【IS・崩壊後の問題】IS崩壊に伴う、外国人戦闘員による脅威を専門家が警告

10月下旬にいわゆる「イスラム国」が都としていたシリア内のラッカが陥落し、壊滅状態にあるとの報道がありました。ISでは、多くの外国人戦闘員が暗躍していたことが知られていますが、彼らはその後どうなったのでしょうか。本記事によると、生き残った外国人戦闘員の中には世界各所に拠点を移しつつある者もいるようです。本記事は、エルサレムを拠点とするオンライン紙、The Times of Israelからの紹介です。
Post 2017/12/17 13:18

The Israel Times 2017/12/16】

数千人のジハーディスト(聖戦主義者)が戦争地帯を脱出した可能性があり、多くは戦闘能力と爆弾を作る知識を持っている。

ワシントン発—「イスラム国」組織が2014年にシリアおよびイラクの領土を占領し、カリフ国を宣言した際、世界各地から推定4万人が渡航し武器を取った。

西側諸国が支援するシリアおよびイラク連合軍による軍事行動に、領土の大部分を明け渡したISが生存をかけてあがく中、数百人がまだ戦っていると考えられている。

しかし、残りの者はどうなったのだろうか。

数千人の多くの者は激しい戦闘で確実に死亡したと確信しているが、米国の専門家は多くが生き残っており、恐ろしい脅威が進んでいると考えている。

「問題は、何人死亡したかです。何人がまだそこにいて、戦おうとしているのでしょうか。何人が戦うために別の場所に行ったのでしょうか。」と米国のランド研究所(Rand Corporation)で国際安全保障・防衛政策センター(International Security and Defense Policy Center)所長を務めるセス・ジョーンズ氏は語った。

「何人があきらめたでしょうか。我々にいい答えがあるとは思えません。」

 

国際テロ対策組織は、こういった問いに対し多大な努力をしており、ISの外国人戦闘員の氏名を挙げ、数を数え、追跡すべく懸命に取り組んでいる。

当局者によると、フランスでは2013年以降に約1,700人がイラクおよびシリアに行き、ISに参加した。その中で、400~450人は殺害され、250人がフランスに帰国した。

ジャン=イヴ・ル・ドリアン外務大臣は、12月8日に、まだ約500人がイラク・シリアの戦域におり、今やフランスに帰国するのが非常に困難になっていると述べた。

しかし、それとは別に所在不明となっている500人が残っており、その多くに戦争を行い、武器を持ち、爆弾を作る能力がある。

『片道切符』

テロの専門家である、ジョージタウン大学のブルース・ホフマン氏は、水曜の会議で「数千人」が戦争地帯から逃れたと推定した。

「現時点で、おそらくバルカン半島でしばらく身を潜めつつ、他の欧州諸国へ潜入する機会を待っている者がいると思われます」と彼は述べた。

米国の戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)で『国境を越えた脅威プロジェクト』に携わるトーマス・サンダーソン氏によると、他のジハーディスト(聖戦主義者)の最前線へと渡航した者もいる。

サンダーソン氏によると、たとえば、少なくとも80人のモロッコ、ロシア、サウジアラビア、およびイエメン出身のIS戦闘員が、今年の5月以降に、ISと同盟関係にあるフィリピン南部のアブ・サヤフ反乱戦闘政府部隊に参加している。

 

北部アフガニスタンにあるジョウズジャーン州の地元民らは、フランスまたは北アフリカ諸国出身のフランス語を話すIS元戦闘員が最近、州内にキャンプを置いたとAFP通信に伝えた。

また、彼らにはリビア、ソマリア、イエメン、その他IS類似のジハーディスト(聖戦主義者)集団がいる場所といった、北アフリカの他の紛争地域で暴力的な暴動を行う選択肢もある。

シリア、イラクの戦場でISは敗れたが、退避経路は遮断されていない。IS戦闘員は民間の難民に溶け込むか、賄賂を使ってトルコに潜り込むことができたのである。

ジョーンズ氏によると、多くの者に選択肢はそれほどなく、戦い続けるしかない。ほとんどの場合投獄されることになる出身国には、帰る考えがまったくないからだ。

「多くの者にとって、ISへの渡航は片道切符でした。彼らはカリフ国に永住したいと希望していました。ですから、大多数が戻ってくるとは思いません」とジョーンズ氏は述べた。

(海外ニュース翻訳情報局 渡辺 つぐみ)

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。