【英国】ロシア報告書:英国政府がクレムリンによる干渉を調査しなかったことが判明

米国の2016年の大統領選でロシア介入がありましたが、英国のブレクジットの国民投票に関しても、ロシア介入が疑われています。それにもかかわらず、長期にわたって英国の諜報機関は殆ど分析していなかったことが判明したという、英国諜報機関の委員会のロシア報告書についての記事です。
こちらの記事は、英国ガーディアンからご紹介します。



《引用記事 ザ・ガーディアン2020/07/021 》

長い間放置されていたロシアレポートによると、英国政府と諜報機関は、2016年ブレグジット国民投票に干渉しようとするクレムリンの試みについて、適切な分析を行っていなかったということが判明した。

この非常に都合の悪い結論は、議会の情報安全保障委員会が作成した50ページにおよぶ文書に含まれていたものだ。同委員会は、 「閣僚たちはロシアの混乱疑惑を事実上無視した」 と述べている。

それによると、政府はその時点で 「英国の民主主義プロセスへの干渉が成功した証拠を見ていないし、探してもいない」 とし、そのための真剣な取り組みが行われていないことを明らかにした。

「この報告書は、ロシアが国民投票に干渉したか、政府の誰も知らなかったことを明らかにしている。なぜなら、彼らは知りたくなかったからだ」と、超党派の委員会の委員を務めるスコットランド国民党議員のスチュワート・ホージー下院議員は語った。

「英国政府は、ロシアが介入したという証拠を探すことを積極的に避けてきた。証拠を見ていないと言われたが、探していなければ意味がない」

英国の諜報機関の活動を詳細に調査している同委員会は、 「ロシアによる介入の試みについて、国民投票後の分析は一切されていない」 と述べている。それは米国の回答とは対照的だった。

「この状況は、ロシアが2016年の大統領選挙に介入したという疑惑に対する米国の対応とは全く対照的である。この場合、投票から2カ月以内に情報機関に分析され、その結果の要約(非機密扱い)が公表された」

委員会のメンバーは、クレムリンが英国のEU離脱に影響する国民投票に介入したかどうかについては、何の努力もされていないため、最終的に結論を出すことはできないと述べた。

「たとえそのような評価の結論が最小限の干渉であったとしても、それは英国の民主的プロセスが比較的安全であったことを国民に再確認させるのに役立つだろう。」と報告書は述べている。

政府が直ちに全面調査の要求を拒否した後、労働党は昨夜、ロシアによって英国の民主主義にもたらされた安全保障上の脅威への対応に失敗したと非難した。

水曜日の議会での緊急質問に先んじて、影の内務大臣ニック・トーマス・シモンズは、「あらゆるレベルで、政府の対応は脅威に見合うものではないようだ」と述べた。

「この報告書は、ロシアからの脅威が明らかに増大している中で、わが国の国家安全保障を維持するための政府の対応の欠点の規模を概説している」とシモンズ氏。

この報告書は、国会議員や貴族からなる超党派委員会によって作成され、英国の諜報機関や独立系の専門家から得た証拠を含む18ヶ月にわたる研究成果をまとめたものだ。たなざらしにされたこの報告書はかなり編集されているが、ロシアが英国の政治や社会生活に浸透していることに十分な注意が払われていないという結論の要旨は明らかだった。

また委員たちは、公開されている複数の調査結果から、ロシアが国民投票に影響を及ぼそうとしていた証拠として、ロシアのメディア 「Russia Today」 と 「Sputnik」 には 「ブレグジット支持派か反EU派の記事が多数派だった」 とか、ツイッターでは 「ボットやトロール (荒らし) 」 が使われたことが指摘されていることを指摘した。

2014年のスコットランド独立住民投票に関連してロシアが「影響力キャンペーン」を行ったという「信頼できるオープンソースの論評」があったが、それにもかかわらず、ブレグジット投票後まで英国の民主主義に対するクレムリンの脅威に目を向けようとする動きはなかった。

何らかの分析がなされたと思われるのは、2016年7月にロシアが米民主党のメールをハッキングした後であり、この文書は、2017年の総選挙後に何らかの演習が行われたことを示唆している。

「情報機関の関連部署が国民投票前に同様の脅威分析を実施していれば、ロシアの意図するものと同じ結果に達しなかったとは考えられず、その結果、プロセスを保護する行動を取ることになったかもしれない」と報告書は付け加えている。

英国政府の公式回答は、 「EU(離脱の)国民投票への干渉が成功した証拠は見当たらない」 と述べ、英国の諜報機関がロシアの脅威について 「定期的に分析」 しているため、調査を開始する必要はないと付け加えている。

「この長期的アプローチを考えると、EU(離脱の)国民投票の遡及的に分析するは必要ない。」と述べている。

ドミニク・ラーブ外務大臣は、政府がロシアの干渉の脅威を深く掘り下げないよう 「積極的に 」要求したという主張を否定した。

「我々は長い間、サイバーを含め、ロシアが英国にもたらす永続的で重大な脅威を認識してきました。ロシアは国家安全保障上の最優先事項です」とラープ外務大臣。

しかし、ISC委員のホージー下院議員は、ブレグジット投票の余波で、ボリス・ジョンソン首相とテレサ・メイ首相の両首相がクレムリンへの干渉を検討することを拒否したことを痛烈に批判している。

「誰も問題に関わろうともしなかった」と彼は言い、昨年12月の選挙前に報告書が公表されなかったのは「暴挙」であると付け加えた。首相官邸ははロシアの脅威から「目をそらした」ために、必要な対応を過小評価し、いまだに「キャッチ・アップ」しようとしていると、同議員は述べた。

委員会は、英国はまた、「ロシアのオリガルヒとその資金にとって好ましい目的地」になっていると指摘し、彼らはそのコネクションを通じて英国の公的生活を腐敗させる力になっていると結論づけた。

また、名前をあげていないが、「多くの英国貴族院議員がロシアに関連するビジネス上の利害関係があったり、あるいはロシア国家に関連するロシアの大手企業で直接働いていることは注目に値する」と警告している。

2006年にクレムリンの暗殺者によって夫アレキサンダーがロンドンで殺害されたマリナ・リトビネンコは、この報告書とロシアのオリガルヒが政治献金をしているとの報道に 「非常にとても喜んでいる」 と述べた。

彼女は、報告書がクレムリンがイギリスに脅威を与えている証拠が十分にあることを示していると述べた。
「政府が甘いというのは言い訳にならない。2006年に私の夫に、そして2018年にセルゲイ・スクリパリに起きたことの後には、言い訳はできません。不審死が多すぎるのです」

閣僚らは、クレムリンが英国の政治に干渉した 「成功した例はない」 と長い間主張してきたが、先週その立場を放棄した。ラーブ上院議員(保守党)
が、米英貿易交渉に関連する違法に入手した書類を広めたとして、「ロシアの役者」を非難した時のことだ。最終的には選挙期間中にその書類は、労働党の前指導者ジェレミー・コービンの手に渡った。

委員会のメンバーは、ブレグジット投票への干渉の可能性について調査を開始する際、MI 5に証拠文書を要求したところ、MI 5は 「当初わずか6行のテキストしか提供しなかった」 と不満を漏らした。

報告書は昨年10月に完成したが、総選挙前にジョンソン首相が座っていて、12月に首相が機密解除して釈放を許可しただけだった。官邸が(ISC議長に)
保守党のメンバーを指名するまで公表できなかったが、クリス・グレイリング(保守党)は、野党議員の支援をうけ、代わりにジュリアン・ルイスが選ばれた*。(訳注* 2020年7月15日、ルイスは、委員会の野党議員の支援を受けて、議会の諜報および安全保障委員会(ISC)の議長に選出された。彼は政府の優先候補者であったクリス・グレイリングを破った。)

ルイスはその後、保守党の鞭**を取り除かれたが、新たに独立したこの議員は、報告書が発表されても、情報機関の監視を政治利用していると非難し、反省していない。(訳注** 保守党の鞭とは、党の除名のこと)

「この委員会は前例のない遅延と混乱にさらされている。これは二度と起こってはならない。この政府と委員会の間に早く正常な関係が確立されれば、すべての関係者にとってより良いことだ」と同委員長は述べた。

ロシア当局は、英国が 「ロシア恐怖症の主導的な役割」 を果たしていると批判し、ロシアは2016年のブレグジットについての国民投票に影響を及ぼそうとしていたことはなかったと主張した。

ロシアの立法機関である連邦評議会の外交委員会の責任者であるコンスタンチン・コサチョフ氏は、火曜日の文書発言で、「告発は再び根拠がなく、裏付けもなく、説得力に欠ける」と述べた。

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里 文・翻訳)

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