【一帯一路:民主主義フォーラム】欧州の専門家:中国の『一帯一路』は世界的な安全保障上の課題(動画あり)

今年2月5日に、ロンドン大学のセナートハウスで、民主主義フォーラム主催のセミナーが開かれました。
今回のテーマは、「中国の一帯一路構想 :欧州への影響」というもので、欧州の専門家による講演と質疑応答が行われました。
欧州の専門家たちがどのように一帯一路を見ているのかがわかりますので、ぜひご覧ください。

このフォーラムについて、インドのSifyが報じていましたので紹介します。

Post by Mariko Kabashima  2019/02/09  1:07

Sify 2019/02/08】

 

欧州の著名なシンクタンクの様々な専門家がまとめた結論によると、中国の野心的な一帯一路構想は世界的な安全保障上の脅威だという。

 

ロンドン大学のセナートハウスで開かれた民主主義フォーラム(TDF)主催のセミナーで、 同フォーラム会長のブルース卿は、「中国の一帯一路構想と欧州への影響」 と題した講演を行い、一帯一路構想や一帯一路をめぐる中国の覇権主義に対する世界的な懸念について語った。

 

一帯一路は、少なくとも六つの地理的回廊地帯で構成された非常に犠牲の大きいものではあるが、「それは、中国が伝えているように単に貿易と安全保障のためのネットワークなのか?」、あるいは、 「国益ため恥知らずに足並みをそろえた多頭のヒドラなのか?」 と首を傾げた。

 

ブルース卿は2016年、中国の欧州連合(EU)への投資が急増したことを受け、中国の進出を前にして、EUが共同戦線を維持することが急務だと話した。


ヘンリー・ジャクソン・ソサエティのアジア研究所所長であるジョン・ヘミングス氏は、中国の外交政策、援助、インフラ、技術、海上輸送路の安全確保との相互関連性を強調し、一帯一路は安全保障上の課題と同様にチャンスをもたらすと指摘した。


ロシア欧州アジア研究センター(CREAS)の創設者兼所長であるテレサ・ファロン氏は、一帯一路の概要を説明する中で、一帯一路のパートナー諸国が中国の「債務の罠」に陥っている問題について述べた。

 

「この罠はスリランカのような国だけでなく、セルビアとモンテネグロを含む一帯一路にまたがる潜在的EU加盟国にも影響を及ぼした」(ファロン氏)

 

また、ファロン氏は、一帯一路プロジェクトによる中国がらみの債務の影響で、これらの国々がEUに加盟することは困難であると感じており、一帯一路は中国の利益に従って世界を形成する試みであるという懸念が高まる中、中国と欧州の価値観の衝突にも言及した。

 

分断された欧州は中国にとって好機であると警告し、欧州諸国は 「建設的な警戒」が必要であると断言した。


一方、チャタム・ハウス(王立国際問題研究所)のアンドリュー・ケイニー副研究員は、一帯一路は一部の新興経済国のニーズを満たしており、経済成長の鍵となるインフラ投資を行っているが、これには重大な警告が伴うと述べた。なぜなら、融資は譲歩的な条件ではなく、国有企業の行動の監視と汚職への対処が、多くの一帯一路諸国と同様、中国の主要な課題であったからである。

 

同氏は、一帯一路の 「曖昧さ」 が西側とって有利であり、西側の政府や多国間機関がプラス面を理解し、マイナス面を押し戻す機会が与えられると評価した。


「一帯一路の興味深い側面は、政治と法の結び付きである」と述べた英国中国センターの副所長であるキャスリン・ランド氏は、国際法の支配において一帯一路で引き起こされるだろう影響に注目した。

 

同氏は、中国が直面している大きな課題は、司法の政治的監視を維持しつつ、ビジネスの法的安定性を確保する必要があることであると述べた。


ジャーマン・マーシャル財団アジアプログラム、大西洋地域上級研究員のアンドリュー・スモール氏は、一帯一路への反発を超えて、中国政府がイニシアチブを取り戻すことが出来るかどうかに注目した。

 

同氏はまた、債務の罠が相手国に影響を与えており、それがいかに中国の評判を著しく傷つけたかについても語った。

 

スモール氏は、米国やインドなどの国からの非難とは別に、一帯一路の過剰な特質について、とりわけ同盟国であるパキスタンや中国内部から、その透明性の欠如に対する多くの批判があったと述べた。しかしながら、同氏は、一帯一路はそこにとどまるべきだと結論づけた。


ゾーラ&ZZアーメド財団、ラフォールのフォアマン・クリスチャン大学名誉教授のパーベス・フッドボイ氏は、中国・パキスタン経済回廊(CPEC)の観点から一帯一路を考察し、バロチスタンやグワダル港などの地域で約12,000人の現地部隊が雇用されていた安全保障の分野を除き、パキスタンにおける中国の投資について依然として不透明であり、地元の労働者を十分に雇用していないことを嘆いた。

 

同氏は、SEZ(経済特区)で操業している中国企業が課税対象から外されていることに対する不満も生じていると主張した。

 

フッドボイ氏はまた、中国製品に取って代わられた地元製品の不足に懸念を表明した。

 

同氏は、中国のローテク農業分野への進出に疑問を呈し、中国が土地を購入したことによる警告の兆候を指摘した。

 

持続可能な開発に関しては、中国の大規模な石炭採掘プロジェクトが水の供給への影響を及ぼし、大気汚染を引き起こしていることに懸念を表明した。

 

同氏は、CPECが純粋に商業的なプロジェクトだとは考えていないと感じていた。グワダルとバロチスタンの周辺で起こっていることは、より戦略的であり、地元の人々は公平な利益を享受していなかったからである。


戦略対話研究所の政策・研究責任者であるサラ・アシュラ氏は、一帯一路を 「明確に定義されたルールを持つ機関というより、戦略的なビジョンのようなもの」 と表現した。


影の国際貿易大臣バリー・ガーディナー議員は、際貿易担当国務長官であるバリー・ガーディナーは、このセミナーが多大な知的刺激をもたらしたと述べた。彼は「中国は帝国主義を我々よりもうまくやっていた」と主張した。


 

(海外ニュース翻訳情報局 樺島万里子)

 

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