【米中貿易戦争:国務省】米国:米中の 「分離」 を覆すボールは中国側にある

この記事は、ボイス・オブ・アメリカが、ポンペオ国務長官の中国政策・計画担当の上級顧問であるマイルズ・ユー氏に今後の対中政策についてインタビューしたものです。

米国の長期的国家戦略は、国務省の管轄ですから、大統領選投票日当日にこういうインタビュー記事を出してきたのは、非常に意味のあることではないかと思います。(インタビューは、1日月曜日におこなわれた物です)

たとえ政権がかわろうとも、米国が、今後どういう風に対中政策をとるのか、その考えを話していますのでぜひご覧ください。

このインタビューを大統領選の材料として使わなかったVOAと国務省に敬意を表したいとおもいます。
(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)


《引用記事 ボイス・オブ・アメリカ 2020/11/03

国務省–米国は中国から「分離(デカップリング)」すると見られているが、この政策変更は米国の意思決定における恒久的かつ長期的な動きを意味するのでしょうか、それとも来年あるいは将来の米国政権において変更する可能性があるのでしょうか。

米大統領選の数時間前、米政府高官は、米中の「分離」が米国の政策の恒久的な要素になりつつあるかどうかについて、「ボールは中国側にある」と述べた。

マイルズ・ユー氏は、マイク・ポンペオ国務長官の中国政策・計画担当顧問で、米国の対中政策の再構築に貢献している。

月曜日にVOAとの独占インタビューで、ユー氏は、米中の “分離 “は決して “明言された政策 “ではないが、”分離 “していると述べた。ユー氏はVOAのナイキ・チン国務省特派員に対し、この「慎重な方法」に中国がどう対応するかが、今後数年間、米国の政策決定を左右するだろうと語った。

ユー氏はVOAに、「まもなく」中国共産党による新疆ウイグル自治区での弾圧を 「ジェノサイド」 と公式に認定するかどうかについて、米国は最終的な判断を下すだろうと語った。

米国の対中政策に最も影響力のあるポンペオ長官の顧問の一人と見られているユー氏は、中国共産党が香港での国際的なコミットメントに応じていないため、「米中の相互信頼が大きく損なわれている」と述べ、米国が「一国二制度」の総合的な妥当性を再評価する原因になっていると指摘した。

中国の台湾侵攻を阻止するために米国は何をするのかとの質問に対し、ユー氏はVOAに「両国間の紛争を解決するためのいかなる一方的な武器または武力の使用にも断固として反対する」と語った。

ユー氏は、「仮定の質問」とは思わないが、米国の対応は 「毅然としているもの」であることは確かだと述べた。

ポンペオ長官はユー氏を「私のチームの中心的な役割であり、アメリカ人を保護し、[中国共産党]からの挑戦に直面して自由を確保する方法について、敬意を持って助言してくれた。」と褒めたたえた。

 「私は中国の伝統をとても誇りに思っています。私は中国人が大好きで、中国人の友達もたくさんいることをとても誇りに思っています。私のルーツはそこにあります」、「私の言動に対して、中国内外の華人から多大な支援を受けています。」とユー氏はVOAに語った。

以下はVOAとマイルズ・ユー氏のインタビューからの抜粋である。簡潔でわかりやすいように編集した。


米中関係の分離について

VOA: 米国政府が中国に対して非常に厳しい立場を取っているため、米中関係はここ数十年で最悪と見られています。多くの人が、米国が中国との関係を分離(デカップリング)しようとしていると見ています。これは米国の政策における永続的かつ長期的な動きだと思いますか?それとも来年か将来の米政権で変わる可能性があるものだと思いますか?

ユー: はじめに、インタビューの機会を与えていただきありがとうございます。

分離(デカップリング)は公言したことはありませんが、分離は起きています。その原因は完全に中国にあります。なぜなら、中国は、トランプ政権が現実に対応しているため、健全な二国間関係を本来あるべき形で進めることが不可能になるような行動をとってきています。

緊張を誇張しているからではありません。私たちは、問題のある関係を単に管理するだけではなく、現実に直面する作戦変更したのです。ポンペオ長官が繰り返し述べているように、中国と米国がそれぞれ代表するこの2つの統治モデルの政治的、イデオロギー的な違いをもはや無視することはできないということです。

そして、そのために、単に関係を管理するだけではなく、対話の用語を互恵主義、目標志向のものに変えていくという新しいアプローチを採用してきました。ですから、そのために、また、皆さんもよくご存じだと思いますが、中国は非常に積極的かつ建設的な対応を拒否してきましたので、基本的にはそれが緊張状態になっている原因だと思います。

これが二国間関係の永続的な特徴になるかどうかというご質問には、そうでないことを望みます。重要なのは、我々が採用したこの慎重なアプローチに中国がどのように対応するかにかかっています。合理的な国ならこれが正しいアプローチだと認めるでしょう。私たちは他の国と同じように中国を扱います。中国も例外ではあありません。中国が100万人のウイグル人を強制収容所に閉じ込めた時、米国が何も言わないと期待することはできません。私たちの貿易不均衡が莫大なものであった時、中国は私たちが何もしないことを期待すべきではない。そして、中国も我々に何かを期待すべきです。今後、産業や防衛に関する機密情報を盗むスパイがいたら、我々は適切な行動をとるつもりです。

ですから、全ては中国に次第です。ボールは、中国側にあります。

VOA: 近い将来、中国に対する更なる行動が予想されますか?外国公館の指定、制裁、領事館の閉鎖などが増えるのでしょうか?

ユー: 民主主義の中で責任ある政府は誰でも知っていると思いますが、その第一の、そして最も重要な責任は、国益を守ることであり、国民と重要なインフラが安全であることを確認することです。そのため、自由で民主的な環境の中で自由に活動している米国内の多くの中国機関を在外公館に指定しました。

そして、それは今後も継続していきます。近い将来、私たちが何をしようとしているのか、正確な具体的なことはお話ししません。しかし、それがガイドラインです。ご存知の通り、中国政府の米国での活動は包括的です そして、私たちのような自由で民主的な社会で、同国の政府管理下の工作員や組織が、非常に、ものすごく蔓延しています。ですので私たちは適切な行動を取るつもりです。ご覧のように、国務省だけではなく、政府全体を対象にしています。司法省、FBI、国土安全保障省、すべてが同じ目標に向かって共同で行動しています。つまり、アメリカの民主主義を守り、アメリカ国民を守るためです。

中国からの工作

VOA: 次の質問は、この部屋にいる象についてです。中国は、あなたを裏切り者と呼んだり、個人攻撃を仕掛けたりするなど、あなたに厳しい言葉をかけています。スケープゴートになったのですか? このことについてコメントしていただけませんか?

ユー: ふだんは私にかかわるコメントについてはコメントしたくないのですが、これは中国が非常に伝統的な方法で採用してきた戦術だと思います。つまり、論争のストーリーを変えるためです。彼らは通常、米中関係の悪化における重大な出来事の根本的な原因を無視しています。ポンペオ長官が述べたように、実際のところ、これは両国の根本的、政治的、イデオロギー的な違いが原因なのです。その代わりに、彼らは一人か二人の特定の個人に責任をなすりつけようとします。

これがまさにこの政権の本質です。敵を、個人よりもはるかに大きな何か最終的な原因として指定することです。

第二に、この政権が米中関係に与えた大きな貢献の一つは、中国共産党と中国人民は同じものではないという認識を新たにしたことです。これは、中国政府が本当に、ちょっとしたパニック状態に陥っていることです。そのために、彼らは、貢献した私や他の数人の個人を非難しています。それはただ愚かなことです。

中国政府が私への攻撃を強めて以来、私は中国内外の中国系の人々から多大な支援を受けてきました。そのほとんどは中国の内部からさまざまな形でですが、ただただ、私たちがここアメリカで行っていることが正しいという大きな確信を与えてくれています。

中国政府は、自分たちが非常に孤立しているという考えを容認することはできません。国際環境や国際社会から孤立しているだけでなく、自国民からも孤立しています。だからこそ、米国務長官や私のような個人に対する攻撃は非常に激しく、ある意味では非常に必死なのです。これが私の答えです。

VOA: 確かに、中国人と中国共産党には違いがあります。しかし、中国バッシングが米国にいる中国人の海外移住者を遠ざけているという認識も中国系アメリカ人の間にはあります。例えば、WeChatの禁止は、中国にいる家族との主要なコミュニケーション手段を禁止していると批判されています。あなたの反応はどうですか?

ユー: WeChatは悪いソフトウェアではありません。WeChatは最高のソフトウェアというわけでもありません。WeChatがこれほど強力なツールであり、これほど強力なソフトウェアである理由は、中国共産党が他のすべての競合企業を禁止しているからです。ですから、WeChatと他の数社しかないのですね。彼らは中国共産主義政府に完全に支配されています。だから、このジレンマ、あるいはWeChatの制限によって引き起こされたこの不便さの本当の原因は、実は中国共産党そのものなのです。だからこそ私は、 「WeChat自体–テクノロジーは問題ないが、中国共産党による政治的支配は、米国の国家安全保障にとって絶対に危険だ」 と言っているのです。

だから、それはジレンマです。しかし、これに対する唯一の解決策は、ワシントンではなく北京にあるジレンマだと思います。

ウイグル問題

VOA:ウイグル人についてです。米国政府は中国のウイグル人弾圧を 「ジェノサイド」 と公式に認定するようになるのですか?そのような指定の背後にある考えは何ですか?

ユー:残虐行為やジェノサイトと指定するには、いくつかの基準を満たさなければなりません。その中の一つは明らかに法的基準です。私たちが集め、世界中が目撃してきたあらゆる証拠を見てみると、新疆で起きた中国の残虐行為を大虐殺とみなすことは検討に値すると思います。そのプロセスには独自のロジックとタイムラインがあります。具体的なコメントはしませんが、私たちの立場はすぐにわかるでしょう。

VOA: フォローしますね。あなたは、「まもなく」とおっしゃいましたが、それは、今後数ヶ月のうちに実現するという意味でしょうか。

ユー:  まあ、そのうちわかると思います。

VOA:香港についてです。中国と香港政府は、米国のいくつかの措置と制裁を経ても、国家安全保障法の施行方針を変えないようですが、米国の最終局面はどうなるのでしょうか。

ユー: そうですね、香港は悲劇であり、中国人や香港人だけでなく、世界にとっても悲劇です。なぜなら、世界はこの数十年間、中国に対して大きな希望を抱いてきたからです。実際、1984年以来、中国が厳かに香港の高度な自治を約束し、法の支配、報道の自由、独立した司法制度などの一連の国際的な原則を支持してきましたが、このすべてが突然姿を消えてしまったのです。

従って、香港は米中関係においても非常に重要であると言えます。それは、香港における中国の厳格な行動によって両国間の信頼が大きく損なわれただけでなく、米国が一国二制度の全体的な有効性を評価する新たなきっかけにもなっているからです。

また、中国は1980年以降、特に1997年以降も香港でビジネスを行っており、信頼できると世界を納得させる取組をしているのだから、中国自身の約束を真剣に受け止めなければなりません。今のところ、そのどれもが真実ではありません。そして、ほら、どんな二国間関係でも、相互信頼は最も基本的なものです。香港の醜態で米中の信頼関係は大きく損なわれました。

台湾問題

VOA: 台湾についてです。中国の飛行機が台湾領空への飛来が増加する中、台湾海峡の現状を一方的に変更することに米国は反対しているのでしょうか?中国の台湾侵攻を抑止するための戦略的な明確さについては議論がなされています。あなたのお考えはどうでしょうか?

ユー: アメリカの対台湾政策と対台湾海峡政策は、もともと明確にしています。アメリカは、台湾と台湾の紛争を解決するために、いかなる一方的な武力行使にも断固として反対するということです。

いかなる解決も双方の国民の合意がなければならず、いかなる一方的な武力行使も米国の断固たる行動によって対応されることになります。

その対応の具体的な形については、仮定の質問なので、現時点では推測できませんが、米国は、毅然とした対応をすることは確実です。

南アジアの国との連携

VOA:先週、ポンペオ長官が南アジアを訪問された時、あなたは、米国代表団の中にいらっしゃいましたね。あなたは中国政策に関する彼の上級顧問であるので、この旅行には中国の案件が含まれています。どういった点が印象に残っていますか?

ユー: 政権発足当初からグローバル戦略の優先順位を調整してきました。私たちは、中国を今の時代の最重要課題と考えていますが、それにはいくつかの側面があります。

第一に、中国の課題は深刻であり、それは国家安全保障の最重要課題です。第二に、中国の課題はグローバルな性質を持っており、もはや地域的なものではなく、特定の地域に限定されるものでもなく、ハイテク分野、サイバー、宇宙、その他多くの分野にも及んでいます。ですから、私たちの中国政策は常に、グローバルな性質、つまり地平線を超えた性質のこうした側面を反映してきました。私たちの南アジアと東南アジア諸国への訪問には、明らかに中国の非常に強力な案件が多く含まれています。

それは私たちだけではないからです。私たちが訪問したインド、スリランカ、モルジブ、インドネシア、ベトナムの5カ国は、いずれも同じ感情を共有し、中国についての同じ理解をすべて共有しました。中国は、実存的な現実の中で大きく浮かび上がっています。

しかし、私たちは彼らが何をすべきかを指示しているのではありません。私たちはただ、わが国が支援する準備ができていることを伝えるために、注意点を比較しているだけです。私たちもまた、世の中のためにいます。それで、それがこの旅行の目的です。

そして、ポンペオ長官が何度も述べているように、中国政府が今回の訪問の目的と結果をどのように捻じ曲げようと試みても、それは非常に大成功だと思います。今回の訪問は、米国と訪問国との相互理解を促進する上で非常に有益なものでした。

VOA:  他に何か付け加えたいことはありますか?

ユー: 今のところありません。あなたのインタビューに感謝します。

VOA:  VOAにお話ししてくださいましてありがとうございました。

ユー: どういたしまして。

※無断転載厳禁

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