【シリア:オピニオン】誰がシリアを復興するのだろうか?

シリア内戦について、日本の主流 メディアではあまり多くを目にしません。そのため、多くの日本人にとって、実際はどういった状態なのか、よく分からない部分があるのではないでしょうか。Begin-Sadat戦略研究センターのウェブサイトで発表された記事に、「誰がシリアを復興するのだろうか?」という分析が報じられていました。
この記事の執筆者であるRoie Yellinek氏は、中国の中東諸国進出への対応に焦点をあてた研究をしています。そして、同氏は、中国と地中海を拠点とし、国際的な起業家、異文化経営を学ぶビジネスプログラムを行うChina-Medプロジェクトのメンバーでもあります。

そのことが関係しているのか、同氏の視点は、西側諸国サイドではなく、あくまでも中東サイドで、若干、中国よりに見えます。 この視点から、分析したシリアの記事はあまりないのではないかと思います。そして、この記事から、現在の中国が、「一帯一路」の周辺諸国をどれほど確実に固めていっているのかがわかる、今後の材料の一つになるのではないかと思います。
*こちらの記事は、
BESAから紹介します。

Post 2018//2/27  6:30

BESA by Roie Yellinek 2018/02/25】

要旨: 2011年に始まったシリアでのバシャール・アサド大統領と反対勢力との戦いは最終段階に達しているようだ。アサドが権力を維持することはほぼ確実である。
彼は今後数年間にシリアの指導者になるだろうし、荒廃した国の復興に取り組まなければならないだろう。シリア人やイスラエルを含む西側諸国のためにも、復興を導く中国の取り組みを支援することが賢明である。

2011年に始まったシリアでのバシャール・アサド大統領と反対勢力との軍の戦いは最終段階に達しているようだ。シリアの大統領が、権力を維持することはほぼ確実である。アサドは、今後数年間、シリアを指導する人物になるだろう。彼は崩壊した国の復興に取り組まなければならない。

国家的な視点から見ると、アサドは互いに各々戦った全てのグループ間で新たな力を生み出す必要があり、今では一緒に生活する状態に戻る必要がある。

物理的には、シリアは破壊されたインフラの大規模な再建を必要としている。

国連は、市民のためにシリアをもう一度生き返らせ、復興させるには2500億ドルが必要と見積もっている。

現時点では、西側諸国とアラブ湾岸諸国は、国民を虐殺したアサドが権力を維持することを認めることに依然として拒否している。これは、主要国が復興に参加して欲しいのは、イラン、中国、ロシアであるということを意味する。

中国が復興を指揮するということは、シリア人とイスラエルを含む西側諸国のためでもある。

中国とシリアの外交関係は1956年に樹立されたが、シリアの国家元首による初めての訪問は、2004年6月24日のアサドのものであった。これは、シリアの「東向き」を示している。

この訪問の後、2010年には、中国がシリアの5大武器供給国の一つになった。明らかに、戦争の間、この武器の流れはあまり注目されず続けられた。

中国の関心は、シリア内の過激派分子を含むシリアの近隣諸国の安定を維持することが含まれる。

また、国民と非宗教的なバアス党政権は、他の中東政権よりも中国の共産主義イデオロギーは良い一致を示している。また、シリアの反西洋主義は中国の哲学と相性がいい。

中国西北部の新疆ウイグル自治区のウイグル族ムスリム少数派と未知数のその子孫(推定数百〜五千、時にはそれ以上)が、反アサド・ジハード党員に加わった。
シリア政権が、よく訓練された意欲の高い戦士の中国への帰還を妨げるだろうということが、中国がアサドを支持するもう一つの理由である。

当然のことながら、シリアで大規模な復興の契約を獲得したいという中国の願望は、誰が勝つかにかかわらず、重要な関心事である。

多くのプロジェクトが中国の融資やシリア政権への援助によって資金提供されれば、中国はシリアでの強力な関係を得るだろう。これは、中国国家主席の主要なプロジェクトである一帯一路構想にとって価値がある。さらに、中国は、シリアへの介入が失敗した米国より有利になるだろう。

先に記載した3つの国の中で、中国は最もバランスが取れており、戦いに最も関与していない。一方、ロシアとイランは、アサド政権に代わって、また自国の利益のために戦いに深く関わっていた。これらの国がシリアの復興を導く場合、ロシアとイランに支援が行われ、シリアの反対勢力はアサド政権の抑制に苦しみ続けるだろう。

イランが復興を主導することへの関心は、真っ先に、イスラエルに対するシリアでの軍事拠点の獲得を望んでいることだ。
レバノンの同盟国により近く、そのリーダーシップの下でシーア派の勢力を強化することだ。

ロシアの関心は、同盟国であるアサドを支配するために、シリアの首都であるタルトゥースに海軍施設を保ち、アサドの排除を含む西側諸国の野望を食い止めたいという願望を含んでいる。

対照的に、中国の関心は、一般的に経済発展と関係し、安定性を維持している。彼らには直接的な関係がない。したがって、もし中国が復興を導けば、全当事者は相互の経済成長に貢献することができるだろう。中国が取引する国への不干渉政策は、シリアの派閥をまとめる安定要因となりうる。中国人はまた、宿敵との同時関係をどのように行うかを知っている。これは、この特別な場合に非常に役立つ可能性がある。

また、イスラエルの視点からすれば、中国の援助プログラムや、イランよりもシリアのゴラン高原を復興している中国企業を見る方がはるかに良いだろう。
当然のことながら、中国の経済力はロシアやイランよりも優れている。しかし、他の2ヶ国はアサド政権に大きな影響を与えているため、シリアの国民より自分たちに利益をもたらす復興プログラムに有利に働きかけるかもしれない。

中国企業はすでに復興に関心を示している。2017年1月24日、シリアの運輸大臣は、航空輸送、陸上輸送、鉄道建設の分野における協力を促進する方法について中国の経済代表団と協議した。

アサドと彼の同盟国が本当に望んでいることを知ることは難しいが、中国に対する態度は非常にポジティブだ。彼らは、おそらく、長年にわたり彼らの力を維持する復興計画を採用することに満足するだろう。イランやロシアが導く計画は、もう一つ別の戦争につながる可能性があるのに対して、中国の選択肢はこれを提供できるように見える。

執筆者 :Roie Yellinek:中東諸国での中国の成長に対応することに焦点を当て、Bar-Ilan大学の中東学科の博士候補者。国家安全保障研究所(INSS)で働き、彼の大学の部で研究助手として働く。現在、Begin-Sadat戦略研究センター(BESA)、Kohelet政策フォーラム、China-Medプロジェクトのフェロー。フリー・ジャーナリスト。上海大学研究員、Kohelet政策フォーラムとChina-Medプロジェクトのメンバー。

(海外ニュース翻訳情報局  MK)

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