めたのだ。だが、この競争に加わることで、ワシントンはその他の競争相手を退かせるかもしれない。

最低でも、我々は陸海空軍全ての要素を近代化する必要がある。新しいB21爆撃機を作り、オハイオ級潜水艦を完璧に配備し、老朽化したミニットマン大陸間弾道ミサイルに代わる地上戦略抑止力を発展させることだ。

アメリカはまた、低核出力の潜水艦による大陸間弾道及び巡行ミサイルの配備も進め、必要に応じて核施設と核兵器の能力試験への投資を続けなければならない。

望むと望まざるとにかかわらず、我々は核拡散の時代に生きている。『力による平和』こそが依然として最良の道であり、そのためには核抑止力と実践的なミサイル防衛の両方が必要とされている。

 

執筆者 について
ジェイムズ・ジェイ・キャラファノ(James Jay Carafano) ツイッター@JJCarafano
Kathryn and Shelby Cullom Davis Institute 副社長 
国家安全保障と外交政策の課題における第一人者です。

 

(海外ニュース翻訳情報局  序文&翻訳 :浅岡 寧    編集:樺島万里子)

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