【日本―フィンランド:新ブランド発表】岩手の職人とフィンランドのデザイナーの奇跡の出会いがものづくりに新しい息吹を与えた!

Post by Mariko Kabashima 2019/05/28 0:21 update 05/29 13:21


24日金曜日、東京・表参道のArtekで、岩手の職人たちとフィンランドの有名デザイナーとのコラボによってできた新ブランド『iwatemo (イワテモ)』の発表会がありましたので、早速取材に行きました。

2019年の今年は、フィンランドと日本が外交関係を樹立して100年目の年です。

そして、ちょうど一カ月前、4月25日に、世界的に有名なフィンランドのブランドArtek(アルテック)が、世界発となるなるフラッグショップをここ東京表参道にオープンしました。

アルテックは1935年、アルヴァ・アアルト、アイノ・アアルト、マイレ・グリクセン、ニルス=グスタフ・ハールの4人の若者により「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的に、ヘルシンキで設立されたブランドです。

そして、24日から26日まで、この表参道のアルテックにて展示会が開かれました。
今回のこの展示会は「日本-フィンランド外交関係樹立100周年記念プログラム」としてフィンランド大使館の後援をいただいているそうです。
その展示会の様子をお伝えします。


株式会社モノラボンCEOの工藤昌代氏の次の言葉ではじまりました。

岩手のものづくりを担っているのは小さな工房が多いのですが、 海外に出て行こうとすると、クリアしていかなければならない事が沢山あります。それで、ものづくりをする人達と力を合わせ、フィンランドのデザイナーさんの力を借りながら、海外に展開するブランドを立ち上げようということで集まりました。

このブランドの立ち上げに集まったメンバーは、ものづくりの職人たちはもちろんのこと、デザイナー、IT関連、企画、通訳など様々な分野の方々が出資して会社を立ち上げました。


左から 株式会社モノラボンCEO工藤昌代氏、通訳の小原ナオ子氏、フィンランドからデザイナーの
ハッリ・コスキネン氏とヴィッレ・コッコネン氏

フィンランドの世界的デザイナーと岩手の職人たちの出会い

2011年頃から、フィンランドとのやりとりが始まり、ヘルシンキデザインウイークでの出会いがきっかけでした。
ヘルシンキと東京というビジネスアクセスは比較的あるものの、ものづくりを多くしているのは地方だとして、「もっと、地方に目を向けて欲しい」ということで始まりました。

岩手とフィンランド、どちらも北国で共通点が多い地域です。
「厳しい冬季の仕事としてものづくりが発展したことや、人の奥ゆかしさなどフィンランドと岩手に相通じるところがあるのかもしれません」

岩手県工業技術センターのご協力もあり、フィンランドの有名デザイナー、 ハッリ・コスキネン氏とヴィッレ・コッコネン氏 と一緒に3年もの試行錯誤を繰り返し、やっと商品が完成したそうです。

鉄器のケトル(三協金属・一関市)・磁器のテーブルウェア(陶來・滝沢市)


ヴィッレ・コッコネン氏 は、「3年間をかけて1社だけではなく3社だったからこそできました」と述べました。
また、何度も岩手の工房を訪ね、日本の歴史や昔ながらの生活を研究し、日本ならではのテイストを大切にしてデザインをしたと語っています。

2人のデザイナーは、フィンランドで大量生産用の デザインを手掛けるそうですが、iwatemoの商品づくりでは、「大量生産ではなく、現代の技術を使い、一つ一つ心をこめて手作りをする生産者の方と精査しながら、製品をつくりあげた機会があったことを嬉しく思う」と ヴィッレ氏は述べました。


鉄器のケトル (三協金属・一関市)


有限会社三協金属・
代表取締役・小岩恵子氏

江戸時代から続く伝統的な南部鉄器のプロセスとフィンランドデザイナーによるモダンなデザインを統合した、新しくデザインされた製品です。

制作した三協金属の小岩社長は、次のように述べました。
「素晴らしいデザインに合わせて、重さが負担にならない程度まで薄くし、使い勝手を良くするまで試行錯誤が大変でした」
「この鉄瓶で沸かしたお茶は、どんな水でも美味しくなります。 床の間に飾っておくのではなく使って欲しい」

「この鉄瓶で沸かしたお湯で入れたお茶が、本当に美味しかったです。水が特別な水ではなく、水道水の水だったとお聞きしてビックりしました」(取材班)


磁器のテーブルウェア(陶來・滝沢市)

陶來・大沢和義氏

こちらのテーブルウエアは、す べて手ろくろで作られているため、手作りの磁器特有のやさしい風合いがあります 。

制作者の大沢氏によると、普段、ユニバーサルデザインの食器を手掛けることが多いそうです。今回のプロジェクトにあたり、今回のデザインは、当初、製作は困難だと思ったそうですが、すんなりと出来上がったとのことでした。

さすが、熟練の技をお持ちです。

とにかく触り心地と使い勝手がよさそうでした。 耐久性を高めるために約25時間、通常の1.5倍の時間で焼成され るため耐久性に優れているそうです。色も優しい乳白色でした。和洋を問わずどんな食材も引き立ててくれるでしょう。(取材班)


木工の椅子(岩泉純木家具・岩泉町)



岩泉純木家具有限会社
専務取締役 工藤林太郎氏

木の特性を生かした優しい風合いの家具です。 四角いスツール(上記写真右端)は、 バラバラに分解でき、簡単に組み立てることができます。デザイナーのヴィッレ氏によるとこの四角いスツールは、コンパクト家具と呼ばれるものだそうです。

工藤氏は、「3社とも今までの仕事に誇りを持って仕事をして参りました。そして、3社とも国内に誇る技術と仕上げのクオリティを持っています」、「日本に誇れる技術と世界に誇れるデザインで世界に挑戦したい」と力強く語っていました。

バラバラになった家具を組み立てる様子をみましたが、これほど簡単に、しかも丈夫なコンパクト家具があるのだろうかと思いました。木目も美しいです。(取材班)


最後に・・・

このプレス向けの発表会に彩りをそえたのは、こちらの清酒でした。

株式会社わしの尾・工藤 朋社長

文政12年に創業した株式会社わしの尾さんから提供されたのは、鷲の尾「蔵人の酒」純米吟醸酒です。

この瓶のラベルのデザインは、iwatemoプロジェクトのヴィッレ氏によるものだそうです。

工藤氏は、「山田錦を使ったこの純米吟醸酒は、自信をもってお勧めします」と語っていました。

これほど、飲みやすく美味しいお酒は久しぶりにいただきました。

尚、 こちらの会社の別のお酒「鷲の尾 結の香」は、平成30酒造年度 全国新酒鑑評会で「金賞」を受賞されました。

わしの尾さんの商品はこちらからもご覧になれます。


コレクションは、6月3日までArtek Tokyo Storeで展示しております。

iwatemoプロジェクトについてもっと知りたい方は、こちらをどうぞ


取材後記

「ものづくりは、地方にあり」
この言葉を、今回ほど実感したことはありません。
日本のいいものを海外の人に知ってもらおうと思っていても、中々ハードルが高い現実を、いかに乗り越えて一つ上の段階に上がっていくか。
iwatemoプロジェクトは、多くの地方のモノづくりを大切にする人々に、挑戦する勇気を与えてくれるものではないでしょうか。
今回のように、日本のものづくりと伝統を大切にし、そして生かしてくれる海外デザイナーの存在は、世界市場のへのチャンスを広げてくれるでしょう。
ものづくりを大切にしながら、今のニーズに合わせ、伝統を受け継ぐ形が求められているような気がします。
更なる成功をお祈りいたします。

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