【英国レポート第二弾:EU離脱】英国:国の命運を賭けた正念場

当サイトのロンドンのメンバーからのリアルタイムなEU離脱に関するレポート第二弾です。現地にいるからこそ分かる、主流メディアだけでは得ることのできない生の情報です。ぜひ、ご覧下さい。(編集 樺島)

 

Post by   Eshet Chayil ーONTiB Contributor  2019/03/21  17:41 JST update 03/23 1:47 JST

ロンドン発ー

【英のEU離脱、国の命運を賭けた正念場】

メイ英首相、EUに離脱日延期を依頼。長期の延期は事実上の「EU残留」、英国の主権国家として再生に致命傷か

 英グリニッジ標準時間の3月29日午後11時は、英国(正式名称はグレートブリテン及び北アイルランド連合王国)が、英EU離脱法「European Union (Withdrawal) Act 2018」に基づき、欧州連合(EU)を離脱する、歴史に残るべき瞬間である。立法権や司法権をEUから奪回し、独立した主権国家に戻ることは、2016年の国民投票で示された民意だが、果たして英国は、この法定日時通りに再生に踏み出せるのかーー?!向こう9日間は、「第二次世界大戦」以来の、国の命運を賭けた正念場となる。

 

 「EU離脱日を延期するのは個人的に残念です。私は皆さんの側です」
メイ英首相は20日夜、テレビ演説で国民に語りかけた(演説要旨は別紙)。メイ氏は、同日朝EUのトゥスク大統領に書簡で6月末までの離脱日延期を正式に打診。期間延長は合意済みの離脱協定案に英政府承認を取り付けることが条件との報道があったため、異例の措置をとった。

 

 メイ首相が合意した離脱協定案は2度に渡って大敗を喫している。一方で、協定なしで29日離脱することに下院は否定。離脱日の延期を可決している。メイ首相は「三度目の正直」に当たる離脱協定の修正案採決で議会の支持を取り付けたうえで、延期期間や達成課題などの方針を固める意向だった。ところが、下院議長が18日、異例とも言える議会運営上の判断を下した。「内容的に全く同じ、または、ほぼ同じ動議を再び採決することはできない」。英政府にとっては想定外の展開で、EU離脱を取り巻く状況は土壇場でさらに混沌としていた。次の焦点は21−22日に開催予定の欧州理事会。

 

 英国がリスボン条約50条を発動した2017年3月から約2年に及んだEUー英国間の離脱協定の交渉は、なぜ土壇場までもつれこみ、2週間後の体制が定まらないほどの政治危機に陥ったのかーー?!本稿では、政治から軍事にまで拡大し深化させる方針を明確にしている欧州統合プロジェクトについて、あまり日本では報道されない英離脱派の論点を軸に、離脱日遅延の深層を探ってみたい。


[29日の離脱日時と「合意なき離脱」という安全弁]

 「2016年の英国民投票の結果を、英国のポリティカルクラス(政治的エリート層)は、未だに受け入れていない」(金融マンから政治家に転向した欧州懐疑派の先鋒、ナイジェル・ファラージ前イギリス独立党=UKIP党首・欧州議会議員)と憤る。

 

 離脱日時を29日午後11時に定めた英EU離脱法「European Union (Withdrawal) Act 2018」が成立するまでの経緯は、決して平坦ではなかった。英保守党内の独立機関ヨーロピアン・リサーチ・グループの現会長、ジェイカブ・リースモグ下院議員によると、「下院議員650人のうち、残留派が実に500人を占める」。「有権者の意を代表するはずの議員と有権者の間の意思のズレは、英議会政治史上でも未曽有の状態にある」(同氏)のだ。民主主義そのものが危機に瀕していると言える。

 

 それでも建前上は議会制民主主義のお国柄。2017年の英総選挙では保守党・労働党の2大政党とも、国民投票で1741万人(約52%)が「EU離脱」に賛成票を投じた結果を尊重し、EU離脱を行うとの方針を掲げた。だが、連立ながら再び政権を任されたメイ首相が最初に直面したのは、リスボン条約第50条を発動してEUと離脱交渉を始めるには議会承認が必要とした英司法判断。英政府の離脱方針は、下院と上院の両院それぞれで採決・承認されなければならなかった。

 英EU離脱法は、こうした幾重もの政治的審判を仰ぐというハードルを乗り越えたのちに、エリザベス英女王のお墨付き(Royal Ascent)を頂き、2017年3月16日に法律として成立(発行は2018年6月)したのである

 

 離脱法成立を受けた2017年3月29日。メイ首相はトゥスクEU大統領に書簡を送り、英国が同50条を発動してEUを離脱すると通達した。同50条は、加盟各国に付与された自決権の奪回を保障する機能。離脱後の通商政策や規制面、将来の関係でたとえEU側と合意に至らない場合でも、離脱協定の有無に関わらず、通達から2年後には離脱が成立するという法的効力を持つ。

 

 従って、29日は英・EU双方の法定離脱日であり、その変更は相応の手続きを要する。EUが延期を承認する条件の一つとして、総選挙による英政権交代やEU離脱の是非を再び問う2度目の国民投票を強要する可能性もある。EUはイタリアやギリシャの民主政権に介入した過去があり、「EU官僚による、民主的な選出過程を経た加盟国内政への許しがたい干渉」との反発は英国内で強い。21−22日の欧州理事会でメイ首相はどこまで妥協するのか。そして、その妥協条件を英上下両院が承認するか。一連のハードルが越えられなければ、法定日時は延期できない。このため、協定案なしで英国が予定通りにEUを離脱する可能性は、29日ギリギリまで残る公算だ(英BBC作成の図表を参照)。

(英BBC作成)

 

 ここで注意したいのは、土壇場になって突如、悪者扱いされてしまった「協定合意なき離脱」だ。これはリスボン条約第50条の列記とした法的な枠組み。今回の英国のように、EUを離脱したい加盟国が、その意に反してEU内に「トラップ(罠に掛かったように拘束)される」という事態を避けるための、いわば安全弁の役割を本来は担うはずなのだ。実際、メイ英首相自身も当初は、「ノーディール(合意案なき離脱)は、バッドディール(悪い離脱協定)よりも良い」と強調していた。

 

 もちろん離脱後の規制環境や通商政策が不透明なままでは企業は対策が立てられないから、先行き不安感が拭えないのは当然ではある。しかし、「バッドディールより、ノーディールの方が良いのは産業界では常識」(ファラージ氏)でもある。英国が「協定合意なしでも予定通り離脱する」という揺るぎない政治意思を示せば、その瞬間から「モノ・資本・サービス」の移動や規制面については現行法を暫定的に延長することで双方が合意し、混乱は避けられると離脱派は訴えてきた。あまり報道されないが、「合意なき離脱」となった場合の対策として、ドーバー海峡を挟む英仏湾岸管理局のほか、ノルウェー、アイスランドなどが個別の暫定措置で合意している。

 

 風当たりが強まったのは、メイ政権がEU側と合意した離脱協定案が、英国として到底受け入れられる内容ではないことが明らかとなった昨年11月以降。「合意なき離脱」は政治的に無責任であり、無秩序化による経済社会の混乱や大不況を引き起こすという恐怖感が大手メディアの扇動などで煽られた。このため、本来なら交渉が難航・決裂した場合でも、離脱を保証する役割を果たすはずの安全弁は、あっという間にすっかり悪者に仕立て替えられてしまった。安部首相の1月の訪英時の発言報道もその一例である。


[メイ離脱協定案ではイギリスはEUの植民地]

 

 「英国はEUの衛星国、つまり、植民地に成り下がってしまう」ーー。メイ英政権がEUと合意した離脱協定案の内容が明らかになったときのことだ。格調高いオールドイングリッシュを操り、才気溢れる下院討論で一躍名を馳せたリースモグ英保守党議員は、政府の離脱案を、こう批難した。1月15日の採決で230票差という英国議会政治史上、最大最悪の大敗を喫した背景だ。

 

 585ページに及んだ離脱協定案には、1998年の和平合意まで続いたアイルランド共和国との苦い紛争の歴史を持つ英政府が、譲歩に譲歩を重ねたがことがにじみでていた。英領の北アイルランドとアイルランド共和国の国境問題でEUが固執する「ハードボーダー(税関や出入国管理の検問所を設置する厳格な国境管理)」が出現することを避けたい一心だったのだろう。

 

 離脱すれば英国が持つ、欧州議会や欧州理事会、欧州司法裁判所に代表者を送る権利は消滅する。当然ながら、EUの運営や新法の是非に意見することもできなければ、拒否権を行使することもできない。にも関わらず、英政府は、離脱の移行期間が終了する2020年末までの間、英国が関税同盟に留まることや、欧州司法裁判所の管轄下に置かれたままとなること、EUが定める全てのルールの順守義務を負うという全ての苦い薬を飲んだ。しかも、移行期間中は、EU以外の世界各国との自由貿易協定や通商政策の交渉もできない。さらに、2020年末までにアイルランドとの国境の「ハードボーダー」を回避する通商協定で合意できなければ、EUと英国を「単一関税区域」と制定するバックストップが発動。英国は一方的にバックストップを解除することはできないーーなどという信じ難い内容だった。

 

 幕末に日本が開国を迫られ、圧倒的な軍事力の差から不平等条約を締結せざるを得なかった時すら彷彿させるほどで、これでは「EUの植民地」と批難されるのも当然。英議会が承認するはずはなかった。合意協定案の全文公開を「国益にかなわない」と政府が出し惜しんだり、採決日程を当初予定の2018年12月から年明けまで遅らせた理由を疑いたくもなる。

 

 歴史的大敗から約5週間が過ぎた3月12日。メイ首相とEUがさらに交渉を重ねた結果として、再び議会に提出された協定案の付随文書について、法律面からの見解を下院に示したジェフリー・コックス法務長官に注目が集まった。

 「新たな付随文書は、EUが英国を恒久的にバックストップ(関税同盟)に拘束しようと画策してはいけないことを明確にしている」(コックス法務長官)と改善点を強調した。だが、「もしも、EUと英国の双方が職務遂行の義務感や良心を持って交渉に臨んだ末に合意に至らなかった場合、そうした事態が発生する可能性は非常に低いというのが私の見解であるが、その場合の英国の法的リスクは、11月13日付け書簡で示した通りで変わっていない」とも言明。続いて行われた修正案の採決では、190票差の大差で再び否決され、メイ政権にとっては痛手となった。


[民主主義の危機。BBCの煽りも]

 英国は軍事力では欧州最大、経済規模(名目国内総生産GDP)ではEU第2位、EUへの分担金では独仏に次ぐ第3位。対EU貿易では常に赤字を計上しており、EUにとって英国はドイツ製自動車などの工業製品や仏製ワインなど飲料やスペインの農産品の上等な顧客である。英国は2度の世界大戦やその後の国際政治の場でも、狡猾とさえ言える巧みな外交手腕を示してきた。そんな英国がEUとの交渉でなぜ、このような為体を露呈しているのだろうか。

 

 「通常なら数カ月で済むはずの交渉だ。ここまでもつれるのは、デモクラシー(民主主義)の死を意味するのではないか」ーー。ドナルド・トランプ米大統領の子息ドン・ジュニアの19日の発言は、賛否両論あったが、核心をついている。

 

 EUへの拠出金だけを見ても、優位な立場で交渉力を発揮できるのは英国のはず。ところが、EUの方が一貫して高圧的だった。通商政策など離脱後の枠組みを決める交渉も、懲罰的と言える法外な巨額拠出金に英国が合意するまでは応じないとはねつけていた。拠出金は390億ポンドの支払いで決着したが、離脱協定で合意できなければ、英国の支払い義務は消滅するという最強の交渉カードを英国が切ることはなかった。「EUとの交渉は初めから間違いだらけだった」(リースモグ議員)。民意を代表して交渉に臨むべき議員や政府担当者と、民意の乖離の虚を突かれ、英国を域内に留めておきたいEUに完全に利用されたとしか思えない。

 

 英議会制民主主義が始まって以来の危機と言われる、その乖離をさらに悪化させたのは、BBCの報道偏向だとの指摘がある。「上院議員の実に多くが、未だに欧州統合プロジェクトが欧州に和平をもたらしたと信じていることには驚かされる。貿易にとってもEUはプラスだと見ていて、EUを失敗した政治プロジェクトであると認識できない。その責任はBBCの報道偏重にある」。英上院で13日発言したピアソン卿(UKIP)は、さらにこう続けた。

 

 公共放送BBCの報道姿勢を監視するために、同卿など超党派の英議員が1999年に共同出資で設立した調査機関ニュース・ウォッチのまとめを用いて、「BBCのニュース番組や討論番組では残留派と離脱派の割合は総じて2対1、時には6対1だった。離脱派が一貫して40−50%を占める世論とは激しく離れた(政治的な作為のある)人選だ」。

 

 同氏の見方は離脱賛成派の支持を集めている。「BBC、フェイクニュース、フェイクビューズ」。昨年12月10日の離脱派デモでは、BBCの偏向報道を批判するプラカードも目に付いた。

写真はAFPより

 離脱協定の合意がないまま29日に英国が離脱した場合についても、BBCなど大手メディアの報道には社会混乱や不安をかき立てる悲観的なものが目立つ一方、この巨額な拠出金の支払い義務の消滅は静かに伏せられている。


[非民主的で排他的、政治プロジェクトとしてのEUには疑問符も]

 英国は歴史的に見ても常に、大陸欧州とは一線を画してきた。欧州各国は、2度の大戦で人的にも経済的にも甚大被害を被った。ナチス・ドイツによる侵攻と占領の生々しい記憶が残るうえ、ロシア(旧ソ連共産主義)の脅威もくすぶる。半面、英国は第二次世界大戦の戦勝国で本土占領の憂き目にあっていない。「欧州、ひいては世界を、全体主義の悪から救った」とのプライドは高い。

 

 欧州経済共同体(EEC)の設立は1957年だが、英国の加盟は1973年。英国の欧州懐疑派には絶えず、共同体の統合が深化すれば、加盟国の主権を弱体化させるとの懸念があった。1997年5月の英総選挙で18年ぶりに政権を奪回したトニー・ブレア党首率いいる英労働党政権。ブレア首相(当時)が進めた欧州防衛イニシアティブで、防衛・安全保障面の統合の深化と東方拡大の流れが確実になるなかの2003年。英有力誌プライベート・アイの創始者で英保守系高級紙テレグラフのコラムニスト、クリストファー・ブッカーが「The Great Deception – The Secret History of European Union(邦訳の出版はない。題名は『大いなる欺まんー欧州連合の秘密史』」を出版した。欧州に和平をもたらすため、「欧州統合プロジェクト」は戦後に始まったとする従来見解が崩れ、「EU構想は第一次世界大戦後の1920年代からあり、エリート官僚による帝国的(独裁)体制の構築が狙い」との見識が有識者の間でじわり広がった。

 

 名門英オクスフォード大学は2013年10月、「EUはデモクラシーの脅威か」との討論会を開催。サッチャー英保守党政権下で財務相やエネルギー相を歴任したナイジェル・ローソン卿リースモグ現保守党下院議員などが、EUの不透明な官僚主義がいかに非民主的であるかと熱弁した。
「非民主的なだけではない。EUは筋金入りの反民主主義(アンチ・デモクラティック)だ」(ファラージ欧州議会議員)との声もある。

 

 では何が非民主的なのか。EUの機関には、5年ごとの直接選挙で各国から議員を選出する欧州議会があるから、欧州議会を立法府と勘違いして捉えている向きも多いのではないだろうか。しかし、実際に立法権を有するのは、加盟国政府の官僚で構成されるEU理事会。欧州議会は法令制定で権限を共有するとされるが、議会の賛否表明や修正案には法的拘束力はない。つまり、選挙で選出されたわけでもない各国の官僚に立法権が集約されているのだ。だから「欧州議会は全く意味のない茶番でしかあり得ない」(ケイト・ホーイ労働党下院議院)。

 

 欧州議会には法案提出権もない。「世界的に見ても、そんな議会は存在しない」(ファラージ氏)。法案提出権を一手に握るのは欧州委員会。同委員会はEU理事会同様、加盟国政府の官僚が占め、担当官僚の選出過程も不透明で非民主的との批判が強い。

 

 数あるEUの官僚組織のなかでも、「司法違反だ。犯罪であるべきだ」(リースモグ氏)とまで悪評が高いのは、EU司法裁判所の裁判官(注: Youtube動画1.49min 過ぎ参照)である。厳格に正義と公正を追求する裁判の基本中の基本は「Nemo judex in causa sua=自らが自らの裁判官であってはならない」(17世紀の英裁判官・法廷弁護人エドワード・コークによるラテン語の格言)。
にも関わらず、「EU司法裁判所の裁判官らは自らに関わる案件の判決も自らが担う。だからEU司法裁判所は正義と公正を目的とした裁判所ではなく、EUの政治的目的であるEUの拡大や深化に、国民の承諾もないのに、法的なお墨付きを付けるポリティカル・コート(政治色の強い法定)である」(2013年10月の英オ大討論)と糾弾。下院討論で同氏は旧約聖書アモス書5章12章を引用。
「『私はあなた達のそむきの罪がいかに多いかを知っている….。正しい者を嫌い、賄賂を取り、貧しい者を押しのける』。これが欧州司法裁判官の姿だ」とした上で、英政府として断固として立ち向かうべきだと強調した。

 

 政治色の強い判例は枚挙にいとまがない。EUの東欧圏拡大では、加盟条件である債務レベルや公正な司法組織が、ルーマニアに存在しないにも関わらず、条件を大きく曲げて同国の加盟を認めた。ギリシャ財政の粉飾決算に端を発した2010年の欧州経済危機の際、加盟各国が官僚の給与カットを求めたが、欧州委員会が拒んだため、欧州司法裁判所に持ち込まれた。結果は「条約が明記する、官僚給料の増加を抑制するほどの経済危機には該当しない」として、自らの給与カットの要求を退けた。未曾有の危機、ギリシャ、スペイン、ポルトガルの市民が失業や賃金カットで困窮するのをよそ目にした蛮行との批判された。

 

 民主的な社会体制の移行が完全とはいえない東欧諸国を新たにEU加盟国に加えたことでは、EU補助金の流用も問題化している。昨年10月に政治家の汚職を探っていたマルタの女性記者が殺害されたことでは衝撃的が走ったが、今年2月にはスロバキアで、今月に入ってブルガリアで公的資金の流用疑惑を追っていた記者2人が殺害されている。「言論の自由がなければ民主主義は生き残れない」(EU高官)との懸念がある。

 

 単一市場の目玉政策である関税同盟は、EU域内の農業や産業を守る排他的な保護主義政策である点も見逃せない。南欧諸国の低い生産効率を温存する一方、EUの共通漁業政策の一環で英領海水域が解放、漁できる魚種規制などで英国の漁業者は壊滅的な打撃を受けている。


[主権国家を取り巻く潮流の変化]

 英国のEU離脱を巡る大手メディアの論調は短絡的なものが多い。「離脱=移民を嫌う排他的なナショナリズムの台頭」、あるいは「単一市場経済からの離脱は愚の骨頂」といった具合だ。だが、3月29日を「英国の独立記念日」と見るEU離脱派が求めているもを、単なる「内向きのナショナリズム」、「寄らば大樹の陰という近視眼的な経済安定」だけという点だけで片付けるのはいささか早計だ。

 

 シリアからの大量難民の流入や、新たにEUに加盟した旧東欧圏からの大量移民の流入、それに伴う域内外の秩序や安全保障の激変、1990年代以降、急速に進んだグローバル経済の弊害の顕在化など様々な要因があるなか、国家権力とは何か、その権力は誰がどう行使し、誰(国民)を守るのか、また、その国家権力をいかに監督し暴走を抑えるのかといった、21世紀の国際政治における国のあり方という根本的な問いに対する答えを英国民は出したのではないか。

 

 13世紀初めのマグナカルタ(イギリス大憲章)まで遡る英議会制民主主義。三権分立、司法の独立、2院制などは歴史そのものである。18世紀以降に国際政治の軸となってきた「主権国家」の元祖・英民主主義は、国際政治の潮流の変化に揉まれている。

 

(海外ニュース翻訳情報局 寄稿:えせとかいる)

 

※ 無断転載厳禁

 

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