【ロシア:日本語訳②】ロシアの諜報機関のFSB分析官が書いた6番目の内部告発レポート 3/13

By Mariko Kabashima

こちらのレポートは、ロシアの諜報機関のFSB分析官が書いたレポートで、元はロシア人権団体「GULAGU NET」創設者ウラジミール・オセチキン氏が3月13日にFBに公開した文書です。
実をいうと、このレポートは、FSB内のWindofChangeからウラジミール・オセチキンへの6番目のレポートになります。

驚くべきロシアのシナリオが書かれています。
中身については賛同しませんが、プーチンがどう考えているのか、知るには良いレポートだと思いました。
今後どうなるのでしょうか。

今回もロシア語から直接翻訳に挑戦してみました。

3月8日に当サイトで出したレポートと合わせてお読みください。

尚、この一連のレポートについての信ぴょう性については、調査報道チーム「Bellingcat」がFSB関係者複数に照会し「同僚が書いたもので間違いない」の回答を得たとのことなので本物だろうとのことです。

また、言葉のニュアンスについて私が疑問に思ったところは、イゴール・スシュコ氏が英語に翻訳したブログを参考に、わかりにくい部分は括弧で追記してあります。
スシュコさんありがとうございました。Thank you Igor !


《引用記事 Vladimir Osechkin 2022/03/13》

第三次世界大戦が始まったようだ。我が国ではシャンパンのコルクが弾けていまる。イランとアメリカの戦争によって核取引は頓挫し、ロシアの石油をイランの石油で代替する可能性は阻まれた。ホルムズ海峡の必然的な閉鎖によって石油価格は急騰するだろう。なぜイランが自らの足を撃つことにしたのか、私にはまったく理解できない。(ロシアとイランの間で)何か理解しがたい合意があるのではとさえ思ってしまうのだが、それを裏付ける事実が一つも見つからない。

今日は、私たちの目*訳注* WindofChange個人ではなく、組織としてのFSB)と、そしてクレムリン周辺の「廷臣**」(訳注**国王の下にある王宮を指す)から見た、これからのロシアの「出口」についての情報をお伝えしたいと思います。

これは(実際の準備書面の)「コピー」ではなく、極めて正確に再現したものですので、一切の編集を行わない完全な公開も含めて、お好きなようにご利用ください。

これはむしろ短い計画のみで、詳細な推敲はもっと大量で詳細で実質的なものになる – まだ途中段階です。それでは、イランとアメリカの紛争の状況が明確になるまで、連絡をとらないので、(この新しい計画について)すべてを説明しようと思います。「ゴルディアスの結び目***」は、このような出来事を踏まえて、間違いなく大きく変化していくことでしょう。
訳注*** 難題を一刀両断に解くという意味)


「ゴルディアスの結び目」作戦

ステージ 1.
最も可能性が高いのは、おそらくコナシェンコフ(少将、ロシア国防省首席報道官)がブリーフィングで、ヨーロッパと「西洋の集団」が、武器と傭兵を使ってウクライナ紛争に介入し、ロシアを経済的に攻撃する(制裁を下す)ことによって、ロシアに宣戦布告したと公式に宣言します。
戦争とは戦場での軍事行動だけはなく、敵に直接ダメージを与えることを目的とした一連の攻撃的行動であるという長い演説が行われる。そして、西側の行動が事実上、世界大戦を引き金となったのだと。この戦争がミサイルや戦車による「ホットフェーズ」に突入していないのは、最高司令官であるプーチンがそうした命令を出していないだけである。それにもかかわらず、コナシェンコフは「第三次世界大戦は始まっている」と宣言します。

ステージ2 
(西側による)反応を評価する― 1~2日

ステージ3.
プーチンが演説をします。
今の世界は昔とは違う、戦争とはサイバー攻撃、生物学的攻撃の準備、直接攻撃、テロリストや破壊工作員の訓練、経済にダメージを与える制裁などがすべてだと説明する長い演説を行う。ロシアは戦争を望んでいない(と言われている)が、西側諸国はそれを押し付け(ロシアに対して)、実際にはすでにそれを解き放った。この場合、(ロシアの)行動は対称的である必要はない。–ロシアは軍事対決で利用できるあらゆる手段で、いかなる侵略行為に対しても対応できるのである。
「私はウクライナに警告したが、彼らは耳を傾けなかった」(プーチンのメッセージ)。ロシアはその言葉(脅し)が上っ面だけではないことを示した。プーチンは今、西側がすでにやったことを我慢する用意がある。ただし、24時間以内に制裁を解除し、ウクライナへの援助を停止し、NATOが延長しないことを保証することが条件だ。そうでなければ、ロシアは戦争を受け入れ、あらゆる手段で対応するしかないだろう。

ステージ4
熾烈な交渉プロセス – 最初の数時間はプーチンは明らかに(西側諸国との)コミュニケーションに応じず、他国の大統領はプーチンの側近と問題を議論することを余儀なくされる。 – 「あるいはまったく議論しない」。プーチンは、セルビア、ハンガリー、中国、アラブ諸国、アフリカ諸国、アジア諸国など、ロシアが睨みを利かせている国々の指導者たちと、デモンストレーション的な私的電話会談を始めるだろう。
西側は、ロシアの挑戦への準備態勢に関する状況を見極めながら、「直ちにロシアの正当な要求に応じ、世界を新たな戦争に巻き込まない」よう呼びかける政治的影響力のあるエージェントを動かすことになる。ここでは、「西側が戦争を始めたので、ロシアも応じないわけにはいかない」という情報メッセージを素早く作り出すことが課題となっているのである。


ステージ5.
今後24時間の状況判断により、様々なシナリオが考えられます。

1.西側が動揺し、局地的な譲歩をする用意がある。この場合、「話を聞いてもらい、ポジティブなシグナルが出たので、現段階では最終決定をしないことも可能な要素と考えている」という立場が声高に表明される。(西側に対する軍事作戦を開始するかどうか)
プーチンは交渉に数日間を与え、それが終われば「決断を下す」という。このような状況において、西側諸国には否定から受容へと移行する時間がある。実際、残るは最大限の譲歩を達成することであり、それは極めて重要であることが分かるだろう。最大限の目的は、グローバルな性格を持つ新しい国際協定に署名することである。(ロシアの全面的な宥和)

2. 西側は強硬であるが、公然と戦争を望んでいない。この場合、「軍事目標」について実証的に言及されることになる。ポーランド、バルト諸国、さらに、これらの国々で直接「限定的な標的」を示し、その標的に近づかないように民間人に呼びかけることもできる。その直後、主にウクライナへの支援の完全撤退と、西側勢力による「ウクライナの和平への強制」の可能性の拒否を目標にした、非常に集中的な交渉が始まる。戦略的航空が空へと引き上げられ、核トライアドが発動され、これらの国の上空に(ロシアによる)飛行禁止区域が宣言されるかもしれない。この成功の可能性は、非常に現実的であると見ている。そうでなければ、(ポーランドとバルト諸国に対する)局地的なミサイル攻撃のリスクは、ほとんど避けられないところまで高まってしまう。

3.西側が強硬で、それに対して戦争する用意があることを示す。この選択肢は、可能性が極めて低いと考えられる。この場合、西側の重要なインフラ施設へのサイバー攻撃は、ロシアが直接責任を負わず、核トライアドの戦力を積極的に「動かしている間」行われることになる。このような展開で、西側諸国による軍事的対応のリスクはごくわずかで無視できると評価される。そのため、ロシアは間接戦争を行い、経済が全面的に崩壊するリスクを伴う西側諸国にとって受け入れがたい状況を作り出す工作を行う余地がある。この後、交渉は避けられないと考えられ、上記②のシナリオになると思われる。そして-。

4.(西側からの)明確な一致したシグナルがない場合、可能性は低いが、許容範囲内の出来事と評価される。この場合、シナリオ②と同じような行動になる。

5. 最後通告後、(プーチンが)割り当てた時間内に西側諸国が根本的に崩壊する。
「集団的安全保障」の否定。すなわち、NATO(およびおそらくEU)から数カ国が脱退し、それぞれロシアに対して攻撃的な行動をとらず、起こりうる戦争に加担していないことを個別にアピールする。その後、すべては上記のシナリオ1に戻るが、最終的にロシアの立場は(交渉のための)ソ連と同程度の強さとなる。将来的には、ロシアはソ連の一部であった多くの国々を政治的に支配することができる。NATOという統合された組織は完全に消滅してしまうだろう。

6.西側諸国における根本的な分裂。しかし、いくつかの国(ポーランド、バルト)は明確に分離し、他の国の穏健な立場と根本的に対立することになる。
(訳注:Igorさんによると、ここでいう#WindofChangeは、NATOはロシアに宥和しようとするが、ポーランドとバルトはロシアに立ち向かうことを拒否するシナリオを意味するとのこと。)

この場合、西側諸国の「親露派」は、これらの国が紛争を煽っていると非難すると同時に、「自分たちの政府を他国の紛争に巻き込むな」と要求することができるほど活発化することになる。このシナリオにおけるロシアの狙いは、穏健な姿勢をとる西側諸国に最大限の圧力をかけ、「攻撃者の軽率な行動を抑止する」ことを要求することである。
このような状況では、穏健な立場の西側諸国は、過激な強硬姿勢をとる国(ポーランド/バルト諸国)への3〜7日後の局所的な攻撃と、その後のミサイル攻撃(軍事施設)を受け入れる用意があるはずだ。直接兵力を投入することは可能だが、その可能性は低いと考えられている。

上記のすべてのシナリオにおいて、可能性が極めて高いと評価される前提があります。


  • アラブ諸国、イラン、中国、一部のアフリカ諸国、および(おそらく)インドとブラジルは、「相互侵略」を一般的に非難して中立を保つだろう。
  • ヨーロッパの一部の国々は、軍事的な対決シナリオを支持しないことが保証されている。イタリア、ハンガリー、セルビア、そしておそらくフランスなど。
  • 西側諸国では、ロシアを支持し、「防衛側」として認める強力な運動が数多く起こるだろうし、ロシア支持を目的としない反戦運動も数多く起こるだろうが、挑発的な決定を下すことがほとんど不可能な環境を自国政府に作り出すことが保証されているのである。
  • 世界的な核戦争は始まらない。
  • ウクライナ問題は西側諸国の手で決定的に解決される。

    (FBSレポートはここまで)

【こちらはウラジミール・オセチキン氏のFBのコメント】

ボランティアの人権プロジェクトにとって、押し寄せるこの情報の洪水は耐え難い重荷です。私たちに可能な唯一の解決策は、出版して公表し、議論して討論すること、そして最も重要なことは、この戦争に反対すると考え、考えることができるすべての人々を団結させることです。明日、1年後の世界がどうなっているかは、私たち一人ひとりの力にかかっています。それは果たして…

  • 🕊戦争反対! ✊

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(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子 文・翻訳)

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