【日中関係・論文】中国vs.日本 アジアのもう一つの大きなゲーム

しかし、現在の日本に対する理解と好感度が日本のためになるのはそこまでだ。日本の世論調査会社である言論NPOが2016年、「2026年までに日本のアジアでの影響力は増加するか?」という質問をしたところ、中国人のわずか11.6パーセント、韓国人の23パーセントが肯定的な回答だった。おそらく驚くべきことに、日本人自身ですら28.5パーセントしか、そう思うと答えなかった。2015年に中国について同様の質問をしたところ、中国人の82.5パーセント、韓国人の80パーセント、日本人の60パーセントが、2025年までにアジアでの中国の影響力は増すと答えた。ここ二十年間の中国の経済成長、そして日本の経済停滞が、間違いなくその結果に影響している。しかし、習近平国家主席による最近の中国の政治的動向も、おそらくは関係しているだろう。

アジア地域での世論調査では、日本よりも低い評価であるにもかかわらず、中国は、その究極の力により、世界はともかく、アジアで最も有力な国になるだろうという予想の波に乗っている。これは、企業やアジアの慎重な中立国を引き寄せることを容易にする。AIIBは、アジア諸国が中国の提案に群がった一例であり、BRIはもう一つの例である。北京は、その影響力を自国のためだけにも使っている。例えば、カンボジアやラオスといった東南アジア諸国に圧力をかけ、ASEANでの共同発表で、中国の領海拡張問題で、中国に有利になるよう働きかけた。

しばしば、中国がとても優位に立ったことが、逆に反感を生んできたことがあった。そして日本は、中国に対する地域諸国の不安感を利用してきた。ASEAN諸国が2000年代初頭、中国、日本、そして韓国を交えて、東アジアサミットを提案した際に日本政府は、オーストラリア、インド、そしてニュージーランドを参加国に加えるようシンガポールに働きかけ成功した。この3つの民主主義国を加えることは、最大の環太平洋構想になると期待されたこのサミットにおいて、中国の影響力を削ぐためである。そして、中国メディアはこの行為を非難した。

日本も中国も、誰もが認めるアジアの超大国として君臨したことはない。東南アジア諸国は、結局日本対中国(同様に日米対中国)の政治と安全保障の争いに関わりを持ちたくはない。この分野の専門家であるブビンダー・シン(Bhubhindar Singh)、 サラ・テオ(Sarah Teo)、そしてベンジャミン・ホー(Benjamin Ho)は、最近次のよう述べている。「ASEAN諸国は米中関係により焦点をあててきた。なぜなら、東南アジアに同盟国を持つアメリカが、南シナ海問題に自ら入ってきたからだ」。そして、三名とも日本と中国のつながりは、短期・長期的もアジアの安定にとって、決定的に重要であるとも考えている。この件に関しては、国家モデルという大きな問題よりも、安全保障の点が中心になると考えられるが、アジアの国々の発展ということになれば、日本と中国の関係により明白に焦点が当てられることになる。だれもが、短・中期的なアジアの将来には、アメリカの役割の重要性は否定しない。しかし、日中関係の(争いも含む)長い歴史的経緯を理解することは、より広い視野で地域を分析する観察力、リーダーシップ、脅威の兆しを把握するための重要な要素だ。今後数十年のアジアの形成にも関係があるだろう。

日本も中国もアジアを離れることはできないということは、役に立たないというわけではないが、自明の理だ。彼らはお互いと、そして近隣諸国と密接につながり、自由には動けない。さらに、お互いアメリカと密接に関わり合っている。日中の経済的つながりは、将来より深まることは当然であり、自国に最適になるようアジアの貿易と経済関係の枠組みを作ることを模索すると同時に、それ以外の方策を探してもいる。北京と東京の間での、より一層の政治的な協力が必要な時代がくることは間違いない。同時に、最低限の日常的常識的儀礼も必要になる。草の根活動での交流も続くだろう。少なくとも、何百人もの観光客という自由意志を通じて。

両国の歴史や文明の功績は、いずれにせよ、彼らが誰もが認めるアジアで最も強大な国であることを証明しており、そして競争は今後も続くであろう。日本がアメリカとの同盟関係を続けるかどうかにかかわらず、また中国の一帯一路構想の成功如何にかかわらず、この二国がアジアの政治、経済、そして安全保障の環境を形成し続けようとするだろう。アメリカは、世界への関与と国益との間で起こる矛盾で揺れ動き続け、それにより、アジアでは、必ずしも自発的に意思決定しない期間へとつながるであろう。ただ、そのような中でも、中国と日本は複雑に結びつき、時には緊張し、競合し合う関係、つまりは、アジアの永遠に続く勝敗をかける大きなゲームが、今後も続けられるであろう。

写真:ロイター記事よりチャイナデイリー提供 2017年7月30日、内モンゴル自治区の朱日和訓練キャンプにて、人民解放軍創立90年記念パレードで、中国国旗を掲げている。

(海外ニュース翻訳情報局 浅岡寧・渡辺つぐみ・YY・KM・TO)

 

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