【米国:イスラエル領土問題】トランプ米政権、ゴラン高原をイスラエル主権と承認:イスラエル総選挙を控え、ネタニヤフ首相に追い風?

ゴラン高原は、その南側にガリラヤ湖という聖書を知っている人は誰でも知っているイエス・キリストの伝道の逸話がある地域です。この地域は、貴重な水資源のある地域ということもあり、長い間、戦略的地域としてシリアと領土問題がありましたが、現在は、そのゴラン高原の大半は、事実上イスラエルが実行支配している状態でした。
そして、ついに米国が正式にイスラエルの主権を承認しました。
今までどの大統領もできなかったこの承認は、歴史に残る出来事ではないかと思います。
まあ庶民にとっては、イスラエルが正式にその地の主権をもつことにより、ここ数十年の間に繰り返された、その地を聖地巡礼や観光なので訪れることができなくなるというような「心配」がこれからはもうなくなるのではないかと思います。(観光や聖地巡礼は今でもできますし普通に生活できますが、できなくなるかもしれないという心配がなくなったという意味です。)
この記事は、マレーシアのFMT Newsから紹介します。

Post by ONTiB,  Prolusion by Mariko Kabashima, Translated by   Eshet Chayil   2019/03/28 10:24Jst

FMT News 2019/03/26】

ワシントン発:イスラエルが1981年に事実上、併合したゴラン高原について、ドナルド・トランプ米大統領は月曜日(25日)、イスラエルの主権を正式に承認した。訪米していたイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相にとっては、来月9日に控えた総選挙戦の追い風となる。一方、戦略的地域として(1948年のイスラエル独立から1967年まで)ゴラン高原を実効支配していたシリアは激しく反発している。

 大統領の肩越しに見つめるネタニヤフ首相の面前で行われたホワイトハウスでの調印式で、トランプ大統領はゴラン高原をイスラエルの主権と宣言する文書に署名した。米国の中東和平の外交政策にとっては、事実上の併合以来の大転換となる。

 トランプ政権の政策転換の方針は21日の木曜日、すでにツイッターで表明されていた。共和党大統領による最もあからさまなネタニヤフ氏の支持路線と言える。(トランプ氏が大統領に就任した翌月に当たる)2017年2月以来、ネタニヤフ首相は主権承認を働きかけてきた。

 イスラエルがゴラン高原を手中に収めたのは1967年(訳注:エジプト、シリア、ヨルダン、イラクなどアラブ諸国からの侵略の脅威にさらされたイスラエルが、自衛のために先制攻撃に出たことが、1967年6月の第3次中東戦争ぼっ興の背景。アラブ各国に対して、劣勢と見られたイスラエルがゴラン高原やシナイ半島、東エルサレムを含む西岸地区を6日間で圧制し、一方的な勝利をおさめたため、「6日間戦争」との異名を取る)。当初は軍政下だったゴラン高原を。イスラエルは1981年に民政下に置き替え、事実上、併合した。これに対し、国連安全保障理事会が「国際法では無効」との決議を採択するなど国際社会はイスラエル主権を認めていなかった。

 総選挙を4月9日に控えたネタニヤフ首相。(訪米の狙いは、ワシントン最強と言われる親イスラエルのロビイスト団体、米国イスラエル公共問題委員会=AIPACでの支持の取り付けだった)。ところが、イスラエルの主要商業都市テルアビブの民家に、(イスラム原理主義の国際テロ組織)ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区からのロケット砲が着弾、7人の負傷者が出た(うえ、26−27日もガザ地区からの砲撃が続いた)。このため、日程を早めに切り上げ、対応する方針。イスラエルはガザのハマス拠点に対し、報復空爆を実施している。

 ネタニヤフ氏は4日間の滞在予定で、24日の日曜日にワシントン入りした。これに先立ち、ネタニヤフの最大の政敵と目されるベニー・ガンツ氏(訳注:イスラエル国防軍の元参謀総長で軍要らと中道の強硬派世俗政党を立ち上げた)も米ワシントン詣で。AIPACなどイスラエル寄りのロビイストに対し、次期首相候補としてアピールした。

 主権承認の署名の際、トランプ氏は「長い時間を要した案件だったね」と語りかけ、「これをイスラエルの人々に渡してください」と、署名に使った万年筆をネタニヤフ氏に手渡した。好意的なジェスチャーに対し、ネタニヤフ首相は、イスラエルはこれほど素晴らしい友人を持ったことはなかったと歓迎した。

 また、ゴラン高原をイスラエルが引続き維持することの必要性については、過去の二つの中東戦争の例に挙げた。「1967年にイスラエルが堂々と立ったように、(エジプトやシリアを中心としたアラブ諸国対イスラエルの第4次中東戦争が起きた)1973年も堂々と立った。そして、今日もイスラエルは堂々と立つ。(シリアの砲撃台となる)高台を我々は堅持する必要があるのは自明の理。決して手離さない」。

 トランプ政権の主権宣言に対し、シリアは自国の主権と領土保全に対する「露骨な攻撃だ」と反撃。ゴラン高原の領有権を取り戻す権利があると主張した。国際連合(UN)のアントニオ・グテーレス事務総長は、「ゴラン高原の帰属問題に関する立場には何の変化もないと明確に示している」(UNスポークスマンのステファン・デュジャリック)といい、「ゴラン高原に関する国連の方針は、安保理の決議497の通り」(同氏)と強調した。

 同決議497は、イスラエルが1981年に軍政下だったゴラン高原を民政下に変更したことを受け、採択されたもの。「イスラエルの国内法を適用させ、司法・行政面でイスラエルの管轄下に置くという決定は、無効であり、国際的な法的効力はない」と明記した。さらに、イスラエルに対し、政策の撤回を要求した。

 北大西洋条約機構(NATO)の同盟国であるトルコは、米国によるイスラエルの主権承認は容認できないと表明。メヴリュット・チャヴシュオール外務相は、国連など国際機関を通じて、相応の対抗措置を取る構えを鮮明にした。アラブ連盟も同様、米政権の政策転換を一斉に非難した。

 トランプ政権が米大使館をテルアビブからエルサレムに移転して以来、米国との対話を拒否しているパレスチナ自治政府のマフムード・アッバス議長は、ゴラン高原におけるイスラエルの主権承認は「断固として反対する」との声明を、自治政府系ニュース・サービス「Wafa」を通した発表。「占領期間の長さは関係ない。主權の帰属を決めるのは、米国でも、イスラエルでもないことを再確認する」と強調した。

 米政権の政策転換に対する否定的な反応は、先週のトランプ氏のツイートに対する反応と呼応する。英国、ドイツ、フランスや欧州連合(EU)、トルコ、エジプト、アラブ連盟、ロシアなど、欧州や中東の各国・各機関からの直接的または示唆的な批判を巻き起こした。

 一方のワシントンはどうか。ワシントン最強と言われる親イスラエルのロビイスト団体、米国イスラエル公共問題委員会 (AIPAC)が開催した年次総会では、スピーカーが次々と米ーイスラエル間の強固な関係を支持した。

 「米国がイスラエルとともに立つのは、イスラエルの大義が私たちの大義であり、イスラエルの価値観は私たちの価値であるからです。イスラエルの戦いは我々の戦いでもあるのです」ーー。月曜日(25日)に壇上にたったマイク・ペンス副大統領は、こう語り、拍手喝采を浴びた。米トランプ政権は、「イランが核兵器を手に入れることは決して許さない」とも発言した。

 ネタニヤフの後継を目指すガンツも壇上に上がり、イランとシリアからの脅威からイスラエルを守ると宣言、団結を求めた。「希望が欲しいなら、私たちは一致団結しなければならない」ーー。

 総選挙を目前に控えたイスラエルの世論調査の動向は、ネタニヤフ率いる右派リクード党と、ガンツ氏が新たに結成した中道派「イスラエルの回復力」党の、青と白の2党による首位争いとなっている。

(海外ニュース翻訳情報局 序文 樺島万里子  翻訳 えせとかいる)

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