【ドイツ:必読】メルケル独首相:2019年ミュンヘン安全保障会議におけるアンゲラ・メルケル連邦首相の演説(全文翻訳)

2019年2月16日、第55回ミュンヘン安全保障会議でのドイツのメルケル首相の演説が、ドイツ連邦政府からリリースされていましたので、全文翻訳しました。
2月18日に米国のペンス副大統領の発言を全文翻訳し当サイトで紹介しましたが、ドイツのメルケル首相のこの演説も大変重要なものであります。
特に米国に対し、ドイツの立場をはっきりと述べている点は必見です。
少々長いですが、ぜひご覧ください。

Post by Mariko Kabashima  2019/03/01  0:42 update 7:08

The Federal Gavernmet 2019/02/16】

2019年2月16日第55回ミュンヘン安全保障会議における
アンゲラ・メルケル連邦首相の演説

 
大統領の皆様
尊敬すべき同僚の皆様、
議会から尊敬すべき同僚の議員の皆様
イシンガー議長、
ご列席の皆様、
 

そして、もちろん、バイエルン自由州の州首相ありがとうございます。私はミュンヘンが、この会議を主催するにふさわしい素晴らしい都市だと思います。バイエルン州の強みはここで特別な方法で示されています。ドイツには他にも美しい都市がありますが、今日は、ミュンヘンが中心的な役割を果たしています。

 

皆さん、2019年、我々はアレクサンダー・フォン・フンボルトの生誕250周年を迎えます。アレクサンダー・フォン・フンボルトは、まさに産業化しようとしている時代に生きていました。

彼は、世界全体を理解し、世界全体を見ることへの衝動に駆られた学者であり旅行家で、この一人の情熱が大きな成功をもたらしました。1803年のメキシコ旅行記にもあるように、彼のモットーは「すべては相互作用である」ということでした。

 

それから約200年後の2000年、ノーベル賞受賞者ポール・クラッツェン氏がオゾンホールとその化学的相互作用を研究した結果、我々は新しい地質年代に突入していると結論づけました。氷河期と間氷期が終わり、我々は現在、人新世に入りました。

2016年、この定義はその後、国際地質学会議で採択されました。これは、人類の痕跡が地球に深く浸透し、未来の世代が、人類が創造した全時代と見なす時代に生きているということです。核実験、人口増加、気候変動、原材料の搾取、海洋におけるマイクロプラスチックの痕跡です。これらは我々が今日行っていることのほんの一例に過ぎません。

 


 

これら全てが、世界の安全保障と、現在ここで議論されている問題に影響を与えています。したがって、この会議が1963年にどのように始まったかを見ることは理にかなっています。―当時、ドイツ語で「ヴェルクンデ(Wehrkunde)」と呼ばれる軍事科学の会議で、第二次世界大戦の余波とドイツ国家社会主義が権勢をふるっていました。特に大西洋の両側の国々に焦点を当てたイベントです。

これが、今日ここにアメリカから多くの代表者の皆さんが来てくださったことを嬉しく思う理由でもあります。我々は、本日、包括的安全保障会議に会合し、エネルギー供給、開発協力、そしてもちろん、防衛問題及び安全保障に対する包括的アプローチについて議論しています。これはまさに正しい答えです。

 

我々は相互に連結したシステムという観点で考えなければなりませんが、その中の軍事的構成要素はただ一つだけです。しかし、21世紀の第2の10年を迎え、21世紀の始めに感じていることは、我々が動かしているシステムは、本質的には第二次世界大戦と国家社会主義の恐怖から生まれたものです。

ですが、これらのシステムの発展には改革することを要求されるため、途方もないプレッシャーにさらされているということです。しかし、これらのシステムに対し、単純に大ナタを振るうことはできないと思います。

このため、この安全保障会議の見出しは「The Great Puzzle」です。このトピックの最初の部分から始めさせてください。大国間の競争―これだけで、我々が世界全体として、世界の構造として見なしていたものがプレッシャーを受けており、さらにはパズル、つまり断片に分解されるものに例えられるという事実への洞察を与えてくれます。

 

我々が今年記念すべき日を迎える30年前、ベルリンの壁は崩壊し、鉄のカーテンはそれとともに消えました。冷戦が終わりました。当時、人々は我々がまだNATOのような組織が必要かどうかを自問していました。

今日、我々は、確かに、激動の時代における安定の要としてNATOが必要であることを知っています。我々は、NATOを軍事同盟としてだけでなく、人権、民主主義、法の支配を共同行動の指針とする共通の価値観を持つ共同体として確立したことを決して忘れてはなりません。

 

NATOが今日に至るまで非常に魅力的な存在であり続けているという事実は、北マケドニアの加盟をめぐる論争の数カ月の間に明らかになりました。幸いにも今では誰もがこの国をNATOの加盟国と呼ぶことができます。

2人の立役者である北マケドニアのゾラン・ザエフ首相とギリシャのアレクシス・ツィプラス首相に、その勇気に心から感謝したいと思います。

彼らの取り組みに対して今夜、エヴァルド・フォン・クライスト賞が授与されます。我々が今日直面している多くの紛争、そしていまだ解決策を見つけられていないことを考えると、これは我々が勇気あるアプローチを取れば、どのように解決策を見つけることができるかを示す良い例です。

いずれにしても、私はそれが見込みのない試みであると考えていたので、その間に国名のさらなる合併について考えることを、もうあきらめていました。現在、あなた方は成功を収めました。この功績に心からお祝いを申し上げます!

 


 

しかしながら、我々を悩ませている多くの紛争があり、これが、我々がここで行う議論の主題です。私は、私自身の仕事の中で特に焦点を当てている一つの問題から始めたいと思います。

我々の中の多くの問題、すなわちロシアとの関係から始めたいと思います。ロシアはソ連時代においては、いわば冷戦時代の敵対国でした。ベルリンの壁の崩壊後、我々は、我々の共存を改善できることを願っていました。NATO‐ロシア基本文書は、その時生まれました。

2011年の安保会議の合間に、新戦略兵器削減条約の批准書がヒラリー・クリントン米国務長官とセルゲイ・ラブロフ露外相との間で交わされたことを今思うと、2019年の今日では、随分昔のことのように思えます。

しかしながら当時は、クリントン氏もラブロフ氏もこれを戦略的パートナーシップのマイルストーンとして歓迎していました。ここ数年で何が起こったのかを説明し、その一方で、両者が協力し合えば、数年後には状況がまったく違ったものになるかもしれないことを指摘いたします。それゆえ、ここ数年の最も困難な時期にNATO―ロシア基本文書を何度も引き合いに出しただけでなく、対話を求めたことについても、イェンス・ストルテンベルグ氏に心から感謝いたします。本当にありがとうございました!

 

クリミア半島は2014年3月に(ロシアに)併合されましたが、これは明らかな国際法違反でした。

そして、(ロシアは)ウクライナ東部を攻撃しました。今日、ペトロ・ポロシェンコ氏はここにいらっしゃいます。その後、ドイツとフランスは、ロシアとウクライナとともに紛争の解決に努め、苦労の末、停戦が実現し、脆弱でありますが、ミンスク合意によって安定したものに保たれました。

しかしながら、我々が解決策を達成するには程遠いことを我々は認めなければなりません。我々は、どんな犠牲を払ってでも、このことに取り組み続けなければなりません。

 


 

我々欧州人にとって、今年の本当に悪いニュースは、INF条約の終了でした。数十年どころか、何年にもわたってロシアが条約に違反してきたため、この条約破棄は避けられませんでした。我々は欧州人としてこれを支持しました。

それでもなお、私は、このことをそうそうたる人々の一団であるアメリカの関係者のみなさんに言います。

米国とロシアは、ソ連の合法的な後継者として、欧州のために実質的に合意された条約、すなわち、米国の安全保障に影響を及ぼす軍縮条約を破棄しようとしており、我々は、当然のことながら基本的関心をもって、軍縮に向けた更なる前進を促進するために、力の及ぶ限りのあらゆることを行います。

やみくもな再武装は、このことに対する我々の反応ではありえないことです。

 

しかし、本日は中国から代表がお見えになっております。軍縮というのは我々皆にとって関心のあることでありますし、米欧露だけでなく、中国ともそのような交渉が行われれば、もちろん喜ばしく思います。これには多くの疑問があることは承知していますが、現時点では詳細には触れたくありません。しかし、我々はこれを歓迎するでしょう。

 


 

ウクライナでの事件を受けて、我々は2014年にウェールズで、アフガニスタンのようなテロとの戦いだけでなく、同盟国の防衛もまた、我々の最優先課題であると述べました。

当時、各国の軍事支出をGDPの2%に引き上げるという目標が再び見直されました。私は、これが2000年代初頭にすでに目標であったことを、たびたび指摘しています。

NATOへの新規加盟を希望する国は、当初2%の方向に進まなければ、そもそも加盟を認められないと告げられました。それは私が連邦首相に就任する前のことです。

 

ドイツは現在、この点に関して、批判にさらされています。 これについては、後ほどお話しします。

しかし、我々は、我が国の防衛費を2014年の1.18%から1.35%に引き上げました。我々は2024年までに1.5%に達成することを目指しています。多くの国にとってこれでは十分ではありませんが、我々にとってこれは本質的な増加です。

 

もちろん、我々はこの資金で何をしているのかと自問しなければなりません。

次のように説明します。もし我々すべての国が不況に陥り、経済成長がなければ、防衛支出は容易になるだろうと。ですが、これが同盟国に利益をもたらすかどうかは定かではありません。これが、我々がそのような基準を持つことが重要な理由です。また一方、我々もまた、自分たちがどんな具体的な貢献をしているのかをも考慮しなければなりません。

 

ドイツはその役割を果たしています。我々はアフガニスタンに18年間、現在約1300人のドイツ兵が駐留しています。アフガニスタン北部の20ヶ国のパートナー国と協力しています。

私の最も誠実な要望は、我々が、非常に長い間共に取り組んできた北大西洋条約第5条の下での最初かつ唯一の展開であり、更なる展開においての問題を共に議論することです。

我々の安全がヒンデゥークシ山脈で、実際に擁護されていることを、国民に納得させるために懸命に働かなければなりませんでした。この地域には非常に相互の結びつきがあったので、いつか我々がこれに背を向けて立ち去る日が来るのを本当に見たくありません。

 


 

我が国はリトアニアで国民国家の枠組みの一国であり、NATOの最前線のリーダーシップを再び引き受けました。ここにすべてをリストアップしたくありません。しかし、これらはすべて、特に同盟国の防衛に関する限り、非常に有用なものです。したがって我々は、また我が国の役割を果たす準備ができています。

 

我が国は現在、NATOの外、例えばマリにおいてでも積極的な役割を果たしています。ドイツにとって、これは大きな一歩であり、文化的に言えば、フランスの友人ほど慣れているわけではありません。

今朝、輪番制の議長職であるEU議長とアフリカ連合で新しく選任されたエジプトのアブドゥル・ファタハ・アル・シシ議長との間で議論が行われたことは偶然ではありません。アブドゥル・ファタハ・アル・シシ議長、数日前のご就任おめでとうございます。

 

アフリカの発展やアフリカとの関係をめぐる問題は、米国などとは別の形で欧州人としての我々を苦しめることになるでしょう。

したがって、欧州の一貫した防衛政策を達成するための我々の取り組みを、NATOに対するものと考えないようお願いしたい。NATO内の協力をより効率的で実現可能なものにするために。

なぜなら、我々が共通の軍事文化を発展させ、我々の兵器システムの編成方法を改善すれば、EUやNATOの多くの加盟国の間に存在する非効率性の多くを克服することができるからです。

 

ドイツはこの点で途方もない課題に直面していると言えます。 我々は今、共同兵器システムを開発したいのです。武器輸出の問題は当然、我々がフランスと締結したアーヘン条約との関連でも役割を果たしました。欧州に共通の武器輸出文化がなければ、共通の武器システムの開発はもちろん危険にさらされます。

つまり、共通の武器輸出政策を追求する準備が同時にできていなければ、欧州の軍隊と共通の武器政策や武器開発について語ることはできません。

ドイツでは、我々に先んじてこの問題についてまだ多くの複雑な議論があります。私は、ここで皆さんが、まだ知らないということは何も言っていないと思います。


皆さん、ロシアとの関係と同時に、テロとの闘いは、もちろんユーロ危機に加え、我々にとっても大きな課題です。2014/2015において我々は、ギリシャがユーロ圏に留まることについて非常に集中的な交渉を行いました。そして、我々は難民問題に大規模に取り組まなければなりませんでした。

難民問題は、テロとの闘いが続くシリア情勢に拍車がかかっています。従って、我々が直面した安全保障上の問題は、例えば同盟防衛の観点から、我々が直面している問題とは大きく異なる性質のものでした。欧州は、我々が人道主義的ドラマの中で責任を負う用意があるかどうか自問せざるを得ませんでした。

欧州に大量の難民が流入したのは、すでに300万人以上が流入していたヨルダン、レバノン、トルコの難民問題にこれまで対処してこなかったためです。これらの国々の安定性は真に危険にさらされました。その結果、難民たちは密輸業者や密売人を信頼し、自らの運命を自らの手に委ねることにしました。

 

このような背景の下、欧州ではドイツだけでなく、スウェーデン、オーストリアなどの国々にも、人道上の緊急事態に対する支援をしました。しかし、人道上の緊急事態への国家の対応が、人身売買業者や密輸業者が管理したり、難民が無数の危険にさらされたりする可能性はありませんが、正しい答えは、EUとトルコの協定を作ることであったということに我々は皆納得すると思います。

 

ドイツにとっては、開発援助への支出を増額したことは適切な対応でした。

同じ時期―NATO内で2%に向けて移行するというウェールズの決定が採択された時期―これも安全保障上の問題であると確信しているため、開発援助支出を同程度に増額させました。

もし我々が、人々の生活が彼らの助けによって改善されるように、人道的支援、飢餓援助機構、そしてUNHCRのために十分な資金提供を最終的に行わなければ、難民危機は続くでしょう。―我が国はすでに最大の国際援助国の1つであります。例えば、ドイツ国民が進んで支援してくれたことは素晴らしいことですが、それでも我々は現場で問題を解決する必要があります。それこそが、我々が学ぶことです。 

ですから、これは同じような課題であり、私は、安全保障政策の観点から、同盟内のコミットメントを尊重する能力を高めることと同じくらい重要だと考えています。


リビアの発展は、欧州やこの場合はイタリアに関しても、ますます関連性を増しつつある問題の予兆を与えてくれました。

アフリカ大陸の発展はどのような方向に向かうのでしょうか?リビアでは、国家の不安定さが、多くのアフリカ難民の流失の出発点となりました。

スペインの友人たちはモロッコとの関係でこのような困難に直面したのははるか前の10年か15年前のことでした。その結果、EUは 「アフリカのためのパートナーシップ」 の策定に向けて、より一貫性と断固たる姿勢を示すようになりました。

 

しかし正直に言うと、我々はまだこのパートナーシップの初期段階です。サハラ以南のアフリカだけでなく、エジプト、モロッコ、チュニジア、アルジェリアでの発展が、若者に機会と希望を与え、これらの国々での生活に展望を与えるような形で進まなければ、欧州とアフリカの間の繁栄の格差に取り組むことはできないからです。

 

近年、中国は投資という形でアフリカの開発政策を大々的に進めていることが分かっています。欧州では伝統的な開発政策がかなり実施されていることが分かっています。

私は習近平国家主席とよく話をしてきました。しかし、我々はまだ、投資が最終的にこれらの国々の安全、平和、安定を確保するのに十分な雇用を創出すると言えるような開発政策アジェンダを策定していません。

 

さらに、ドイツは次のように述べています。

ドイツ連邦共和国の初期においては、それは我々の歴史的理解の本質的な部分ではありませんでした。OK、テロと闘うG5サヘル部隊を支援します。

マリでは、国連と協力してテロ対策に取り組んでいます。我が国は、軍隊を訓練するためにマリの現場で働いています。

しかし、これらの国々が経済的な展望を持たなければ、それはすべて無駄になります。それが、我が国が開発援助を増やした理由です。

しかし、繰り返しになりますが、この開発援助の方法論は、これまでのところ詳細には検討されていません。アフリカ連合と協力しなければできないことです。

 


 

私は、アフリカ連合が明確な戦略的アイデア、すなわちアジェンダ2063やその他の計画を持ち、アフリカが望むことを表明していることを非常に喜ばしく思っています。

というのは、ドイツ語の言葉としてほとんど採用されているものの中で、最近「所有権」と呼ばれているものが必要だからです。アフリカの人々は、「これらは我々のプログラムである」と自負する必要があります。ここ数年で多国間協力が改善されたとすれば、私はアフリカ連合がその好例であると考えています。

 

それで、皆さんに申し上げたいのはドイツが取り組んでいる問題です。私は今、我々の協力の方法論に対する問題に移りたいと思います。
大西洋同盟は、もちろん本質的に防衛同盟です。外相会談は頻繁に行われていますが、政治的な問題についても議論することが許されるかどうかについては、長年にわたってフランスと議論をしてきました。
私の理論では、それがネットワーク化された安全保障の概念に対する関心を保つならば、NATOが責任を正当に取扱うだけであるということです。それはある程度起きていると思います。これらの多くの紛争は、軍事的手段だけでは解決できないからです。

 

当然のことながら、答えがどのようなものになるべきかということに関連して緊張が高まっています。

ウクライナに関する答えは何ですか? ミンスク合意に関する限り、我々は団結しています。私の心からの要望は、もし状況がさらにエスカレートすれば、ロシアに対する制裁の実施が再び適切に調整されることです。

皆が独自の制裁を実行すれば、我々は何も達成できないでしょう。

三つ目のポイントは我々がNATO-ロシア基本書を引き続き支持するということです。いつでも話ができるような関係を保つ必要があります。

 


 

それから四つ目のポイントは、経済協力についてです。

この問題については、既に幅広い議論が行われています。例えばノルド・ストリーム2などです。ここにいるペトロ・ポロシェンコ大統領が、 「ウクライナはロシアの天然ガスの中継地であり、このままでありたいと思っている」 と言っていることは理解できます。

私は、選挙戦が行われているにもかかわらず、この問題について可能な限りの支援と交渉を行うこと、そしてそれを継続することを、彼に繰り返し保証してきました。

ロシアのガスはウクライナ経由であろうとバルト海経由であろうとロシアのガスです。つまり、ロシアのガスにどれだけ依存しているかという問題は、どのパイプラインを通っているかということでは解決できません。
そのことについても、私は言います。準備ができています。
誰もロシアに全面的かつ一方的に依存するようになりたくありません。しかし、冷戦時代にロシアのガスを輸入したとしても、ロシアが依然としてパートナーであるとは言えないほど、今日の状況が悪化する理由が分かりません。―私が東ドイツにいた頃、とにかくロシアのガスを使っていて、まさに旧連邦共和国が大量のロシアのガスを輸入し始めていましたー。

 

もう一度お尋ねします。私が立っている左側のポロシェンコ大統領と右側の中国代表の前でこれを言うのは容易ではありません。

ロシアを中国に依存させたいのか、それとも天然ガスの輸入を中国に依存させたいのか。それは我々欧州の利益になるのか?いいえ、私もそうは思いません。我々はまた貿易関係に関わりたいと思っています。そのことも我々が率直に話し合うべきことです。

 

欧州ではすでに非常に高いLNG生産能力を誇りますが、― 基本的にLNGターミナルの数が、LNGガスの数をはるかに上回っています― 米国を中心としたガス消費量、LNG生産量の増加が見込まれますが、ドイツにおいてもLNGへの投資を継続することを戦略的に決定しました。

ドイツは、原発はもちろん、亜炭や黒炭も段階的に廃止しているので、天然ガスに関しては、誰が販売しているかに関係なく、非常に安定したマーケットになるでしょう。

 


 

それから我々はイランの問題を抱えており、それは現在論争の原因となっています。我々は、とても気をもむこの分野について、細心の注意を払う必要があります。

クネセト(訳注:イスラエルの立法府)での演説で私は、イスラエルが存在する権利はドイツの基本的な指導原則であるという保証を表明しました。私が述べたことは、まさにその通りです。私は弾道ミサイル計画を観察しています。イエメンでイランを観察しています。そして何よりもシリアでイランを観察しているのです。

この問題に関して、我々、アメリカと欧州人を分断する唯一の問題は次のとおりです。
現在、有効な唯一の合意を破棄することにより、イランの有害で困難な影響を減らすという我々の共通の目標は、我々の共通の目的にかなっているのだろうか?
或いは、他の領域で圧力をかけることができるように、自分たちが持っている小さなアンカーを離さないよう、さらに言い訳していないだろうか?
それは我々の見解が一致しない限定的な問題です。しかし、我々の目標はもちろん同じです。

 

しかし、私はこうも言います。私自身も毎日批判の矢面に立たされていますが、米国がシリアから迅速に撤退したいと考えるのは良いことなのだろうか?あるいは、またそれは、イランとロシアが影響力を得る機会を強化するやり方ではないのか? 我々もそれについて話し合う必要があります。それらは、我々が討論しなければならない問題です。

 


 

当然のことながら、中国、米国、欧州の間で経済関係がどのように発展させるかという問題もあります。それは大きな問題ですね。

我々は中国が有望な国だと見ています。私が中国を訪問したとき、中国の代表者はこう言いました。

「紀元後2000年のうち1700年は、中国が経済をリードしていました」

動揺しないでください。これから起きること全ては、我々がいつもいる場所に戻るということです。これは、過去300年間に経験したことがないということです。過去300年間私たちはリーダーでした。最初にヨーロッパ人、そしてアメリカ、そして我々全員です。しかし、今はこのような状況に対処し、すべての勢力を弱体化させるような闘争に陥らないよう、賢明な解決策を見つける必要があります。

 

このことに関連して、私は、公平性及び貿易を促進するためのすべての試みを支持することを極めて明確に述べたいと思います。私は相互主義について話しています。それについて話し合う必要があります。

我々はパートナーシップの精神でそうしなければなりませんし、世界には解決すべき問題が他にもたくさんあるという事実を考慮し、そうする必要があります。貿易の分野で現在、米国との間で行われている交渉に大きな期待を寄せています。

 

率直に申し上げますが、米欧間のパートナーシップを真剣に考えているのであれば、ドイツの首相である私にとって、それをあえて読むのは、控えめに言っても少々気に障ることです。―私は、まだ書面では見ていませんがー。米国商務省は、欧州車は米国の国家安全保障での脅威であると述べました。ご存知のように、我々は自分たちの車に誇りを持っていますし、そうである権利があります。

これらの車両は米国でも製造されています。BMWの最大の工場はサウルカロライナ州にあります。バイエルン州ではなく、サウスカロライナ州です。サウスカロライナ州は中国に輸出しています。

もし、これらの車両が、サウスカロライナ州で製造される脅威と、バイエルン州で製造されることによる脅威が同じであったとしても、突如として米国の国家安全保障にとって脅威となるのであれば、我々にとってショックなことです。

その場合、私はただ我々が適切な話し合いをすることが良いと思うとしか言えません。
誰かが不満を持つときはいつでも、我々はそれについて話す必要があります。それが世界の仕組みです。そうすれば解決策を見つけることができます。

 


 

ご列席の皆様、パズルのピースのように我々に迫っているこれらすべての問題は、私がここで言及するにはあまりにも多く、最終的には根本的な問題の表出です。

我々は伝統的な、そして我々が慣れ親しんだ秩序に対するプレッシャーがいかに大きいものかに気付いているので、これは我々が多くの個々のパズルピースに分割し、我々一人一人が問題を独力で最善に解決できると考えるかどうかという問題を提起します。

ドイツ首相として、私はただ答えることができるだけです。もしそうなら、我々にチャンスはほとんどありません。
というのは、米国は遥かに経済的な影響力を持っていますし、通貨としてのドルははるかに強いので、私にはこうとしか言えないのです。明らかにアメリカのほうが有利な立場にあります。

中国は、13億人以上の人口を抱え、遥かに大きいです。
我々は、自由に一生懸命に働き、感動的になり、素晴らしいものになることができます。
しかし、8000万の人口をもったとしても、中国がもはやドイツとの良好な関係を維持したくないと判断した場合、我々はついていくことができないでしょう。世界中でそうなるでしょう。


ところで、一つ大きな疑問があります。
多国間主義が必ずしも楽しいわけではありませんが、しばしば困難で、時間がかかり、複雑であっても、第二次世界大戦とドイツによって引き起こされた国家社会主義から我々が学んだ教訓である多国間主義の原則に留まるのでしょうか?

私は、自分たちですべてを解決できると考えるよりも、お互いの立場に立って、自分たちの利益を超えて、一緒にウインーウインの解決策を実現できるかどうかを見た方が良いと確信しています。

 

だからこそ、皆さん、私は昨夜、スピーチの準備をしていて、リンジー・グレアム氏の引用文を読んだ時、とても嬉しく思いました。

彼は昨日の夜、こう宣言しました。「多国間主義は複雑かもしれないが、家に一人でいるよりはましだ」

これは、この会議のモットー「The Great Puzzle:Who Will Pick Up the Pieces?(大いなるパズル:誰がピースを拾うのだろうか?)」に対する正しい回答だと思います。
ここにいる皆さんにお願いします。

 

どうもありがとうございました。

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

※ 無断転載厳禁

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