【日中関係・論文】中国vs.日本 アジアのもう一つの大きなゲーム

安全保障の問題においては、中国政府と日本政府の間には、アジアにおける影響力と権力に対してはるかに多くの直接の勢力争いがある。平和な社会と、軍隊にさまざまな制限があることで有名な日本では、これは奇妙に聞こえるかもしれないが、過去十年間、中国と日本の両国は従来からの安全保障のパターンから抜け出そうと務めてきた。中国政府は、アジア太平洋地域での自由な活動に対する主な脅威と考えるアメリカに標準を合わせている。しかし、観察者は中国の政策立案者やアナリストがどの程度日本について懸念しているかを軽視すべきではない。場合によってはアメリカよりさらに大きな脅威であるとも考えているのだ。

この地域の外交政策を論ずるときに往々にして見過ごされる事実だが、日本と中国は両国ともアジアに実際の同盟国はない。日本と中国は、両国より力の弱い隣国を支配、というより潜在的に支配しているので、信頼関係を築くことが困難だ。さらにアジアでは、それぞれの国は帝国主義時代の支配者としてよく記憶されており、めったに語られることはないが、警戒されるもうひとつの壁を付け加えている。

日本については、第二次世界大戦の遺産を不安のある取り扱いをしたことと、戦争中の侵略行為と残虐行為に対して十分な謝罪がないという多くのアジア諸国側の感覚によって、この不信感はもたらされた。しかし、1945年以降、日本には長期にわたる平和憲法があり、アジアでの軍事的プレゼンスが限定的であることは、日本がしうる疑惑を封じ込めることに寄与した。1970年代以降、日本政府は東南アジアと関係を築くことを優先したが、最近までそれは主に貿易に標準を合わせたものだった。

2012年に政権に返り咲いて以降、安倍首相は日本の防衛費を増大し、日本の安全保障の協力関係を地域で拡大させてきた。十年間の減少の後、安倍政権の防衛予算は2013年以降緩やかに支出額を増やし、現在は合計でざっと年間500億ドルになる。それに続いて、武器輸出の禁止や集団的自衛の禁止といった戦後の法的規制を改革し、安倍首相はアジアでの増大する中国の軍事的プレゼンスを多少なりともそぐ方法として日本の支援を提供するように努めた。海洋パトロール艦艇と飛行機をマレーシアやベトナムやフィリピンを含む国へ販売することで、南沙諸島と西沙群島における中国との領海問題において、こういった国々への軍事力の増強を支援した。同様に、日本政府はオーストラリアに次世代潜水艦を販売し、インドに水陸両用救難機を供給することを期待したが、結局どちらの計画も失敗に終わるか保留された。

このような失敗にもかかわらず、日本は南シナ海地域を含むさまざまなアジアの国と安全保障の協力関係を強化してきた。米印のマラバールの海軍軍事演習に公式に参加し、最大規模のヘリ空母を3か月間東南アジアの港に寄港した後に2017年7月の演習に送った。日本の海上保安庁は、地域で積極的にかかわり続けており、東南アジア海上保安機関と協力して海賊行為や自然災害への対処を支援するだけではなく、南シナ海の係争中の領海を監視し、防衛能力の改善のために共同の海上安全委員会の設立を計画している。ごく最近、河野太郎外相は、東南アジアのための5億ドルの海上安全保障イニシアチブを発表し、世界一密集した海上航路のある国々の能力強化支援を計画している。

日本政府が共同で行う賭けとして、アジア諸国に橋を建設しようとすると、中国政府は支配的なアジアの安全保障の権威として見られるために人工島を建設した。東シナ海や南シナ海での強引な主張やインドのような大国を含む多くの隣国と領土問題があることを考えると、中国は日本以上に複雑な安全保障の方程式に直面している。過去二十年間の中国軍事力の劇的な増強によって、単に海軍や空軍の能力が上がっただけでなく、政治的には、中国の主張を擁護し、さらには拡張するように働いた。南沙諸島列島で人目を引く島の埋め立てと基地の建設をしたことは、さまざまな権利を主張し、南シナ海で相手国を小さく見せるための軍事プレゼンスを後押しする中国政府の意志をよく表している。同様に、ジェームス礁や、マレーシア近海、あるいはインド洋のように、中国が主張する領海からはるかに遠い地域で中国の海洋演習が増えたことで、中国政府の軍事力の増強を潜在的な脅威と見ている国を不安にさせた。

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