【米国:粛々と実行】政策:知らぬ間にトランプが今週行った5つのこと

トランプ大統領のニュースと言えば、ロシア疑惑や暴露本などスキャンダラスなものが多いように思われますが、具体的にどのような政策を行っているかきちんと知る人は意外と少ないのかもしれません。政治スキャンダルの裏で真に国民生活に関わる重要な政策が粛々と進められている(かもしれない)ことを我々は肝に銘じる必要があるのではないでしょうか。本記事は、米国のニュースサイト、ポリティコからの紹介です。

Post 2018/02/03  21:42

Politico by Danny Vinik  2018/02/02 】

政治劇場の水面下で、今週トランプは真の意味で政策を動かした。

ドナルド・トランプ大統領の一般教書演説は何日も経たないうちに「メモ」でうやむやにされた。すなわち、トランプに対するFBIの偏見を意図的に示した短い議会資料のことである。今週は、共和党と民主党、そして大統領と彼が統率するFBIとの間で政治的な混乱に終わり、来週に迫ったさらなる政府予算期限までの時間を潰している。

あらゆる騒音と政治劇場の水面下で、トランプ政権は重要な政策変更を継続して行った。特に、国土安全保障省では移民政策に関し2つの大きな動きがあった。他にも、労働者擁護者らが珍しく米国農務省から勝利を獲得し、環境保護庁は継続的にオバマの環境遺産を急速に覆している。以下に、トランプが今週変更した政策について述べる。


  1. 新たな安全対策で難民を歓迎

トランプの渡航禁止令が司法の厳しい抵抗に直面している一方、他の主要選挙公約についてははるかに追い風となっている。すなわち、難民流入を阻止することである。9月に、難民受け入れ上限をオバマ最終年の11万人から4万5千人に減らした。また10月には新たな難民審査基準を作る命令に署名し、国土安全保障省に「高リスク」な11か国に対し90日間の再検討を行うよう指示した。

月曜日に国土安全保障省は再検討を終え、政権は11か国から難民を受け入れるが追加的かつ不特定の安全対策を課す予定であることを発表した。11か国は公式に名前を発表されていないが、当局者による以前の発言から該当する国はエジプト、イラン、イラク、リビア、マリ、北朝鮮、ソマリア、南スーダン、スーダン、シリアおよびイエメンであることが示唆されている。同省は、断続的にこのリストを再検討し更新する予定である。

元々の渡航禁止令とは異なり、国土安全保障省の発表は国内での激しい抗議を引き起こさなかった。アムネスティ・インターナショナルのような人権団体は禁止令を非難したが、この動きが国内で大きく注目されることはなかった。司法が時に彼の対策を阻むことがあるが、それでもトランプは難民流入の阻止に真の意味で成功しているのである。


  1. トランプは対露制裁法の遵守から逃れている

昨年8月に拒否権を覆されるという危機に直面し、2016年の大統領選での介入を理由とした、新たな対露制裁を課す法案にトランプは渋々署名した。しかし、彼はこの法律に非常に批判的であり、実際の対露制裁対象を特定するための期限であった10月1日に間に合わなかった。1か月遅れてボブ・コーカー(Bob Corker)上院外交委員会議長が公然と批判してようやく国務省はこの方針に従った。

今週トランプ政権は、この法律でもう1つの重要な期限に直面していたが、その結果はまたもや議員らを怒らせることとなった。月曜夜に数分を割いただけで、財務省はロシアの「最も重要な大物外国人政治家とオリガルヒ(新興財閥)」を特定するための期限に間に合ったのだ。そのリストに特定の結論は伴わないが、ロシア指導者らを大いに懸念させるものであった。しかし、専門家らがすぐに気づき財務省報道官も間もなく認めたが、このリストは、フォーブズ誌に掲載されていた大富豪96名を写したものにロシア政府高官の名前を加えたものであったのだ。このことで、財務省は法律を実行するための誠実な努力を怠ったとして、議員らの激しい抗議を引き起こした。

政権は、月曜までに法律の定めにより行わなければならないと民主党議員が主張した、ロシア当局者への制裁も拒んだ。国務省報道官は、月曜日というのは政府がロシアの対象者に特定の制裁を課す期日ではなく、政府が制裁を行う場合の「開始日」であるとしてこの動きを擁護した。


  1. 農務省は鶏肉業界を巡る論争で労働者に味方した

民主党議員と労働者団体は、トランプが大統領の座にある間歓喜に沸くことはほとんどなく、職場保護に関する長いリストが後退することを批判している。そのリストには、特定労働者に対する超過勤務基準を掲げる労働省の規定から、連邦請負業者の労働基準を掲げる規定に至るまで記されている。

しかし今週、労働者の権利を擁護する人々によい知らせが届いた。労働者を危険にさらすことなく効率性を向上させることができると全米鶏肉協会が主張していた、鶏肉処理を行うラインを高速化させるという同協会の要求を農務省が退けたのである。現状の規定下では、食肉製造業者は1分あたり(の処理が)140羽を超えてはならない。労働・人権団体は、労働者の健康を害すとして鶏肉製造業者の陳情に対して声高に反対していたが、この農務省の行動を賞賛した。彼らがトランプ政権に拍手を送るというまれな出来事であった。


  1. 国土安全保障省はシリア人の特別在留資格を延長した

議会がずっと移民について妥協点を見いだせない一方、トランプ政権は行政権限を国の移民規定に主眼を移して行使している。わずか数か月前に国土安全保障省は、母国の状況が帰国できるほどに改善したとしてエルサルバドル、ハイチ、ニカラグア、およびスーダン出身者に対する(一時保護資格(TPS)で与えられた)特別在留資格を取り消した。

水曜に国土安全保障省は、同じプログラムで与えたシリア人7千人の在留資格も取り消すかを決める期限を迎えた。移民擁護者らの間で、トランプは戦火で荒廃した母国に彼らを送り返そうとするのではないかと恐れられていたが、国土安全保障省は在留資格を18か月延長すると決定し、18か月後の時点でシリアの状況について再度判断を行う予定であるとして、7千人のシリア人を安堵させた。しかし、これは移民擁護者にとって必ずしもよい知らせとは言えない。国土安全保障省は伝えられるところによると、同じプログラムでは新たなシリア人の入国をこれ以上認めない予定であるという。


  1. 環境保護庁は水質浄化(WOTUS)の遅れに決着をつけた

2015年初頭に、環境保護庁は米国における湿地の汚染を制限するための大規模かつ待望の計画を発令した。水質浄化(WOTUS)大統領令は、環境保護主義者らに賞賛されたが、企業に巨額の費用を課すことで経済成長を妨げると主張する業界団体や保守派の不評を買った。

しかし、環境保護主義者らが賞賛するのは時期尚早であった。公表してから間もなく、司法が大統領令の施行を阻止する差し止め命令を出したのである。それから昨年6月に、スコット・プルイット(Scott Pruitt)長官率いる環境保護庁は大統領令を全撤廃した。しかし、連邦最高裁判所は間もなく37州で差し止め命令を事実上解除したため、環境保護庁は今週、WOTUS発令から2年遅れて新たな大統領令を発令し、オバマによる最重要な環境遺産の1つを納めた「棺」に最後の釘が打ち込まれたのである。


(海外ニュース翻訳情報局 渡辺 つぐみ)

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