【米国・教育】米国に来る留学生が初めて少なくなった理由

米国の大学は、世界的に圧倒的な地位を占め多くの留学生を受け入れてきました。ところが、昨年初めて留学生入学者数が減少したそうです。世界大学ランキングでの米国の大学の存在感が薄れつつあること、また最近のトランプ大統領の入国禁止令をめぐる報道の影響などが理由として挙げられています。本記事は、米国マーケットウォッチからの紹介です。
Post 2017/11/17  6:55

Market Watch  By JILLIAN BERMAN

外国出身の学生は、昨年の米国経済に390億ドルを超える貢献をした。

就学のため渡米する留学生が初めて少なくなった。

政治情勢により、才能ある学生らが渡米を思いとどまっているのではないかという懸念の最中、昨年米国で就学した留学生の数が初めて低下した。

国際教育の調査・促進を行う組織である国際教育協会(IIE)が月曜に発表した報告によると、2016~2017学年度の新入留学生は、前の年から3.3%低下した。数はわずかであるが、高等教育の幹部らが海外での米国の高等教育機関の評判について、より懸念を深めている時期にこの低下が起こった。

「米国の高等教育部門にとっての懸念材料となるには十分です」と、IIEの調査・政策・実践部門長であるラジーカ・バンダリ氏は減少について語った。「政府はもちろん、各機関にとって、また高等教育部門で働く者すべてにとって、我々はしっかりと留学生に門戸を開き続けるべきだと知らせるものです」と語った。

就学のため渡米する学生が少なくなったのには、多くの要因があるとバンダリ氏は語った。 その1つには、世界ランキングでの米大学の歴史的な優越性が衰え始めていることが挙げられる。またバンダリ氏によると、米大学の費用が上がっているために留学生が他国を探すようになっているのかもしれないと、大学幹部らは心配しているという。

同時に、トランプ政権の移民政策をめぐる報道で、大学幹部らは留学生が渡米に関して弱気になっているのかもしれないと心配するようになった。トランプ大統領による最初の入国禁止令に掲載された6か国からは、約17,000人の学生が2015~2016学年度に米国で就学している。

「各機関は、これまで通り歓迎されていると留学生が感じているのかを懸念しています」と彼女は語った。「学生にはより多くの選択肢があり、就学面からだけでなく就学期間が終わった後働くことができるという面からも、最善の機会を提供する他国に目を向けています。」

しかし、留学のため渡米する新入生の減少は米国政治だけの問題ではない。ブラジルおよびサウジアラビアの2か国は、自国の学生に対し多くの留学奨学金プログラムを有するが最近は計画を縮小しており、それらの地域から渡米する学生の減少を引き起こしているとバンダリ氏は語った。

米大学の留学生全体数は、少なくとも現時点においては減少していない。しかし、新入留学生数の低下が続けば、米大学の懸念材料となるかもしれない。大学にとって、才能ある留学生を引きつけることで、アメリカ人学生に異文化について学ぶ機会を提供するとともに、世界的な地位を高める一策となりうるかもしれない。

恐らくもっと重要なことを言えば、多くの学校にとって、特に公立大学にとって留学生は必要な収入源をもたらしている。留学生は通常、少なくとも州外出身学生と同額を支払っており、また通常はローンや奨学金ではなく家族が出す資金に支払いを頼っている。調査では、公立大学に対する州からの資金額が低下するときは、大学が留学生の入学数を上げていることが示されている。

授業料を全額払っていることに加え、留学生は就学で渡米する際に地元や州経済に貢献もしている。IIEが引用した商工会議所のデータによると、留学生は昨年の米国経済に390億ドルを超える貢献をした。

「これは非常に大きな貢献です」と、バンダリ氏は語った。

(海外ニュース翻訳情報局 渡辺 つぐみ)

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