【中国・情報統制】イランの騒乱の報道停止をメディアに命令、大規模投資のために安定を求める

イランの混乱は、中国国内では報道停止されているそうです。中国国内で同じようなデモが起きることを恐れている中国政府。そのことについての記事をZero Hedgeから紹介します。
Post 2018/01/05  23:50

Zero Hedge  by Tyler Durden     2018/01/04

イランに広がるデモが始まって1週間となる中、中国政府は、全国の報道機関に新たな検閲指示としてイランのデモについて報道することを止めるよう命じた。

 リークされた指示は、China Digital Timesが翻訳したものを発表しているが、ジャーナリストに「イランのデモについてこれ以上報道しない」ことと、「続報を行うには上司からさらに通知を受ける必要がある」ことを知らせるものだ。

China Digital Timesは政府の指示を次のように報道している。

次の検閲指示は、政府当局からメディアに出されたものだが、リークされインターネットで広まっている。情報源を保護するために発行機関は削除されている。

イランのデモについてこれ以上報道してはならない。続報を行うには上司からさらなる通知を受ける必要がある。すでに配信された、正式な情報源からのものや適合したものを含む関連情報は、過剰に宣伝すべきでないが削除してはならない。中国語

 イランのデモのニュースは、中国のソーシャルメディアで話題になっており、国営メディアと独立系メディアで集中して報道されていた。ニューヨーク・タイムズの香港特派員であるオースティン・ラムジー氏は、「中国のツイッター界の活動家は、イランのデモに非常に注意を向けており、自国でも同様のことが起きることを期待してデモの拡大を応援していた」と意見を述べた

しかしながら、中国政府当局は、数百億ドルという大金を投じて、すでにイランのインフラ開発プロジェクトにおける世界でも主要な投資元としての立場に立っており、イランの状況が安定することを重大な関心事としている。1月2日の定例記者会見でイランのデモについて質問されたとき、中国外務省の耿爽(Geng Shuang)報道官は、「中国はイランの安定が保たれ発展することを希望している」と簡単に一文で答え先へと進めた。この明らかに控えめで遠慮がちなイラン政府寄りの回答は、イランのデモが国内で同様の運動を呼び起こすという問題よりも、中国の投資の保護と新たな市場での貿易の成長との結びつきが強い。

2017年の終わりにかけて複数の報道で指摘されたように、中国はイラン経済の原動力となるチャンスに飛びついてきた。イギリス、アメリカ、フランス、ロシア、中国、ドイツが調停した2015年の核合意の一環として、2016年1月に国際的な制裁が解除されたためだ。二国間の関係は、中国の習近平主席が2012年に就任したときから和解に転じ始めた。そして制裁が解除された2016年1月までに、習はテヘランを訪問して最高指導者のアリ・ハメネイとハサン・ロウハニ大統領と会談した。中国の最高指導者がイランを訪問したのは14年ぶりのことだった。

 

そのときロウハニと習は中国の野心的な一帯一路に関する合意を交わし、イランを「新たなシルクロード」という触れ込みのプロジェクトの重要な連結役として、大規模なユーラシア大陸共同開発計画に引き込んだのだった。そこではペルシャ(イラン)は地政学的に明らかに欠かせない存在だ。これには、エネルギー、投資、通信、金融、文化、科学、技術、政治といった分野をカバーする17に及ぶ数十億ドル規模の取引が含まれており、今後10年にわたる中国・イランの幅広い提携のロードマップを伴うものだった。これにより、中国をヨーロッパとアフリカと物理的にインフラのレベルで結び貿易関係を拡大する一方で、今後数十年をかけてイラン経済に総額数兆ドルが投入されることになる。

しかし、イランの現在の騒乱がこのまま継続して不安定な状況になれば、そのようなプロジェクトは凍結し、融資は焦げ付き、投資家は揃って撤退するだろう。

専門家の多くは、西側の企業が(新たな制裁と政情不安を恐れて)模様眺めのままであった理由がまさにこれだと指摘してきた。中国だけでなく、韓国やイタリア(後者はイランのヨーロッパ最大の貿易相手)といった国も、病院から鉄道、港湾、発電所に至るまであらゆることでイランに前例のない投資を行った。例えば韓国(原文ママ)のエクシム銀行は昨年の夏、イランのプロジェクトに対して95億ドルの融資契約を結んだ。中国の国営メディアである新華社通信によると、昨年12月の初めにイランと韓国の企業が太陽光発電と代替エネルギー、断熱材、リチウムイオン電池と電動エンジンに関してイランに技術移転することで合意を結んだとされている。

サウスチャイナ・モーニング・ポストによると、先月、イラン商工会議所の投資委員長は、ローマで行われたイラン・イタリア投資会議の際に「彼ら(西側企業)はイランに早く来た方が良い。そうしないと中国が占領してしまうだろう」と述べた。言うまでもないが、政治的な混乱が短期間だとしてもイランを揺さぶっている中、そのような呼びかけは今や見向きもされない。

ヨーロッパの銀行の中には、オーストリアのOberbankのように最近イランと契約したところもあるが、西側の企業は、トランプ政権でアメリカが新たな制裁を課す可能性があるために消極的であった。デモは一週間続き、今や懸念は濃厚なものとなった。経済的な不満に端を発したものだったが、すぐに警官との暴力的な衝突へと変わった例もあり、ロウハニの排除と聖職者による統治の終結の両方を求めるようになっている。騒乱に突入して一週間、22名のイラン人の死亡が伝えられた。そのほとんどが市民のデモ参加者であったが、警察官1名と暴徒に起因する偶発的な死亡者もいる。

世界の報道の見出しでは、一部の西側首脳とイスラエルやサウジアラビアのような他の長年のイランの敵対国による好戦的な声明でますます加速させられ、人権と民主的取り組みに対する弾圧に関してイラン政府の行動にますます注目が集まる中、中国はこのようなレトリックが自国のメディアに氾濫することと、イランに対する投資への確信が揺さぶられることを食い止めようと試みている。

*補足説明・・・この記事が発信された1月4日時点では米のイラン制裁はまだ出ていませんが、1月5日に米財務省が弾道ミサイル関連企業への制裁を発表の報道がありました。

(海外ニュース翻訳情報局 竹林 浩)

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