【英国レポート第6弾① EU離脱】EUとアラブ連盟間の石油密約のじゅ縛からの解放こそが、英EU離脱の利点―?!

英国現地より、当サイト独自レポート第6弾!

Post by   Eshet Chayil ーONTiB Contributor 2019/04/09  14:40JST

【英国レポート第6弾①:EUとアラブ連盟間の石油密約のじゅ縛からの解放こそが、英EU離脱の利点ーー?!】聖書を通して見る中東外交の近代史。EU離脱のウラ事情を探る。

 英国にとってEU離脱の最大の利点は「対イスラエル外交」における自治権奪回だったーー?!EU離脱支持の理由として英国の有権者が一様に口を揃えるのは、主権国家としての権利の回復。金融・産業・農業・防衛やセキュリティー面など全ての対外交渉において、EUから独立した主権国家として、英国内特有の事情に即した交渉や政策を再び取ることができるようにするというものです。しかし、そのなかでも、究極的に反イスラエルの立場を貫くEU外交のじゅ縛から解放されることが、英国にとって最大の「隠れた報酬」との見解を英教会専門紙が掲載。一部で反響を呼んでいます。

 焦点となっているのは、第一次世界大戦中の1917年、バルフォア宣言を通して「イスラエル建国」に一役買った英政治・経済・宗教界の流れを描いた映画「ザ・デスティニー・オブ・ブリテン(英国の使命)」を制作監修したヒュー・キットソン氏が、英教会専門紙「ハート」の4・5月号に寄稿した記事。アラブ連盟諸国と建国後25年のイスラエルの間で起きた第四次中東戦争を引き金にしたオイルショックの最中、石油の安定供給という死活問題を巡って、欧州諸国がアラブ連盟と交わした密約が背景にあるとの指摘です。9日のイスラエル総選挙を前に「イスラエル・トゥデイ」誌が「イスラエルは石油の犠牲だった」との切り口で転載しています。

 エルサレムの第二神殿が西暦70年にローマ帝国のティトゥス皇帝によって破壊されたあと、約2000年に渡り、流浪の民となったユダヤ民族が、エルサレムを中心に据えたユダ・サマリヤの土地(後にパレスチナと改名)に帰還するという聖書預言(申命記32章)がありますが、バルフォア宣言でイスラエル建国の礎を築った第一次大戦中の英政治家たちは、この聖書預言に精通していたと、キットソン氏は映画で取り上げています。

 もちろん、この聖書解釈を巡っては、同じキリスト教会のなかでも宗派や伝統によって意見が分かれています。聖書を読む人がそもそも少ない日本では、突拍子もなく響く内容かもしれません。しかし、欧米カナダや豪州など主要諸国には、ユダヤ教の聖典タナハや新約聖書に基づいた「ジュディオ・クリスチャン」の信仰や価値観にあることは、否定できない事実(英国レポート第4弾)でもあります。

 今回のキットソン氏の指摘は、イスラエル建国の基礎を作りながらも、その後は三枚舌外交でユダヤ民族への約束を反故にした英国が、その後に味わった大英帝国の落日という時代背景をも踏まえています。エネルギー資源で中東に頼る日本にとっても、今後のエネルギー政策や外交・防衛を考える上で、キリスト教圏に存在する聖書の座標軸を考察することは有益と考えますので、以下ご紹介します。

 [英教会専門紙「ハート」一面から]

 映画各賞の受賞経験を持つプロデューサーのヒュー・キットソン氏が、同紙3面以降で展開する見識の大筋は、フランスを代表にした欧州各国が、1970年代の石油危機以来、今日に到るまで、「(石油生産国である)アラブ諸国の政治目的に屈してきた」というもの。1973年の第四次中東戦争でイスラエルが勝利した後、「アラブ連盟の加盟国である石油輸出機構(OPEC)の国々は、石油禁輸措置を課して西側諸国を『石油樽の上』に縛ってきた」という啓発だ。

 オイルショック当時、欧州経済共同体(EEC)の9加盟国(1973年当時の加盟国は設立当初の仏独伊、ベルギー、オランダ、ルクセンブルグの6カ国に英国、アイルランド、デンマークが加わった)は、中東産原油の供給安定化を目指し、フランス主導でアラブ連盟との「ユーロ・アラブ会議(EAD)」を設立。今日まで脈々と続く同会議には、テレーサ・メイ英首相が2月に出席している。

 EADが密かに合意している内容がある。それは、イスラム教やイスラム教圏での人権侵害を批判の対象外とすること、欧州諸国へのムスリム移民を歓迎することだ。この結果として、中東で唯一の民主主義国家であるイスラエルは(内政や自衛などにおける)行動批判や、国境問題において、国際社会の場で常に苛まれることになった。

 ある石油専門家はこう述懐する。「それは政治的な死活問題であり、すべては暗黙のうちながら、明白なことだった。リーダー格は明らかにフランスだ」。当時の欧州諸国は、中東と北アフリカ産の原油にほぼ完全に依存していた。

 北海油田の石油生産は始まったばかり。これにガス田が幾つか。ロシア産ガスなどは輸入対象ではなかった。欧州の各国政府にとって、石油は必需品。政治上の課題は、アラブ諸国が脅す恒久的な石油禁輸措置を阻止する一点に尽きた。

 キットソン氏は、これこそが「アラブ諸国対イスラエル間の戦争を、完全に歪んだものに仕立て上げた西側メディアの反イスラエル報道偏向のウラ事情である」と指摘する。特に「パレスチナ人」問題はその典型だ。かくして、聖書の神が「選んだ民」と彼らに与えられた古代の土地での民族自決権に対する、ひどく偏った姿勢が、何世代にも渡って形付けられることになったのである。

 英国や欧州各国で、英国のEU離脱のために注力して祈っているクリスチャンたちにとって、英議会を取り巻く大混乱は自然なものではなく、霊的な要因が強いとの認識は強い。「聖書は明解です。神は混乱の立役者ではありません」。(英国のための祈祷会をサッカー聖地、ウェンブリーの多目的ホールで主催した)キリスト教福音派の宣教師デビット・ハザウェイ氏が指摘する通りだ。

 政治や為政者への祈りに心を砕くクリスチャンらにとって、EU離脱後の祈祷課題は多い。英議会が自ら招いた混乱から速やかに回復できるように、また何千に上る様々なEU法や規制、政策のうち、議員たちが何を維持すべきで、何を放棄すべきかの判断を正しくするための知恵などだ。神が「選んだ民」とその民に与えられた土地に絡む外交政策や、人工中絶(胎児の生きる権利)を巡る政策も、もちろん含まれる。

 神が国家を裁く(マタイの福音書25章31-46説)と解釈するクリスチャンのみなさん。ゼカリヤ書2章8節によると、「神の瞳のりんご(繊細な瞳のうちでも最も大切なものとの意)」であるユダヤ人国家に対し愛をもって接することや、神が与えたもうた命の尊厳は、戦い守り通す価値があるものである

(海外ニュース翻訳情報局 えせとかいる)

* 第6弾の②に続く

* 第6弾の③はこちら

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