【米国:オピニオン】AP通信と中国国営メディアとの関係について議会が回答を要求

AP通信と言えば、世界的な通信網を持つアメリカ合衆国の大手通信社であり、各国に色々な情報を発信する最も信頼される大手通信社です。
そのAP通信社が、中国最大の国営通信社である新華社と提携するというニュースが11月に発表されました。
このことについて米国の超党派の議員が議会で問題にし、AP通信社に回答を求めたそうです。
米国の素晴らしいところは、こういった国益を損ねる可能性のある問題について、党派を超えて議員が協力し問題にし、大手メディアの記者の誰かが報じるという点ではないでしょうか。

ロジン氏がワシントン・ポストで指摘したこの寄稿記事は、これからの世界の報道の在り方について、非常に重要な様々な問題を明かにします。
この記事を読むと、益々グローバル化や技術が進めば進むほど、我々読者が、情報を得る際、益々賢く惑わされない判断力という知恵が必要になってくることに気づかされます。
こちらは、ワシントンポストから重要な点を中心に抄訳紹介します。

Post by Mariko Kabashima   Translated by  Hiroshi Izumi   2018/12/25  23:04

Washington Post by By Josh Rogin 2018/12/24】 

ジョシュ・ロジン著

中国の国営メディア企業は、北京の世界的な対外影響力工作キャンペーンの一環として、急速に西側の報道機関との統合を拡大しつつある。ワシントンで、両党の国会議員はそのような動きを非難し、米国のメディア企業に中国政府のプロパガンダの道具とならないよう要求している。

(中略)

そのことから、中国最大の国営通信社である新華社が、米国のAP通信社との提携を拡大すると11月下旬に発表した話にたどり着く。APの最高責任者であるゲイリー・プルーイットが、北京を訪問して新華社の蔡名照社長と面談した際、蔡社長は「両通信社は、新しいメディア、人工知能(AI)の応用、また経済情報を含む分野で、幅広く提携している」と語ったと、新華社は報じた。

新華社がこうした提携について説明したことに議会は警鐘を鳴らし、両党の議員は、米国に対する中国の対外影響力工作に新たに順応しようとしている。

私が入手した書簡の中で、米国の14名の国会議員は、12月19日にプルーイットに対して、「APの独立したジャーナリズムとは際立って対照的に、新華社の中核的任務は、中国共産党の正当性と行動に賛同的な形で世論を形成することだ」と書いた。

書簡の中心メンバーは、下院議員のマイク・ギャラガー(共和、ウィスコンシン)とブラッド・シャーマン(民主、カリフォルニア)であり、上院議員のトム・コットン(共和、アーカンソー)、マーク・R・ワーナー(民主、ヴァージニア)、そしてマルコ・ルビオ(共和、フロリダ)の署名があった。議員たちは、司法省が今年新華社に、外国代理人登録法に基づき、外国の代理人として登録することを求めたことを指摘した。

米中経済安全保障調査委員会の2017年版年次報告書によると、新華社は北京のプロパガンダ機関として機能し、また「情報機関の機能の一部を果たしている」。同委員会は、西側報道機関を弱体化させて信用を傷つけようという取り組みの一環として、新華社が急速に世界中で拡大しつつあると警告している。

議会はAPに新華社との合意の覚書の文章を公開し、将来どのような提携を計画しているかを明らかにするとともに、新華社が決してAPの報道に影響を与えず、APの保有するいかなる機密情報にもアクセスできないようにすることを求めている。

(中略)

APの広報担当者のローレン・イーストンは、APと中国国営メディアとの合意は、中国国内での同社の活動を許可するためのものであり、APの独立性に対する影響はないと私に答えた。

彼女はこう話した。
「最近の合意メモは1972年以来一貫して同じだった関係性を更新するもので、将来の相互の商業活動の可能性を開くものであり、APが世界中の他の国営報道機関と交わしている合意と同様のものだ。人工知能の情報や、他の技術について共有することは含まれておらず、想定もされていない」

新華社はAPの機密情報にアクセスできず、APの編集物に何の影響力も持たない、とイーストンは述べた。彼女は、議員が求めているように、APが覚書の文章を公開するかどうかについては明言を避けた。新華社とAPが自分たちの提携の性質についても意見が一致しないという事実が、懸念を物語っている。

シャーマン議員は私にこう話した。「我々は覚書が借用証書でないことを確かめる必要がある。新華社は米国支局を利用して北京のためにインテリジェンスを収集しているのだから、APとの提携合意を精査すべきであるのは常識的なことだ」

2016年大統領選挙でのロシアによる干渉を受けて、西側の報道機関でRTやスプートニクとの提携を行うところは全くない。米国内での北京の影響力工作は、同様の脅威を示すものだ。最終的に、中国のプロパガンダと西側の自由なメディアが混じり合うはずはない。

(ジョシュ・ロジンはワシントン・ポストのグローバル・オピニオン部門のコラムニスト。外交と安全保障について執筆している。ロジンはまた、CNNの政治アナリストも務めている。これまでにブルームバーグ・ビュー、デイリー・ビースト、フォーリン・ポリシー、コングレッショナル・クォータリー、フェデラル・コンピューター・ウィーク、そして日本の朝日新聞社に勤めた。)

*編集部追記 Taiwan Newsによると、AP通信社は、新華社との間で締結された覚書の全文をまだ公表していません。(2018/12/25時点)

(海外ニュース翻訳情報局 序文:樺島万里子  抄訳:泉水啓志)

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