【米国:必読オピニオン】グリーンは新しい赤である。

7日、アレクサンドリア・オカシオーコルテス米下院議員(民主、ニューヨーク州)が「グリーン・ニューディール法案」を発表し、大きな話題となりました。同氏のこの法案は、民主党内でも穏健派と進歩派の間に大きな溝があることが浮き彫りになっています。
最近、何かと注目を浴びるオカシオ―コルテス氏ですが、ヘリテージ財団のステファン・ムーア氏がその主張の矛盾を鋭く分析しています。
ぜひご覧ください。
この記事は、ワシントンタイムス,タウンホールから紹介いたします。

Post by Mariko Kabashima 2019/02/13  1:20  update  2019/02/13  20:44

Washington times  Townhall   by  Stephen Moore 2019/02/10】

 

ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオーコルテス下院議員が、グリーン・ニューディール(GND)法案を全米に発表し、民主党から大きな拍手を受けた。

 

この数兆ドル規模のマニフェストは、気候変動から地球を救うことだけではない。それが目玉ではあるが、万人のための医療保険からすべてのアメリカ人に保証された仕事、時給15ドルの最低賃金、さらには車の運転や飛行機に乗ることができる頻度に関する規制に至るまで、あらゆる「社会正義」のアジェンダが含まれている。

 

その法案の柱は10年以内に再生可能エネルギー(風力・太陽光)100%へ移行することである。現在の再生可能エネルギーの割合が約8%であることを考えると、たとえグリーンエネルギー生産者に1500億ドルの公的補助金があったとしても、エネルギーの使用と生産に関する知識を持つ人は、これが可能であるとは誰も信じていない。

 

しかし、今後10年から30年の間に再生可能エネルギーの100%近くに到達したとしても、2兆ドルを超える納税者の負担となり、経済的に大きな打撃を受けることになるだろう。その上、高賃金の石油・ガス産業に従事する約1000万人の米国人が職を失うことになるだろう。

 

ヘリテージ財団の調査が示すように、家庭の暖房と電力のエネルギーコストは2倍から3倍になる可能性が高く、それは単純に50%を再生可能エネルギーでまかなうことになる。

 

米国でシェールオイルの大量生産がなければ、ガソリン価格は1ガロン当たり5ドルに達する可能性だってある。先月パリで暴動が起きたのは、このような物価上昇がきっかけだった。

 

グリーン・ニューディール法案は当初、エネルギーミックスから原子力と天然ガスの廃止を計画していたが、これはシェールガスが炭素排出量の大幅な削減に貢献し、原子力発電所が温室効果ガスを全く排出しないことを考えると理不尽なものだ。水力発電とともに、これらは現在最もクリーンなエネルギーである。アレクサンドリア・オカシオーコルテス氏の事務所が最近発表したGNDのデータ表は、独断的な反核スタンスを主張する民主党上院の支持者であるエド・マーキー氏によって否定された。

 

それだけに、「国家、産業、経済の動員」を「貧困を撲滅し、変革に参加するすべての人々が繁栄、富、経済的安全を手に入れられるようにする歴史的な機会」とした浅はかなGNDのレトリックが現実と乖離している。

 

過去10年間、新規雇用の最速の成長をもたらしてきた化石燃料産業を廃止し、どのようにして貧困を解消するのだろうか。我々は本当に石油労働者を風力発電農家に変えるつもりなのだろうか?

 

このグリーン・アジェンダを前進させるための他の現実不可能なアイデアは、雇用保障プログラム、万人のためのヘルスケア、数百億ドル規模の新しい大量輸送機関や電気自動車が含まれる。グリーン・ニューディール法案の原案の一つには、この計画は「不必要な個々の輸送手段を質の高い近代的な大量輸送手段に置き換える」ことを求めている。もう子供たちをサッカーの練習に車で連れてはいけない。 皆バスに乗らなくては。

 

オカシオーコルテス氏は、GNDで失う何百万もの雇用の代替として、新しい雇用保障プログラムが、元祖ニューディール政策のように機能するだろうと言う。しかし、大恐慌のでたらめな歴史にもかかわらず、雇用促進局(WPA)のようなフランクリン・ルーズベルト大統領の雇用創出計画は、失業と貧困を終わらせるという探求は惨めに失敗した。八年間の平均失業率は12%を超え、現在の三倍に達している。

 

GNDの立案者たちは、米国経済のこの「(ニューディール政策の)変形」が安くはならないことを認めたことで表彰されるべきである。その価格は年間約1兆ドルもかかる。

 

これらのコストは、米連邦準備銀行の(すなわち財政赤字の拡大を産みだす)借り入れで負担される。また、「炭素やその他の排出に対する課税、累進課税を含む様々な課税手段」と、リベラル派が喧伝してきた70%の税率にも注目したい。

 

アメリカの産業空洞化の代償としてこれらが必要になるだろう。

 

(私を含めて)保守派は、GNDを笑い飛ばしたり嘲笑したりする傾向があったが、自由市場資本主義に対するこのような正面からの攻撃は、急速に民主党の正統性になりつつある。ことわざにあるように、グリーンは新しい赤である。そして、保守派がこれらの馬鹿な考えを打ち負かし、信用を失墜させない限り、ドナルド・トランプが間違っていると証明されるだろう。アメリカは社会主義国家になろうとしている。

 

著者について:
ステファン・ムーア Stephen Moore,
ワシントンタイムズのコラムニスト、ヘリテージ財団のシニアフェローです。
アーサー・ラッファーとの共著による彼の新著は、「“Trumponomics: Inside the America First Plan to Revive Our Economy(邦訳:トランポノミクス:米国経済再生のためのアメリカ・ファースト計画の内側)」です。

この記事が気に入ったらシェアをお願いします。