【元米軍海兵隊士官・提言】米国は中国ZTEに甘すぎた―やり直す方法はこれだ

この記事が出た2日後の18日、米国上院は賛成85票、反対10票でZTEへの部品供給禁止措置を復活させました。元々この措置はより規模の大きな法案に組み込まれたものであったため、今後どうなるかはトランプ大統領と議会との間で話し合われて行くことになるようです。大統領は拒否権も持っていますが、他の重要法案との兼ね合いもあり、どうなるかは不透明という気がします。
ZTEはすでに香港市場での株価の25パーセントが下落し、相当な打撃を受けていますが、(事実上)会社が存続できるか否かでは非常に大きな違いだと言えるでしょう。
こちらの記事はThe National Interestの記事を紹介いたします。

Post 2018/06/22 16:15

The National Interest by Grant Newsham 2018/06/16】

米国商務省は中国の通信機器メーカーZTEに対して、米国製部品の使用を7年間禁止する措置を猶予した。その措置とは、事実上企業に死刑宣告を言い渡すようなひどいものだ。
ところがZTEは執行猶予中となり、いくつかやらなければならない事がある。それには以下のものが含まれる。10億ドル(約1100憶円)の罰金を支払い、4億ドル(約440億円)を第三者預託すること。後者は将来不正を行った場合に没収されるものだ。30日以内にZTEの役員と経営者を入れ替えること。それから、米国が選定したコンプライアンスチームを10年間設置することだ。

これはZTEにとって――また中国共産党にとっては痛いことだろう。だがそれは、人前で大笑いするのを堪えようとする時に感じるような痛みだ。
米国政府はZTEに金額を示した。この金額はZTEが米国の法律と制裁に著しく違反し、賄賂によって世界中で契約を取り付け、またスパイ行為を働いたことに対するものだった。
だが中国はこのような金額を支払うことができる。
10億ドルの罰金?中国政府がZTEに賠償するだけのことだろう。
4億ドルの第三者預託?ピーナツ(訳注:英語表現で取るに足らないお金の意味)ですらない。むしろピーナツの空き瓶に残った「残りかす」のようなものだ。
ZTEの経営者を入れ替える?易しすぎる。

米国のコンプライアンスチームについてはどうか?少数の米国人――おそらく中国語を話す2、3人――が、従業員数75,000人で世界展開する中国企業を監督するとは想像しにくいことだ。
中国にとって、このような処罰は全て不便ではあっても耐えられるものだろう。また社内にコンプライアンスチームがいても、容易に監視されてしまう。

しかし、ロス米商務長官が指摘したように、コンプライアンスチームはZTEの新しい会長に直接報告しないだろうか?するだろうが、おそらくそれは中国共産党に黙認された会長であるだろうし、従って「しない」と言わないかは誰にも分からないだろう。
もちろん中国はZTEに完全に協力するよう命令するだろう。そしてトランプ政権が中国に教訓を与えて――また彼らをひどく怖がらせて――喜んでいる一方で、中国政府と世界の他の全ての中国企業にとっては、いつも通り変わらない状況となる。

実際ZTEを「クリーンな」企業に変えるのは、余りにも無理難題であるかもしれない。中国共産党にとってすらそうだ。ところがこの分野での直接の経験に基づくと、必要となるのは以下のことだ。

まず、ZTEの新しいCEOか社長が事態を真剣に受け止める。それはZTEの未来の指導者が、米国と問題を起こすことを恐れているためだが、会社の新指導者が問題を競争上の優位性とみなすならばもっと良くなるだろう。普通と違う会社社長がこう言うように。「人々は私たちがどういう会社(誠実な会社)であるのか分かり、結果的に仕事が増える」と。

またこの新CEOは、命令したことが会社全体に及ぶほど厳しくある必要がある。これには、ともすればお金を稼ぐためにはどんなことでもやる独立心を持った幹部に、目を光らせておくことも含まれる。彼らはどんなことでもやるからだ。

次に、ZTEにはCEOに直接報告を行い、ビジネスプロセスに完全に組み入れられた十分に誠実で有能な「監視者」が必要だ。そうすれば個々の取引が全て精査され理解できる。さらには取引を拒否する権限が必要だ。しないように勧めるだけではなく。

こうすれば最終的にこの会社の一般社員は態度を改めるか――或いは辞めるだろう(大抵はもっと倫理的な行動を取らない競合会社に行く)。
ところがこのようなことは全て、たとえルールを破っても、(ルールというものが理解されている)西側の会社でも実行するのは困難だ。HSBC、スタンダードチャータード銀行、フォルクスワーゲン、シーメンスなど他のトラブルに巻き込まれた会社のことを考えてみればいい。

では、突き詰めると中国政府の世話になっている会社でどうすればこれが実現できるだろうか?これは答えを見つけるのが難しい厄介な質問だ。ZTE――また一般に中国の企業――の根本的な問題は、西側で禁止されている行為が中国では大抵の場合推奨される行為だということだ。賄賂、機密情報の窃盗、また制裁回避もこれに含まれる。ではなぜか?結局のところそうやってお金が儲かるからだと彼らは説明する。

数年前中国のある米国企業は、遠方にある地方企業が社名変更のみに広告を利用していることを発見した。その中国企業の社長は真顔で「効果があるからやった」と答えた。
米政府が抱く、ZTE製品についてのスパイの懸念に関しては、スパイ活動はより巧妙に隠蔽されるか、終結されるのではなく別の「プラットフォーム」企業に移されると考えられている。

トランプ氏がZTEについて、将来中国から自制と譲歩を他のところで引き出すことを意図した「誠意の」ジェスチャーと見なしていなければいいのだが。
中国で数十年の経験を持つある米国人ビジネスマンが次のように適切に言い表していた。「私の経験では、我々に対する中国共産党の意見に影響を与えるために『善行』をしても、中国共産党の支持を得ることは全くない」

トランプ氏は、どちらかと言えばZTEに対する猶予を、他の幅広い問題で中国に黙って従わせるために都合良く振りかざす棍棒か何かのように考えているようだ。

これはうまく行くかもしれない。だがZTEは「殺し」ておき、米国は他の企業もリストアップしていることを指摘してから中国に「では話し合いましょう」と言っていたほうが良かった。

このことで分かるのは、トランプ政権の側に奇妙にも冷酷さが欠けているということだ。中国政権に対応する場合に必要となる冷酷さだ。中国共産党が同様の自制を示すことは、皆無ではないにしても滅多になく、そして激しく攻撃する場合は巧妙に行うだけだ。

トランプ政権はアジアに関してはこれまでの政権より良くやっている。しかしながら、ZTEに影響力を及ぼすチャンスは逃してしまった。そのような好機が訪れることは滅多にない。実にそれは、ボクシングの試合でボクサーが相手の顎に痛撃を与えながら、次のパンチを放つ代わりに引き下がり、相手を休ませて――それから自分のコーナーに行かせて――頭を拭いてやるようなものだ。

トランプ氏はZTEに対するプランがあるのかもしれない。そうでないかもしれないが。

執筆者 : グラント・ニューシャム
日本戦略研究フォーラムの上席研究員であり、元米国海兵隊士官。米外交官、ビジネスエグゼクティブ、米国海兵隊員として日本とアジアで20年以上の経験をもつ。日本自衛隊の初のUSMC連絡将校だった。日本の水陸両用の対応を発揮する役割を果たし、他の地域水陸両用発展的活動にも関わった。

(海外ニュース翻訳情報局 泉水 啓志)

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