【元米軍海兵隊士官・緊急分析】日本の南西諸島のための任務部隊を創設する時が来た‐さもないと島は失われる

元米軍海兵隊士官のグラント・ニューシャム氏による、南西諸島防衛についての具体的な提言です。同氏によれば、陸、海、空の各自衛隊を統合した任務部隊を創設し、米軍と連携するしか、中国の脅威に立ち向かう現実的な方法はありません。備えなしには、南西諸島を失うことを覚悟するしかないという深刻な分析です。アジア・タイムスの記事を紹介します。


Asia Times By GRANT NEWSHAM 2017/12/13】

中華人民共和国のことを把握するのは容易だ。常に言外に手の内を明かしている。尖閣諸島(中国名では釣魚群島)については、中国政府はこれまで非常に明白であった。つまり中国の領土であり「機が熟したら」中国の支配下に戻されるというのだ。

何が起こるかといえば、中国海警局の支援を受けた中国漁船が尖閣に群がるということだ。視界外には中国人民解放軍の海軍、上空には空軍を携えて。それと並行して中国政府は、古代から中国の領土であった場所で海上の安全を確保しているだけだと宣言するだろう。

だが尖閣は前菜でしかない。メインコースは南西諸島(琉球諸島としても知られている)全体となる。中国はその所有権も主張しているのだ。ある観測筋が何年も前に指摘したようにその後の最後の仕上げは台湾だ。

考えられないことだろうか?10年前、中国が南シナ海を実効支配するという考えや、ジブチに大規模な基地を置くことは同様に考えられないことだった。

中国が今尖閣に対して行動を起こした場合、日本の自衛隊の対応は、(日本政府の対応同様に)場当たり的でまとまりのないものとなり、常に人民解放軍に対して後手に回るだろう。

いうまでもなく変化がなければ事態は悪化する。中国が軍艦と軍用機を増やし(同様に重要なこととして)作戦能力を向上させる中、自衛隊はますます不利になるだろう。

特に人民解放軍は、陸海空軍が一貫して共同で(「合同で」)作戦を実行するために統合能力を着実に向上させてきた。近代戦の生命線だ。

これが問題の核心である。個々の部隊の能力を向上させたり、南西諸島地域で自衛隊を増やしたりしても、自衛隊が「合同で」作戦を行えなければその価値は限定される。

 

このような(脳の命令に従って手と足を機能させるのと同様の)能力が欠けた状態では、自衛隊は各部隊を合わせた総和をはるかに下回る。またもし日本政府の暗黙の計画が、米軍が「差を穴埋めするだろう」というものであるなら、その考えは甘い。日本が自国の防衛のためにできることもやらないと受け止められれば、ワシントンで支持を受けることはないだろう。

その上危機が発生した場合は時間が重要だ。日米が対処するときまでには、人民解放軍が尖閣(あるいは掌握した場所ならどこでも)をがっちりと支配し、唯一の選択肢は戦争となるだろう。それは尻込みさせられるような見通しだ。

わずかな事前の計画と適度の努力で避けられるとするなら、まったく二重に残念なことだ。

正しく理解すること

たとえ日本政府が必死に防衛費を増やさないようにしていようと、実行可能で有用なことがある。中でも重要なのが、南西諸島防衛の使命を帯びた南西諸島統合任務部隊(Joint Task Force-Nansei Shoto:JTF-NS)だ。

JTF-NSは指揮下に(海上保安庁の船舶を含む)部隊を持ち、南西諸島防衛のあらゆる面で責任を持つ。海上自衛隊、陸上自衛隊、航空自衛隊、そして海上保安庁の作戦に加えて、対潜水艦戦、機雷戦、航空およびミサイル防衛作戦、そして陸上の対艦ミサイルシステムも指揮する。

最も重要なことは、JTF-NSは自衛隊の指揮官に協力を余儀なくさせるということだ。こうして根本的な弱点に対処する。南西諸島防衛という限定的な使命を持った統合任務部隊は、それぞれの自衛隊(訳注:陸上自衛隊、海上自衛、航空自衛隊を指す)がわずかな資源と権限のみを放棄することを要求する。それは自衛隊の指揮官が何十年も抵抗してきたことだ。

JTF-NSを米軍と連携

自衛隊の独力では、改善されたといっても人民解放軍と比較すると不十分だ。しかしながら米軍と統合するなら、中国の計画担当者は大きな頭痛を抱えることになる。それは作戦の上でも言えることだし、米国にケンカを売ることで生じるあらゆる事態についても同様だ。

日米両国は、ともに南西諸島防衛のための本物の能力を完全に作り上げる必要がある。これには、自衛隊と米軍による東シナ海の沖縄「西部」に対する通常のパトロールおよび演習と、地域の非常事態のための合同対応計画が含まれる。また米国政府は、沖縄南部の島で日本の自衛隊と作戦行動を取るために、米国海兵隊、海軍、そして空軍の別動隊を派遣しなければならない。

東シナ海の尖閣諸島周辺では、中国海上監視船や日本の海上保安庁の船舶が見られる。写真:ロイター/共同通信

 

可能性のある筋書きと非常事態を考え抜き、演習に次ぐ演習を行う。事前の計画と準備をしないというなら、負けることを覚悟することだ。既にやっていることではないのか、というのはもっともな質問だ。それが常識であるとしても、どうやらやっていないらしい。

この取り組みで重要なところは、自衛隊と米国のセンサーとインテリジェンス収集ネットワークを改善して連携させ、何が起きているか確実に分かるようにして(お互い同士ではなく)正しいターゲットを撃つことができるようにすることだ。何年も前にこれが実現していれば、と願っていた人もいる。

隊同士相互に、また米軍とも作戦行動が可能な日本の自衛隊が生み出す戦闘力が飛躍的に向上する以上に、こういったこと全てから生じる政治的、心理学的な有益な連鎖反応というものが、日本政府と米国政府の両方で存在する。

実現する

JTF-NSは、中国が南西諸島に現れたときに棚から引っ張り出すただの三穴バインダーなどではない。また、問題が起きたときに集まる同盟調整メカニズムのような協議グループなどでもない。

むしろ、永続的で「具体的な」組織となる必要があるのだ。本部があり部隊と人員が割り当てられる。計画し、訓練し、必要なら戦う組織だ。

理想的には沖縄に配置することだ。第3海兵遠征軍本部に隣接してキャンプ・コートニーに作ればなおさら良い。そして米国の人員を加えて本物の日米作戦にするのだ。

米国海兵隊と海上自衛隊以外では、米軍と自衛隊はほとんど「アパルトヘイトのような」関係だった。分離され不平等な関係だ。

JTF-NSを指揮するのはどの自衛隊か?それは重要ではない。自衛隊のどれか1つから協力に前向きな大人を見つけるだけだ。

JTF-NSの障害

日米の市民と軍(自衛隊)当局者には、このようなことは全て「余りにも難しい」と主張する人が多い。そんなことはない。難しいのはそこまで実現したいと思っていないというだけのことだ。

だから今準備を始めるか、さもなければ中国のものとなった南西諸島に行くときに、パスポートを持っていく準備をするということだ。

執筆者 : グラント・ニューシャム
日本戦略研究フォーラムの上席研究員であり、元米国海兵隊士官。米外交官、ビジネスエグゼクティブ、米国海兵隊員として日本とアジアで20年以上の経験をもつ。

(海外ニュース翻訳情報局 竹林 浩)

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