【米国・オピニオン】日本の核兵器アレルギーは心因性?

日本でタブー視されている核武装の問題を「アレルギー」になぞらえ、その原因を考察するとともに、かつて同様にタブーとされていた水陸両用作戦が目の前の脅威に直面して一般化したように核アレルギーにも「治癒」の可能性があるのではないかという、グラント・ニューシャム氏によるオピニオンです。アジアタイムスからの記事を紹介します。
Post 2017/10/26  13:00  update 2017/11/10 12:00

Asia Times By  OCTOBER 23, 2017

日本の核武装についてつぶやく声はあるものの、それが実現すると考えている人はほとんどいない。日本問題の専門家の間では長年にわたって、日本は(広島と長崎で)二度の原爆投下を受けたために核兵器アレルギーなのだという見解がある。

しかしながら、広く受け入れられている見解によくあることだが、これはそれほど確かなことではないのかもしれない。実際、より綿密に調査してみると日本の核アレルギーは心因性のものであるかもしれないのだ。

日本の核兵器に対する嫌悪は、おそらく兵器自体というよりも日本が第二次世界大戦中に被った大惨事に関係している。そして1941年から1945年までの戦争は、1931年に始まった中国(大陸)での大きな犠牲を払った悲惨な泥沼に続くものに過ぎなかった。

米国による東京への空襲は1945年の核攻撃に劣らず恐ろしいものであり、日本の主要な町でも免れたところはなかった。太平洋での地上戦は同様に凄惨だった。

日本はその戦争で軍民合わせて約300万人の命を失った。人口の規模に合わせて換算すると、米国であれば約600万人の死者が出たようなものだが、これに対して実際には30万人の軍人が殺されており市民の犠牲者は皆無に近かった。

終戦後、米国では戦勝パレードがあり復員軍人援護法のおかげで軍人は大学に入り家を手に入れた。戦後の日本は荒廃し餓死することもあった。

これをすべて忘れてしまうことはたやすい。そして、それが実際、日本人の(核兵器だけでなく)防衛に対する態度をある一定の考え方に向かわせている。もし米国が同じようなことを経験すれば米国人の防衛に対する態度はどうなるだろうか?というのは公平な質問だ。

(行進、お決まりの演習、そして雪まつりにふさわしい軍隊と対比して)実際に戦闘可能な軍隊を作り上げることに日本人が抵抗することには、何らかの怠惰さと米国への病的な依存または見下した扱いといった面がある。

しかし、第二次世界大戦の恐ろしい経験は忘れるべきではない。

核兵器に関して、日本は自国を唯一の犠牲者と表現するのを好む。けれどもこれは、おそらく責任を転嫁し、または失敗の言い訳をするという人間の持つ自然な特質と言ったほうがいいのかもしれない。日本人だけ、ということはないのだ。

第一次世界大戦後、多くのドイツ人が(ユダヤ人に)「裏切られ」、戦勝国にヴェルサイユでいじめられたと主張したのであり、(ドイツ国民ではなく)それがヒトラーの躍進の本当の原因だった。

そして米国人の中には、ベトナムの失敗は政策や戦い方のまずさのせいではなく、国内の偏向した報道と反戦活動家のせいだったのだと主張している者もいる。

また日本でアレルギー症状の発作を引き起こすのは、核という言葉だけではない。

ほんの数年前まで、「水陸両用」という言葉は日本の政界、学術界、官僚、そして軍事関係の集まりの中でさえタブーだった。その言葉を口にするだけでも日本の特定の高官のキャリアを台無しにすることになった。

なぜか?日本の軍隊が海外に行って人々に攻撃する姿が呼び起こされたからだ。そして1930年代、1940年代のそれに伴うこと以外のすべてだ。つまり300万人の死、国内戦線で受けた恐ろしい経験、敵国による占領だ。

しかし最近は、水陸両用は承認された語彙リストの中に戻っており、自衛隊は日本の国土を中国から防衛するのに必要な能力として水陸両用部隊を育成している。

左翼の朝日新聞でさえあまり反対していない。必要なのは本物の脅威が現れることだけだったのだ。

「核」が承認リストに載るのもそれほど先のことではないと感じられる。

日本が望むなら、核兵器を作りそれを放つ能力を開発することは難しいことではない。核兵器とミサイルに詳しいある観測筋は、二カ月前に次のようにコメントした。

「単純な核爆弾が欲しいのであれば何の苦労もいらない。強化された核爆弾が欲しいのであれば少し苦労するかもしれない。本格的な水爆が欲しいのであれば、ある程度苦労するが克服できない障害はない。

日本は実際にロケットを作り発射しており、原子炉の経験もある。だから政治的なことは別として、要求があるのであれば何の問題もなく非常に短い年数で核兵器を搭載したICBMを配備することができるはずだ」

それで、例えば米国が日本を防衛するという約束を撤回する(またはそのように行動すると受け止められる)か、北朝鮮のミサイルが東京を攻撃するか、あるいはまた中国が尖閣諸島を手に入れるとしよう。

そのような状況になれば、日本は核アレルギーから奇跡的に回復するかもしれない。
(海外ニュース翻訳情報局 竹林 浩)

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