日米関係:その結びつきの強さは?

グラント・ニューシャム氏による、日米関係の分断の可能性についてのオピニオンを紹介いたします。グラント・ニューシャム氏は、米国外交官、ビジネスエグゼクティブ、米国海兵隊員として日本で20年間の経験を持つ東京の日本戦略研究フォーラムの上級研究員です
post 2017/10/07 14:57

 OCTOBER 6, 2017 

日米関係は(ほとんどの国家間のつながりと同様に)圧力がないときは極めて強固であるが、北朝鮮が核兵器を強く追及することで大きな圧力が加わっている。

この結果として、日本は米国の核兵器に頼らずに独自の核兵器を開発すべきであるかという議論が出ている。

東京(日本政府)には長い間、(あまり大きな声で語られることはなかったが)米国が日本の防衛に対してどれほど責任を持っているのかについて疑念があったことも忘れてはならない。

そして日本では、日本政府が独自の核能力を持てば日米の防衛関係の「分断」が起こり得るのではないかという疑問が持ち上がっている。だが、日本がその関係はまったく必要でないと判断する可能性もある。

65年に及ぶ同盟はまだ十分に安定しているが、壊れることのないものではない。とりわけ日本に対する脅威が、おもに10年前までのように、もはや机上のものではなくなっている以上は。

だが、第一歩として日本が独自の核を作り、日米同盟を解消するには何が必要となるだろうか?

それには相当重大な事態が起こる必要があるだろう。それは米国が日本の期待することを行わないということであり、日本が期待することは米国が日本を守ることだ。

日米同盟は「かつてないほど強力」だと両国の当局者は頻繁に説明している。しかし、日本人はしばらく懸念を持っていた。

北朝鮮が1998年に初めて日本を飛び越える弾道ミサイルのテポドンを発射したとき、米国は日本が対応しないように強く要求し、ある日本の高官はこうコメントした。「(北朝鮮と日本の)どちらが同盟国なのか?」
2010年頃、中国との間で尖閣諸島の領土問題が過熱し、中国が尖閣に対して行動を起こした場合米国は介入しないのではないかという深刻な懸念が日本側にはあった。

尖閣に関して最初に米国が取ったうろたえた対応は、その懸念が根拠の無いものではないことを示唆していた。

オバマ大統領は2014年に訪日した際に尖閣問題に関して具体的に確約し、米国当局者はこれまでこれを繰り返し認めてきたが、それでも疑念は残っている。殊に中国は日本の尖閣諸島近海で、漁民、湾岸警備隊、そして軍の存在感を着実に増しているのだから。

その間、北朝鮮は核実験と日本の上空を飛び越えて日本の海域に落下するミサイル発射実験を行い、日本政府はこれを非常に憂慮している。

核兵器開発をつぶやく声といっしょに、北朝鮮のミサイル発射施設を無力化する「攻撃」能力を日本が作り上げるという議論すらある。大きな苦労をせずに日本ができることだ。

一人の元政府関係者はその影響について個人的にコメントしてくれた。15年前、核兵器について検討することを考えることも秘密だった。約7年前、核兵器について話すことは秘密だった。今は人に知られても構わない。

元防衛大臣の石破茂氏は、いつか総理大臣になることを望んでいる。石破氏は最近、日本が核能力を検討することを示唆して注目を集めた。

しかし、石破氏の防衛についての発言の多くと同様に厄介な要素がある。つまり、日本が指を鳴らすだけで米国が核攻撃を行うことを保証しないのであれば、日本は独自の兵器を作らなければならなくなり、するとどうするのか何とも言えないと示唆するものだ。

石破氏は、多くの日本の政治家や官僚と同様に、米国はあれこれ指図されるよりもお世辞を言われる方が、対応が良くなるということを理解していない。

とにかく、米国政府は日本の期待していることを明確に認識する必要がある。北朝鮮が東京にミサイル攻撃を行えば、米国は必ず激しい対応を行う。中国の侵略部隊が九州に上陸したら?同じことだ。

しかし、北朝鮮のミサイルが50マイルの沖合に落下した場合や、日本の田舎の住民のいない場所に落ちた場合はどうだろうか?あるいは、中国の漁民が尖閣に上陸して退去を拒否し、中国海軍がすぐ近くで日本に干渉するなと警告していたら?

このようなぎりぎりの問題でも、日本は米国に武力の行使を含めて徹底的な支援を期待している。

いつ、どこで、どのようにそのような事態が起こるか正確に予測することは不可能だが、米国はこれについてとことん考え抜き、日本と話し合い、武力を行使する心理的な準備をする必要がある。

もちろん米国には、北朝鮮との戦争を何があっても避けるため、また、東シナ海にある「岩」をめぐって北京(中国政府)との経済関係が崩れるのを避けるために、(道義に基づいた政治的手腕を装った)消極的対応を求める有権者もいるだろう。

理屈は分かるが、米国が躊躇して日本を完全に支援しなければ、同盟が解消されることを覚悟するということだ。これはまた、世界中のパートナー国、これからパートナーとなる可能性のある国、そして敵対する国の間に、米国の持つあらゆる同盟関係に対する疑問を提起することになるだろう。

もちろん、日本は防衛費をもっと増やすことで米国の完全な支援の見込みを増やし、米国と日本のすべての軍隊の間で協力関係を向上することができる。

日米同盟が壊れるかもしれないと示唆すると、両サイドの研究者、官僚、軍幹部から「咳払い」が聞こえてくるのが常だ。

しかし、日米同盟は米国が日本を守るという考えに基づいている。

敵がついに姿を現した以上、その責任から手を引こうとするなら(両国の)関係を結び付けているものは崩れやすいものだったということになるだろう。

(翻訳者 H・T)

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