【フーヴァー研究所・論文】アメリカのアジアでの同盟の取り組みを変更する時が来た

日本とアメリカ合衆国との間には日米安保条約があります。アメリカは同様の条約をアジアの他の国とも結んでいます。保守とリバタリアニズムに影響力を持つアメリカの公共政策シンクタンクであるフーヴァー研究所によるこちらの論文は、現代のアジアにおいてそれらの条約が既に時代遅れではないかという一石を投じています。

Post 2017/12/06 22:13

Hoover Institution by  Miles Maochun Yu 2017/12/05 】

アメリカ合衆国と中華民国との間の相互防衛条約の締結から、先週で63年を数えた。
1954年12月2日にワシントンで締結された歴史的な相互防衛条約は、1955年から1979年までの間、台湾を中華人民共和国の侵略から守る鉄壁の保証となった。

1979年1月1日にジミー・カーター大統領がその重要な条約を一方的に破棄してからは、台湾は北京の共産党政府からの絶え間ない侵略の恐怖に晒されることとなった。
なぜなら、その後に制定された台湾関係法では、もし中国がその民主主義の島を侵略した場合であっても、台湾への直接的な軍事介入が保証されていないからだ。

台湾との相互防衛条約の締結と停止は、今日のアジアにおけるアメリカの防衛同盟への取り組みを変える喫緊の必要性を示している。

現在アメリカはアジアにおいて、欧州でのNATO(北大西洋条約機構)のような多国間同盟を結んでいない。その代わりとして、アメリカのアジアでの取り組みは、日本、韓国、フィリピン等の別々の同盟国との二国間相互防衛条約に基づいている。

この取り組みは変えなければならない。なぜなら、アジアでの二国間同盟の前提が既に存在しなくなっているからだ。そして、アメリカ主導の、大きな多国間相互防衛システムへの推進力が緊急かつ圧倒的に必要とされるようになっている。

数々の二国間条約が締結された1950年代には有効だった、アジアでの二国間条約システムの基本的な前提は、次の二つだ。

まず、欧州とは異なり、アジアの国々は、民主政権から独裁政権まで、多少なりとも同じような政治システムを擁していなかったために、多国間防衛条約を結ぶに足りる共通の政治的価値観が存在しなかった。

次に、ソ連という共通の敵に対峙していたNATO加盟国とは違い、当時のアジアの様々な同盟国には共通の敵が存在していなかった。

今日のアジアでは、それら二つの二国間同盟システムのための前提は既に存在しない。1980年代中盤からのアジア民主化の波は以前よりも幅広い共通的価値観の枠組みを作った。なぜなら、台湾の中華民国や韓国など、かつては独裁政権下にあったアメリカの同盟国は、活気に満ちた民主主義国となったからだ。

いまや、日本、韓国、インド、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、それにほとんどのASEAN加盟国のように、NATOのような多国間相互防衛同盟を形成するに足るだけの国が、アジアには存在する。

しかしさらに重要なことは、中国という、それらの国々の共通の脅威が復讐心を持って勃興してきたことが、共通の価値に基づいた多国間相互防衛条約のためのより説得力のある議論を呼び起こしたということだ。

言い換えれば、今日のアジアの国々にとっての中国は、1991年以前の欧州の国々にとってのソ連と同じような共通の脅威だと言えよう。

比類なき軍事力を持った民主大国主導の多国間防衛同盟は、加盟国に対して様々な共通の枠組みを提供する。

たとえば、日本と韓国の間のように、ずるずると長引く、ときには些細な相互不信の傷を癒すこと。
NATOがスペインやポルトガルやトルコに対して影響したのと同様に、この新しい同盟に参加したより民主的でない国々に民主主義を促進する機会を与えること。

アジアの新興国が原動力となって共同防衛のための費用を負担してくれるので、アメリカ合衆国の防衛費を格段に抑えられること。

日本とアメリカを引き離そうとして中国が韓国に対して行ってきたような、アジア地域でのアメリカのリーダーシップを損ねようとする中国の他国への影響力を防止すること。
そしてもっとも重要なのは、アジア、そしてさらに広い地域での今後の平和、安定、民主主義への希望への中国の攻撃に対するより強固な抑止力を形成することだ。

今、アメリカにとって、時代遅れの二国間交渉を捨て、共通の脅威に対抗するための、共通の価値に基づいた、アジアの大きな枠組みでの相互防衛条約を形成する多国間交渉を採り入れる時が来た。

執筆者:Miles Maochun Yu
研究チーム: 軍事史/現代紛争ワーキンググループメンバー米国海軍士官学校(USNA)で東アジアの軍と海軍の歴史教授。
軍事情報学の歴史と新聞の柱に関する数多くの学術論文の著者。著書:OSS in China: Prelude to Cold War (Yale University Press, 1997) and The Dragon’s War: Allied Operations and the Fate of China, 1…

 (海外ニュース翻訳情報局  浅岡 寧)

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