【米:ホワイトハウス発表】世界貿易機関における発展途上国の地位の改革に関する覚書(全文翻訳)

【7月27日 AFP】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は26日、中国をはじめとする比較的裕福な国々が世界貿易機関(WTO)で「発展途上国」として優遇措置を受けていることを不服とし、WTOが制度を見直さなければ米国はこうした国々の「発展途上国」扱いをやめると警告しました。

ホワイトハウスよりこのことについて覚書が発表されました。
米国の方針が書かれています。ぜひご覧ください。

<引用  Whitehouse realase 2019/07/26>

世界貿易機関における発展途上国の地位の改革に関する覚書

米国通商代表部の覚書

主題:
世界貿易機関における発展途上国の地位の改革


合衆国憲法及び合衆国法により大統領としての権限を与えられた私は、ここに次のとおり命令する。

第一章 方針

世界貿易機関(WTO協定)は、透明性、開放性、予見可能性を前提とした国際貿易ルールを確立し、経済成長と生活水準の向上を図ることを目的として設立された。

1995年にWTOが発足して以来、世界的な経済潮流が高まっているにもかかわらず、WTOは先進国と発展途上国の間の時代遅れの二分法に常に基づいており、一部の加盟国は国際貿易の分野で不当に優遇されている。

WTO加盟国の2/3近くは、自らを発展途上国と指定することによって、優遇され、WTOの枠組みの下でより弱い義務を引き受けることができた。
いくつかの発展途上国の指定は適切であるが、多くは現在の経済状況に照らして明らかに支持できない。
例えば、購買力平価換算による一人当たり国内総生産でみた世界で最も裕福な10カ国のうち7カ国 (ブルネイ、香港、クウェート、マカオ、カタール、シンガポール、アラブ首長国連邦) が、現在発展途上国の地位を主張している。G20と経済協力開発機構(OECD)のメンバーであるメキシコ、韓国、トルコも同様の地位を主張している。


富裕国が発展途上国の地位を主張すると、他の発展途上国だけでなく、特別かつ差別的な扱いを真に必要とする国にも悪影響を及ぼす。将来のルールを無視する可能性も含め、WTOルールの遵守を軽視し続けることはできない。

中国は、数年にわたる爆発的な成長後、米国に次ぐ世界第2位の国内総生産を誇っている。中国は世界全体の輸出の13%近くを占め、1995年から2017年の間に世界シェアが5倍に拡大し、2009年以来、世界最大の輸出国となっている。また、中国の輸出の優位性は、低賃金の製造業に限られない。中国のハイテク製品の輸出額は、1995年から2016年の間に3,800%増加し、世界第一位となっている

他の経済指標も同様の状況を示している。中国の対外直接投資(外国直接投資)は1兆5000億ドル近くで、OECD加盟36カ国のうち32カ国を上回っている。一方、対内直接投資は2兆9000億ドル近くで、他のOECD加盟国を上回っている。世界500大企業のうち120社が進出している中国の国防費と宇宙衛星の総数は米国に次いで二番目だ。

これらの事実や経済の活況を示すその他の証拠にもかかわらず、中国をはじめとする多くの国々は、引き続き途上国の体裁を整えており、途上国がその地位に伴う恩恵を享受し、他のWTO加盟国よりも弱い約束を求めることを可能にしている。これらの国々は、セーフガードの適用期間の延長、寛大な移行期間、より緩やかな関税引き下げ、WTO紛争の手続上の優遇、特定の輸出補助金を利用する能力の権利を主張しているが、これらはすべて他のWTO加盟国の犠牲となっている。これらの国はまた、継続中の交渉において、他のWTO加盟国よりも低い義務を一貫して求めており、これが進展を著しく妨げている。さらに、世界の多くの先進国は、発展途上国の地位を口実に、WTOのルールに基づく最も基本的な届出義務を遵守していないため、米国の貿易関係者から重要な貿易データを奪っている。現状を維持することはできない。

WTOは改革を切実に必要としており、それなしでは労働者や企業のニーズ、あるいは近代的な世界経済がもたらす課題に対処することはできない。米国はまた、他の国際機関が加盟国の経済発展を認識し、その権限の範囲内で重要な課題に取り組むことができるようにするため、これらの機関の重要な改革を強く求めている。国際経済制度の改革の必要性は、米国のみならず、世界市場に参加するすべての国にとっての課題である。

WTOに関しては、世界の最も先進的な経済国がWTO加盟に関連する完全なコミットメントを引き受ける用意ができるまでは、この課題の解決に進展の見込みはない。

これらの国々が義務を守るよう支援するために、経済力が証明されているにもかかわらず、先進国は不当な利益を享受できなくなるように、発展途上国に対するWTOのアプーチを変更するために必要なあらゆるリソースを投入することにより、貿易をより自由、公正かつ互恵的なものとすることが米国の政策である。

第二章 方針

発展途上国の状況に応じた柔軟性へのWTOアプローチの変更。

 (a) 本覚書の第1章に規定する方針を推進するため、米国通商代表部(USTR)は、適切かつ適用可能な法律に一致している場合、適切な経済指標やその他の指標によって正当化されないWTOのルールや交渉において、自己宣言型開発途上国がWTOの柔軟性を利用することを妨げ、WTOでの変更を保障するため利用可能なあらゆる手段を用いる。USTRは、適当かつ法と整合的な場合には、他の関心を有するWTO加盟国と協力してこの措置を追求する。

(b) USTRは、本覚書の日付から60日以内に、 (a) に基づいて大統領の進捗状況を更新するものとする。

第三方針

不公正な取引利益の終了。

(a) 本覚書の日付から90日以内に、USTRが、本覚書のセクション2に記述された変更の達成に向けて実質的な進展がなされていないと判断した場合、USTRは、適宜、法律に合致する範囲で、以下の措置をとるものとする。

(i) USTRの判断において、自らを開発途上国であると不適切に宣言し、WTOのルールと交渉における柔軟性の利益を不適切に求めているWTO加盟国を、WTOの目的のために開発途上国として扱わない;および

(ii)  該当する場合は、当該国のOECD加盟を支持しない。

(b) USTRは、 (a) に基づく措置をとる前に、次の事項を行う。

(i) 1962年貿易拡大法第242条に基づいて設置された貿易政策委員会(19U.S.C.第1872条)と協議する。;

(ii)国家安全保障会議および国家経済会議と協議し、2017年4月4日の国家安全保障大統領覚書-4(国家安全保障会議、国土安全保障会議及び小委員会の組織)またはその後継文書に記述されているプロセスを通じた省庁間調整の適否について協議する; および

(iii) WTO加盟国の世界貿易への関与、主要な経済的意思決定グループへの加盟、相対的経済およびその他の指標への位置づけ、USTRが適切と考えるその他の要因を検討する。


(c) USTRは、WTOのルール及び交渉において、開発途上国の柔軟性の利益を不当に求めていると考えられるすべての自己宣言型開発途上国のリストをUSTRのウェブサイト上に公表する。

第四章 方針
公布  USTRは、この覚書を連邦官報に掲載する権限を与えられている。

ドナルド・J・トランプ

※ 無断転載厳禁

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