【香港】HSBC香港支店の閉鎖と破壊

<引用記事  ヴォイス・オブ・アメリカ 2019/01/02>

HSBCは香港の政治的混乱に巻き込まれており、デモ隊が一部の支店を攻撃したり、市の中心部を守る有名なライオンに落書きをしたりしている。

香港は同行にとって最も重要な市場で、2019年上半期の税引き前利益125億ドルの半分強を占めているが、香港経済の景気後退を示す抗議行動により、HSBCと同業他社は打撃を受けるとみられている。

HSBCはこれまで、香港を6カ月以上にわたって揺さぶってきた暴力的な反政府デモに直接関与することはほとんどなかった。同様に香港でHSBCに次ぐ第二の銀行である中国銀行(香港)など、中国政府と関係があるとみられている他の企業の店舗が破壊されている。

しかし最近では、HSBCは、抗議運動を支援する資金集めの活動家に対する当局の行動に加担していると非難している一部の抗議者の怒りを買っている。

デモ参加者たちは、11月に銀行が閉鎖された星火同盟 (Spark Alliance) という団体が保有していた口座、つまりデモ参加者の訴訟費用の支払いを支援する口座を閉鎖したことと、12月に4人の星火同盟のメンバーがマネーロンダリング容疑で逮捕されたことを結びつけている。HSBCは当局との関わりを強く否定した。

ある抗議者は、被害を受けたライオンの写真を撮るグループの中で、アカウントを閉鎖する決定について、「市民は、HSBCが抗議者たちにお金を渡すのを止めたと感じ、腹を立てている。」と述べた。
HSBCは星火同盟メンバー逮捕後の声明で、口座閉鎖の決定は「国際的な規制基準に準拠しています」と述べたHSBCの2つの支店と7つの屋内ATMクラスターは、木曜日に閉鎖された。

元日の反政府デモ行進では、窓を粉々にしたり、壁に「星火同盟支持する」と書かれたスプレーをかけたりした人もいた。他の人々は、クリスマスイブの抗議中に被害を受けた。

入口の2頭のライオンは落書きをされ、引火性の液体をかけられた後、短時間火がつけられた。HSBCは、ライオンの初期清掃を開始した、と発表した。

同行は声明で、「専門家に依頼して専門家による修復が必要なことをアドバイスしてもらっていますが、これには時間がかかります」と述べた。


微妙な線引き

HSBCのリテール・バンキング・資産管理部門が昨年6月までの半年間に生み出した44億ドルの90%以上は香港からのものだった。

HSBCは、香港に隣接する中国南部の珠江デルタ地域にも数十億ドルを投入し、世界第2位の経済圏でサービスを拡大している。一部のアナリストは、HSBCの幹部らが2月18日の決算発表の際に、香港での戦略を説明する必要があるとみている。

グッドボディ・ストックブローカーズのアナリスト、ジョン・クローニン氏は、香港の政情不安が続くなか、他のアジア諸国、特に新興国市場での成長促進が聞かれると予想している。同氏は、ロイター通信に対し、「香港の政治的混乱はさておき、HSBCが香港に収益を依存していることは、経営陣が取り組もうとしていることでしょう。」と語った。

中国政府は、珠江三角州と香港、マカオを統合し、大湾岸構想の下に経済強国を建設する計画だ。HSBCの抗議行動へからみは、共産党支配の裁判がある中国本土への強制送還を可能にする法案(現在は撤回されている)を受け、6月に抗議行動が始まって以来、企業が歩かなければならなかった綱渡りを浮き彫りにしている。

デモは広範な民主化運動へと発展した。英国に拠点を置く資産運用会社でHSBC株主のコーポレート・ガバナンス担当責任者は、 「明らかに、顧客と中国当局との間には微妙な線引きがある」 と述べた。香港の他の企業は、デモに対してあまりにも協力的だと思われていることで損害を受けている。

キャセイ・パシフィック航空は、中国政府から抗議行動に関与した職員の停職を強制され、ルパート・ホッグ最高経営責任者と首席副社長は混乱の最中の8月に辞任した。

HSBCは以前、北京の支持者から標的にされていた。中国のWeiboソーシャルメディアプラットフォームのユーザーは昨年、HSBCの従業員が抗議行動を支持するFacebook投稿のスクリーンショットをシェアした。HSBCの経営陣に抗議するよう読者に呼びかけた。

「企業は今、3つの異なるグループが自分たちの決定にどう反応するかを考えなければならない。中国政府、香港の抗議者、中国の消費者」と、コントロール・リスクの大中華圏プラクティス担当責任者のケント・ケドル氏は述べた。

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

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