【2018年ダボス会議:ソロススピーチ全文】歴史上の現在の瞬間 (第一部)

今回は、ダボス会議でのジョージ・ソロスのスピーチ全文を紹介します。1時間にわたるスピーチなので、随時編集出来次第、3部に分けて発信します。

Post 2018/01/30  13:08

Davos, Switzerland, January 25, 2018】

歴史上の現在の瞬間

こんばんは。
私が、世界の現状の概観を述べることが、ダボス会議で毎年の恒例となっています。私は、発言に30分、質問に30分を予定していましたが、1時間近くスピーチをしなくてはならないことがわかりました。これは我々が直面している問題の重大さだと考えています。私のスピーチが終わりましたら、皆さんのコメントと質問を受け付けます。ですから、そのつもりでご準備してください。

私は歴史上において、現在の瞬間が、かなり悲惨な状況だと感じます。開かれた社会が危機に瀕しております。プーチン大統領のロシアなど様々な形の独裁政権とマフィア国家が台頭してきています。米国では、トランプ大統領はマフィア国家を確立したいだろうが、憲法、他の機関、そして活気ある市民社会がそれを許さないので、彼はそうすることができません。

我々がそのことを好きであろうとなかろうと、私の財団、我々のほとんどの助成金の受領者たち、そして私自身個人的に、過去の民主的な成果を守るために、我々の苦境に挑戦しています。私の財団は、いわゆる発展途上世界に焦点を当てたものです。しかし、米国と欧州でも、開かれた社会が危険にさらされているため、ここで起きていることが、全世界への悪影響があるので、身近なところで予算の半分以上を使っています。

しかし、過去の民主的な成果を守るだけでは不十分です。我々はまた、社会の価値を守り、将来の猛攻撃に耐えられるようにしなければなりません。開かれた社会には常に敵がいます。各世代が、生き残るために社会を開くという義務を再確認しなければなりません。一番の防御は、理にかなった反撃です。開かれた社会の敵は勝利を感じています。これにより抑圧的な取り組を余計に押し進められることになり、憤慨が生じ、後退する機会が与えられています。今日ハンガリーのような場所で起こっていることです。

私は自分の財団の目標を「敵からの開かれた社会を擁護し、政府に責任を負わせ、批判的な思考法を育成する」と定義しました。しかし状況は悪化しています。開かれた社会の生き残りだけでなく、我々の文明全体の生き残りが懸念されています。北朝鮮の金正恩や米国のドナルド・トランプなどの指導者の登場は、このことと関係が深いです。両者は自分の権力を保つために、核戦争の危険を冒してもかまわないようです。しかし根本的な原因は、さらにより深くなります。建設的で破壊的な目的のために、自然の力を利用するという人間の能力は、我々を適切に管理する能力が適切に変化する間、成長を続けています。そして、現在は低迷しています。

核戦争の脅威は非常に恐ろしいので、我々はそれを無視する傾向があります。しかしそれは本当の事です。実際、米国は、北朝鮮が核兵器国となったことの受け入れを拒否することによって、核戦争の方向にまっしぐらです。これは、北朝鮮がすべての可能なスピードで核能力を開発するという強いインセンティブを生み出し、その結果、米国は核の優位性を先制的に使用するようになるかもしれません。核戦争を防ぐために核戦争を開始することは、明らかに自己矛盾した戦略です。

事実、北朝鮮は核兵器国になっており、すでに起こったことを防ぐことができる軍事行動はありません。唯一の賢明な戦略は、そのことがどんなに不快な事であろうと、現実を受け入れることであり、北朝鮮を核保有国としてとみなすことです。

このためには、すべての利害関係国、その中でまっさきに中国と協力することを米国に要求します。中国は、北朝鮮に対する権力の大部分を占めていますが、それを利用することを嫌います。もし、北朝鮮にきつすぎる要求したならば、政権が崩壊し、北朝鮮難民が中国に流入する可能性があります。さらに、中国は、米国、韓国、日本のいずれの国 に対しても、様々な恨みを抱いており、その国々に対し、いかなる恩恵をも払わないことを望んでいます。

協力を得るには広範囲な交渉が必要です。だが、一旦達成されれば、同盟は、北朝鮮にアメとムチの両方で対峙することができるでしょう。ムチを使って、誠意ある交渉に入るよう強制することができ、アメは核兵器のさらなる開発を確実に停止するために褒美を与えることができます。いわゆる凍結のための凍結合意が、より早く到達すればするほど、その方針は、より成功が増すだろう。成功することによって、北朝鮮が核兵器を完全に稼働させるまでの時間を測ることができます。

私は、国際危機グループが北朝鮮の核戦争の展望について公表した、ちょうど2つの影響力のある報告書に注目したいと思います。

我々の文明の生き残りに対するもう一つの大きな脅威は、強制的な移住の原因となっている気候変動です。私は、他の場所での長い間の移動の問題に取り組んできましたが、その問題がいかに深刻で難しいかを強調しなければなりません。私は気候変動の詳細については、何が必要なのかがよく分かっているため、詳述したくありません。我々には科学的知識があります。特にトランプ政権では、それが欠けている政治的な意志です。

明らかに、私はトランプ政権を世界の危険と考えています。しかし、私は、それを2020年には消える全く一時的な現象と考えています。私はトランプ大統領に彼のコアとなる支持者を見事に動かしたことには賞賛しますが、すべてのコアな支持者と同様に、強く動機付けられたより多くのコアな敵を作りました。そういうわけで私は2018年に民主党の大勝を予想しています。

米国での私の個人的な目標は、機能的な二大政党制を再構築することです。これには、2018年の大勝だけでなく、無党派の区割り、より優秀な裁判官の任命、適切に実施された国勢調査、および機能的二大政党制が必要とするその他の措置を目指す民主党も必要となります。

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(海外ニュース翻訳情報局 MK)

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