【ロシア:分析】プーチン、極東を訪問:係争中の北方領土訪問の可能性も?

今週月曜から木曜までの予定で、プーチン大統領がロシア極東地域を訪問中だそうです。
この記事では、あくまでも未定ではありますが、旅程の終盤に彼が北方領土を訪問するのではないか、という可能性が語られています。
記事の大部分は、北方領土を含む極東地域が、ロシアにとって様々な視点からいかに戦略的な位置を占めているかということを説明したものです。アジアタイムズからの記事を紹介します。

Post 2018/02/20 15:59

Asia Times 2018/02/19】


極東に官邸建設の発表と大統領選に向けてのアピールの予定か?

ウラジミール・プーチン大統領は今週、ロシア極東地域への短期間の訪問を予定している。大きな発表が、特に今回の旅程に係争中のクリル諸島への訪問が含まれるかどうかを、アナリストは注視している。訪問日程は2月19~22日の予定。アジアタイムズが情報を得たところによると、大統領はハバロフスク地方とカムチャツカ地方、及びサハリン州を訪問する予定。サハリン州は、日本がその一部の所有権を主張しているクリル諸島を含んでいる。日本はその島々を「北方領土」と呼んでいる。

旅程はハバロフスク市からスタートすると見られており、そこでプーチン氏は2013年に起こった、この百年で最大の洪水による犠牲者たちの住宅を視察する。洪水の被害は中国東北部にも及び、3万5千人のロシア人が家を失った。続いて大統領は、極東最大の石油精製基地で、スホーイ・スーパージェット民間機の製造工場があるコムソモリスク・ナ・アムーレ市を訪れる。同市で大統領はいくつかの建設現場を訪れ、会議を予定している。

ロシア政治科学協会極東支部長イルダス・ヤルーリンによれば、カムチャツカとサハリンでの旅程は未定で、キャンセルされる可能性もある。だが、もし同地域への訪問が決行された場合、プーチン氏はクリル諸島の軍事基地に特別な注意を払うだろうと、ヤルーリン氏は言う。

「クリル諸島はサハリン州の一部で、国境地域にあります。その地域に強固な軍事基地を建設する重要性は、誰にでも理解できます。軍事的、戦略的に重要な地域なのです」とヤルーリン氏は語る。

プーチン氏は訪問中に、その諸島に予定されている海軍基地をどこに建設するかに触れる可能性がある。基地の建設については、昨年10月に、連邦安全保障会議副議長フランツ・クリンツェヴィッチが述べている。

クリル諸島は既に、極東軍管区の一部となっている。2016年11月にロシアは、前年に配置された対空ミサイルシステム、トールM2Uに続いて、クリル諸島の択捉島と国後島に沿岸ミサイルシステム「バスティオン」と「バル」を配置した。

しかし、プーチン氏のサハリン訪問の主目的は、クリルの領有権についての日本との協議の最新情報を得るためだと、ヤルーリン氏は語った。

モスクワと東京の両政府は第二次世界大戦後いまだ平和協定を結んでいない。クリル諸島南部(北方領土)の領有権についての係争がその理由のひとつだ。戦後、国際会議の結果としてソ連がその諸島の領有権を主張した。しかし日本は1855年の日露和親条約を根拠に、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島の領有権保持を主張している。

今日、両国は係争を解決するための活発な議論に合意しているようだ。2016年12月、プーチン氏と日本の安倍晋三首相はこの問題についての共同協議を開始することに合意した。覚書は、極東におけるエネルギー、事業、産業多様化の分野での関係強化を含んでいる。2018年1月に日本政府は、南クリル諸島(北方領土)における共同経済活動の可能性を含む新たな対話の準備があると発表した。

これと並行して、ロシアはクリルでの軍事基地開発を進めている。直近の軍事訓練はこの地で開催された。それでも、どのような形の解決もお互いにメリットがあるだろう。この問題に費やしてきた時間を考えると、もしもクリル問題を解決できなければ、安倍は政治的求心力を失うだろうと、アナリストは言う。ロシアにしても、日本との会話につまずいて投資を逃してしまうことは、損失となるだろう。

プーチン氏の訪問の最終目的地はカムチャツカ地方になる。ヤルーリン氏によれば、その地での主目的は金採掘の進捗具合を視察することだ。

「その地域での金の採掘はすでに計画量を超過しています。おそらく我々はその地区での鉱物の埋蔵量の可能性について良い知らせを聞き、将来の開発計画についても聞くことになるでしょう」とヤルーリン氏は語った。

しかし、プーチン氏の訪問の最重要目的はおそらく、3月18日の大統領選挙に向けての当地での演説だろう。プーチン氏は、アジア諸国に向けてロシアの極東地域開発への彼のコミットメントを誇示しながら、次の大統領任期に向けての綱領について話すことになるだろう。安倍氏のプーチン氏との次回の会議はおそらく、大統領選直後の3月か4月ごろに予定されている。

「今回の動きは、まだ再選は決まっていないものの、プーチン氏は大統領選での勝利に確信を持ち、その先の計画を練っていることを示しているようなものだと言えます」とヤルーリン氏は語った。

他にも重要な声明が出される可能性がある。ヤルーリン氏がアジアタイムズに述べたところによると、プーチン氏は極東に住居を構えることを発表するかもしれず、それは実に戦略的な動きだということだ。「極東に官邸を持つことは、モスクワやソチまではるばるアジア太平洋諸国首脳を招待するのに比較すると、彼らと面会する機会を増やすことになります」と専門家は語った。

極東地域は617万平方キロメートルの広さがあり、ロシア全土の36パーセントを占める。その地域は9つの連邦構成主体に分かれている――アムール州、ユダヤ自治州、マガダン州、サハリン州、カムチャツカ地方、プリモルスキー(沿岸)地方、ハバロフスク地方、サハ共和国(ヤクーチア)、チュクチ自治管区。南の国境を中国・北朝鮮と、南東を日本と、そしてベーリング海峡を挟んで、極北東をアメリカと接している。

資源の豊かな土地で、ロシアのダイヤモンド埋蔵量の98パーセント、錫の80パーセント、金の50パーセントと、漁獲量の40パーセントがこの地域に属している。主要産業には非鉄金属とダイヤモンドの産出および精製、漁業、林業、造船及び船舶の改修などがある。だが、2016年1月1日時点での地域の人口は620万人で、全人口の4.2パーセントに過ぎない。ロシア国民なら誰でも、極東の土地を5年間開拓すれば、1ヘクタールの土地が無償で与えられるという報奨にもかかわらず、だ。

昨年、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムにおいて、「地域の開発は絶対的な優先度を持ち、ロシアの競争力、経済、そして人的資源を発展させるための戦略の最重点施策である」とプーチン氏は語った。

地域経済を活気づけるための国家の施策のうちに、18の特別経済区域の設立がある。これまでのところ、200の企業が特別経済区域の特恵を受け、合計で380億ドルに上る計画を立てている。その他の施策にはウラジオストクの自由貿易港指定があり、そこでは関税が免除され、官僚的な手続きを排除することによって投資を促し、そして電子ビザ制度の導入によって18か国からの旅行客を誘致している。

<写真キャプション> 自由貿易港に指定されたウラジオストク

(海外ニュース翻訳情報局 加茂 史康)

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