【英国・NSS報告書】チャールズ皇太子の王位継承時に、王室と国教会を徐々に解体すべき

英国は、英国国教会を国教とし、国家元首である君主が長を務めます。しかし、今日の英国で英国国教会を熱心に支持する人は、もはや少数派になっているようです。英国世俗協会(NSS)は報告書で、チャールズ皇太子が王位を継承するときが、今の王室と国教会のあり方を変える好機であると主張しています。本記事は、英国エクスプレスからの紹介です。

Post 2017/12/15 9:23

【Express UK by By MATT DRAKE 2017/12/12】

英国世俗協会(National Secular Society, NSS)*の報告書によると、チャールズ皇太子が戴冠するときに、君主制と英国国教会(英国聖公会とも呼ばれる)は、「廃止される」べきであるとした。

英国世俗協会(National Secular Society, NSS)*とは・・・英国の世俗主義と政教分離を促進運動する組織。彼らは宗教やそれを欠いているため、誰も利益や不利益を得るべきではないと考える。それは1866年にチャールズ・ブラドラウによって設立され、2002年のアムステルダム宣言を支持して国際人道倫理連合の加盟組織になった。ウイキペディアより

同報告書によると、次のように分析している。
チャールズ皇太子の王位継承は、英国国教会の廃止について議論する「特に好都合な時機」となるであろう。

「教会と国家の分離:国教廃止の論拠」によると、チャールズ皇太子は、戴冠式の宣誓で明確に聖公会信仰を保持することを表明すれば、英国人口の大多数である聖公会員でない者を敵に回すであろう。

NSSは、英国国教会を「きれいさっぱりやめるよりは、徐々に解体する」よう推奨している。

この判断は、おそらく王室派と聖公会信者を激怒させるであろう。

しかし、同報告書は国教に対するいかなる擁護も、「多くの点で欠陥がある」と一蹴している。また、「国家が推進する宗教は、国をまとめるという感覚を保持する必要がある」と信じるのは「馬鹿げて」おり、「多様で信仰を持たない民主主義社会においては、明らかな時代錯誤である。」

同報告書は次のように述べている。
「戴冠式での宣誓の表現は、礼拝で布教される信仰を共有しないものは皆、国家の完全な権利を持つ市民として認められることはないとほのめかすものであるが、効果はほとんどない。戴冠式は、国を統一し、あらゆる種の包括性を提案するものであると考えられているからである。」

同報告書では、1871年のアイルランドや、1920年のウェールズなど、国教廃止の数例を示している。

2017年1月1日から、ノルウェーも国教会を廃止している。

国家元首であると同様に、君臨する君主は教会の長であり、英国国教会の最高統治者であり、そして『信仰の擁護者』でもある。

同報告書は、チャールズ皇太子は伝えられるところによると、「キリスト教の信仰(the faith)」ではなく、(キリスト教に限らない)信仰(faith)の擁護者であり続けたいと希望していると認めている。

 

また、同報告書では、次のように付け加えている。
「伝統的な肩書は、聖公会でない大多数の英国の人々を敵に回すであろう。他方で、この困難を避けようとして(キリスト教に限らない)『信仰の擁護者』という肩書を採れば、英国国教会の多くの支持者を敵に回すであろう。」

同性愛、同性婚、そしてほう助自殺の合法化といった特定の問題に対する現在の国教会の態度は、21世紀にそぐわないとも主張している。

同報告書によると、この現状は格差を生み、教会指導者が自らの考えを他に押し付けられるようになっている。

同報告書はこう続く。「この動かしがたいキリスト教信者の減少が英国で起こっているのは、国教会と一般の人々との価値観の差が大きくなってきていることに伴う」

「多くの倫理に関する問題で、国教会が後退的な態度を取ったことを反映している。問題には、女性の権利(例えば、2015年にリビー・レーン氏が(女性司教としての)聖職位を授与されるまで、女性が司教になるのを拒んでいたこと)や、2013年の同性婚法制化(投票した司教は一人残らず反対した)、そしてほう助自殺の合法化(国教会の聖職階級と、在家信者の多くとが反目した)が含まれる。」

同報告書では、2011年時点で国教を持つ国はわずか25パーセントであり、その中で自由民主主義国であった国は少数派であると指摘している。

同報告書は、このように付け加えている。「(英国世論調査会社)ユーガブ(YouGov)とサン紙が共同で2013年に行った世論調査によると、18~24歳の56パーセントが自分は『無宗教』であると述べた(また、英国国教会に所属していると述べたのは13パーセントのみであった)。56パーセントは、礼拝に参加したことがなく、(さらに、18パーセントは年1回以下の参加である)、また41パーセントが、宗教は悪いことの原因となっていると考えている(宗教が善の力であると主張するのは14パーセントのみであった)。」

聖公会のキリスト教は、英国の政治制度と密接に絡んでいる。

英国国教会の司教26名が、(英国)上院に議席を確保しており、議論および法改正の投票をする権利がある。
しかし、権利として立法府に宗教指導者を置いているのは、英国とイランのみである。

同報告書はこう結んでいる。「宗教的特権を持つものの声は大きく、与えられた利権は強い。」

「しかし、21世紀という時代における問題に効果的に取り組み、議会が中世の過去に執着し続ける国ではなく、英国が近代国家になろうとするのであれば、解決の一助として、教会と国家の分離が求められる。」

 

(海外ニュース翻訳情報局 渡辺 つぐみ)

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