【米国:必読オピニオン】中国が海外で最も輝かしい活躍を見せる理由

米国のリアル・クリア・インベスティゲーションのオピニオンを紹介します。中国の若者の意識は数年前とは変化しており、現在の中国に誇りを持っているという分析です。これが、海外の国にどのような影響を与えるか?
非常に興味深い内容ですので、ぜひご一読ください。

引用記事 リアル・クリア・インベスティゲーション 2019/10/14


先月、コロンビア大学で行われた香港の民主化運動指導者二人の討論会が終わろうとしていたところ、突如として中国大陸の学生が席を立ち、「祖国の歌」と中国国歌「義勇軍進行曲」を熱唱した。

大声で歌ったことは重要ではないが、メッセージだった。中国のプロパガンダ機関である英語メディアの大手グローバル・タイムズのような中国政府寄りのウェブサイトは、数時間以内にこの出来事のビデオを掲載し、学生たちの「愛国心あふれる」姿勢を称賛した。

これは、明白な皮肉である。中国人学生は、ここに住み、欧米で学び、学術会議で騒いだり、暗に香港の民主化への憧れを非難したりできる自由を満喫している。彼らの歌は、コロンビア大学で演説した二人、ブライアン・レオンとジョシュア・ウォンを含む抗議者たちを分離主義者として「テロリスト」と烙印を押した中国当局の公式見解に同調していた。

コロンビア大学でのこの出来事は、それ自体は小さなものではあるが、多くの中国人が国内外で、中国政府が他国で「反中」の意見だと見なすものに対する怒りを表明するにあたり、一般的に用意されていると考えられる一幕であった。今月、ある同校チーム幹部の香港寄りのつぶやきをめぐり、NBAに対する非難の声が高まったことで、このことが劇的に示された。しかし、海外の中国人による愛国主義的なデモは、中国の広範な世代交代を反映している。

ほんの30年前の北京では、何十万人もの若い世代の学生が、共産主義者が政権を握って以来最大の民主化デモを主導した。2カ月間天安門広場を占拠してハンガーストライキを行い、 「自由の女神」 と呼ばれる像を掲げた後、軍隊が発砲して数百人の命が奪われた。

これとは対照的に、天安門事件後の世代に属する多くの中国の若者たちは、米国や他の民主主義国に留学している人たちを含めて、香港の若者たちに対する敵意だけでなく、完全に非民主的な政府を全面的に支持しているという点で、反対の意見を持っている。

欧米の価値観に触れることで変容するのではなく、愛国的熱情に包まれた多くの中国人学生は、自分たちの国の権威主義を受け入れているようだ。その結果、中国をよりリベラルにするかもしれない新世代の指導者を教育する代わりに、米国の学校は、米国の価値よりも米国のノウハウを獲得することに関心を持つ反対勢力の幹部を教育しているのかもしれない。これは、復活しつつある中国が自らの文化的規範を積極的に喧伝し、GoogleからNBAまで外国企業にルールを守るよう要求するという、より大きな背景の中で起きている。

なぜこんなことが起きたのか?

その答えの一部は、中国の独裁主義体制の仕組みに関係している。ダライ・ラマや民主化活動家を米国のキャンパスで講演させるなどにかかわらず、中国政府が学生と連携し、指導者が国家の尊厳を侮辱するとみなす活動に抗議するよう学生に促していることを示す証拠が増えている。海外に住むかなりの数の中国人が香港の動きに共感しているようだが、帰国するとソーシャルメディアで嘲笑されたり、報復されたりするのではないかと恐れて、あえて自分の意見を述べない。

「中国では党の方針に従うことが常に安全な方法です。」と、中央コネチカット州立大学で家族療法を専攻する大学院生のプリセラ・シ氏はリアル・クリア・インビスティゲーションに語った。「周りにはいつもこう言う人がいます。『あなたは中国人です。どうして中国に対して悪口を言うのですか?』」。

それでも、コロンビア大学の国歌を歌った学生など、民主主義国の大学に通う中国人学生の多くは、香港の民主化運動に本気で憤慨しているようだ。中国式の独裁からの自由への自然な憧れを反映しているという、開催国に共通する抗議行動の見方を否定することで、これらの中国の学生たちは、中国がますます自信を深めていることを示している。

もはや貧しく、政治的に弱い国ではなく、世界的に恐れられ、尊敬される大国となり、外国で米国教育を受けた学生を含む国民を強制するだけでなく、愛国的な自尊心を呼び起こすようになった。

「10年前と比べても、中国人学生の雰囲気は変わっていると思います。」と語るのは、ニューヨークにあるコロンビア大学ジャーナリズム学部を最近卒業したばかりのエコー・ワン氏。

「私がよく耳にしたのは、オリンピック[2008年北京開催]が国にとって大きな変化をもたらしたということです。その年の金融危機もそうでした中国は驚くほど経済的に成功しましたが西側諸国はうまくいきませんでした。」

「中国では正しい方向に進んでいると確信しています」とワン氏は付け加えた。「我々が持っているシステムは西側のものより良いという雰囲気があります。」

八月カナダ・トロントでは、香港派のデモ隊の行進が反対派の「一つの中国!」の叫び声で阻止された後、クリスティア・フリーランド外相が「受け入れがたい暴力事件の増加」と警告した。

同様に、親中国のデモ隊は、ロンドンやパリ、ニューヨーク、バンクーバーで、香港支持のデモ隊に向かって、国旗を振り、「Love China/Love Hong Kong (中国/香港を愛する)」「“No riots/No secession(暴動なし/分離なし)」などの掛け声を叫んだ。

オーストラリアでは8月、同国の外務大臣マリセ・ペインが中国外交官に対し、「破壊的であるか暴力的な行動を奨励するさま」によって言論の自由を侵害しないよう警告した。ブリスベンの中国総領事館は、クイーンズランド大学で起きた親香港デモを襲撃した中国人学生の「自然発生的な愛国心」を称賛した。

今回のオーストラリアの事件は、中国当局が学生たちに敵とみなす人々に対して行動を起こすよう奨励した、まれに見る明白な行動だった。しかし、このような学生たちは、どんな兆候から見ても、何の激励もなく行動を起こす準備ができている。
例えば、コロンビア大学の国家斉唱の事件の後、親中国のウェブサイトはウォン氏とレオン氏に対する皮肉、怒り、そして辛辣な書き込みで賑わった。Global Timesのウェブサイトには、「なぜコロンビア大学はジョシュア・ウォンを入れたのか?」と書かれている。「彼は鞭で打たれたようなハエだ」と別の人が書いている。愛国歌を歌った生徒たちについては、「よくやった愛国的な心」というコメントも出た。3つの投稿に合わせて22,000人以上「いいね」がついている。

華僑を対象にしたカレッジ・デイリー(中国語の題名は『North American Foreign Student Daily(北美外国留学生日报)』と訳される)は同日、コロンビアの集会に参加した中国人学生たちが、斉唱する部分を撮影した動画を掲載し、10万人あまり「いいね」を確保した。

同サイトの論説は、「今日では、ぼんやりとした事実に直面した中国人学生たちに、立ち上がって別の声を見せるために『ありがとう』と言うべきです。」としている。「これらの学生は香港の暴徒ではなく、中国の未来であるべきだ。」

もちろん、誰が、何がそのようなものを生み出したのかを述べることは不可能だが、彼らは確かに反民主的な感情を助長する。

日常の公式な圧力は、中国人だけにかかっているのではない。ここ数年、マリオット・ホテルからメルセデス・ベンツに至るまで、ある声明やジェスチャーに対して「愛国心」の怒りをあらわにし、多くの外国人や外国企業に謝罪させた。

つい最近も、ヒューストン・ロケッツのゼネラル・マネージャー、ダリル・モレイが、香港の民主化運動を支持するソーシャルメディアにコメントを投稿したとき、このことは起きた。この中国国内での激しい反応はモレイに謝罪をさせ、問題のツイートを撤回させた。NBA自体は彼を処罰するよう求める中国の要求を拒絶し、メンバーの言論の自由の権利を再確認したが、この事件は中国の要求に従うよう圧力がいかに強いかを反映していた。米国の主要企業がこのような圧力に揺さぶられた場合、中国の個人学生がそれに立ち向かう可能性はどの程度だろうか。

さらに、政府支持の姿勢は香港の問題に限定されない。「ジャッカル(お先棒)」「スプリットティスト(中国からの分離支持者)」と非難されるチベットの宗教的指導者ダライ・ラマを学校が招待したことに対し、過去に米国やその他の国の中国人学生が激しく抗議した

同様に、今年初め、カナダのオンタリオ州にあるマクマスター大学の中国学生学者協会(CSSA)はウイグル人活動家のルキエ・トゥルドゥシュをキャンパスで、おそらく 「再教育」 のために100万人ほどのイスラム教徒が中国で拘禁されたと広く報じられていることについて話し、怒号を浴びせようとした。マクマスター大学の学生組合は、CSSAがカナダにいる中国外交官たちとトゥルドゥシュへの反対キャンペーンを組織し、他の学生が事件のビデオを中国領事館に提供したと告発し、CSSAのキャンパスクラブとしての地位をはく奪した。

中国の学生団体が政府とどの程度の頻度で、あるいはどの程度密接に活動を調整しているのかは不明である。しかし、明らかになったいくつかの事例は、これらの組織が中国政府の管理下にあり、「非愛国的な」意見を表明する学生を報告するチャンネルになっているのではないかというキャンパスの懸念を引き起こした。

マクマスター大学では、CSSAの資格をはく奪するという学生組合の決定は、「学内の学生に向けたぞっとするようなメッセージ:党の方針に従わないと、報告され、その結果に苦しむことになる。」と非難する匿名の手紙を中国人学生から受け取ったことが一因だった。

欧米人にとって、欧米の教育の恩恵を受け、欧米の民主的な方法にさらされてきた中国の学生たちが、たとえその行為が露骨な人権侵害であると非難されても、100万人のウイグル人の拘禁のように自国の政府を支持することは衝撃的である。
この見解ではある事態に関して、2つの要素が過小評価されている。一つは中国人の間で最も重要な問題はチベット、ウイグル人、香港は対するに対する感情であり、国家統一に関する問題である。これら3つの(地域の)問題すべてにおいて、欧米の人権団体は基本的権利のあからさまな侵害を見ているが、多くの中国人は祖国とはわけるよう求めており、これが天安門の世代と異なる重要な理由である。

「類推を疑っています」と語るのは、コロンビア大学で政治学を教えるアンドリュー・ネイサン教授。「天安門事件は、腐敗の認識と、政府が道を失ったという信念についてのものでした。香港は、中国のアイデンティティから遠ざかっており、地域アイデンティティに関するものです。」

この意味で、何世代にもわたって中国の学生が、いわゆる「愛国心教育」を体験してきたことは、忘れてはならない事実である。これは、外国勢力の手にあるいわゆる「屈辱の百年」に大きなストレスを与えるものである。アヘン戦争で中国が英国軍に敗北し、香港が英国の植民地になったことから始まった屈辱だ。

だからこそ、1997年の香港返還は、一国二制度の原則の下で、国家としての誇りの問題であり、屈辱の残滓が残っていないという感覚だった。香港のデモ隊が英国旗を掲げて外国に助けを求めた時、多くの中国人の反応は怒りと憤りだった。

カレッジ・デイリー紙は、香港での民主化を求めるデモの様子について、「彼らは英国旗、アメリカ国旗、香港植民地旗を振っています」と報じた。「彼らが表示しない唯一の旗は中国国旗である。」としている。

学生や教員の中には、多くの中国人が欧米のメディアで中国が描かれているやり方に、ほとんど明白な不快感をもっていると言う者もおり、彼らの反応は反射的に祖国の防衛に飛びつくものである。

コロンビア大学でジャーナリズムを専攻した学生だったエコー・ウォン氏は、「欧米メディアに対する中国人の態度は変わった。」と語る。「以前は、欧米のメディアは本物のジャーナリズムのように見え、信頼できるニュースを提供していました。 現在は、欧米のメディアは、中国には好ましくないと思われる事実しか伝えていないような気がします。」

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

※ 無断転載厳禁


この記事が気に入ったらシェアをお願いします。